ブリスター!

THINGS

今年、「夕張国際ファンタステック映画祭 2000」にて観客投票 NO.1、ファンタランド大賞を受賞した新感覚のジャパン・ムービー「ブリスター!」。
ストーリーは、主人公が「ヘルバンカー」という激レアなフィギュア探しをめぐって、いわゆるマニアたちの日常がポップにそしてリアルに描かれている。決して、偏見にみちた「浅い」作り方はしていない。マニアに対する優しい視点を感じて欲しい。そこにはきっと誰もが共有できる何かがある。一般劇場作品は本作がデビューとなる須賀大観監督にインタビューした。


ブリスターを撮り終えた感想は?

まず、「映画」づくりというのを考えてみると、僕は「ブリスター!」の前に一般劇場では公開されなかった作品を一本撮っているんです。その経験で感じたのは、映画というのは、優れた想像力や発想だけではダメだなぁ、ということ。優れた監督というのは、才能もあるし、それに加えて仕切りもうまいのですね。問題が起こるのを予想して対処できる。前の作品では、監督としての自分を、どこまで出していいのか、ダメなのかという部分がわからなかった。
その当時、ウォン・カーウァイとか流行っていて、映像のニュアンスとか、空気感とか揺れ具合とかに重きを置く作品にしたかったのです。ところが、そういう質感というのは曖昧なものだし、それをカメラマンに伝えようとすると、頭にコードを接続して伝えられる訳ではないので(笑)、うまくいかなくて……。
だから、「ブリスター!」を作る時は、強い事実をコンセプトにした映画にしました。空気感とか、光の具合とか、セリフの声のカスレ具合とか、にこだわるのではなく、強い事実。例えば、これは半分シナリオ・ライターに怒りながら言ったのですけど、台本に、雰囲気のいいセリフとか書いてあると、そういうのは凄くリスクを背負うからやめてくれ、と。そのかわり、面白い事実を書いてくれといいました。たとえば、「ちょっとしたオフビート感で、人物はコーヒーを飲みながらボソッとセリフをいう」とか、そんなのは成功しないのですよ。必要なのは、もっと面白い事実。それは、「ブリスター!」にある、「スターウォーズに出れば、フィギュアになれるんだよ」といったセリフとかです。それは、子供がいっても、お年寄りがいっても、どんな役者がいってもおもしろいですから。現場で、光の具合とか、役者さんの体調とかに左右されないセリフをかいてくれ!と言ってました。

ブリスターの語り口

映画というものにはいろいろな語りかたがあります。例えば、ハリウッド映画は、一直線の物語が多くて、主人公の状況があって、事件が起こって、それが解決にむかっていく、という感じですよね。でも、人がある選択をする時、成長や転機を迎える時って、僕はそんな一直線なものではないな、と思っているのです。「ブリスター!」では、そういう考えかたを反映させました。「ブリスター!」でも、主人公がフィギュアによって何かを教えられていくのですが、それはシナリオとしてシンプルなストーリーにはなっていない。
だから、現場のスタッフの方には、フィギュア好きというモノに執着する人間を描くのはヒューマニズムのカケラのないものだ、と言われたり、あるいは、もっと構造的な事で、フィギュア探しに突進していく映画なのに、知人と映画作ったり、友達が女の子にフラれる話が必要なの? とも言われました。
でも、人生というのはいろんなことがあって、それらが積み重なって、一つの選択をするものだと思う。だから、いろんなエピソードをいれて、人生はいろいろあるけど、それらを通してどういう選択をするのか?、ということを描きたかったのです。自分が映画監督になったのも、決して、単に映画が好きということだけではなくて、空がキレイと思ったこととか、兄弟ゲンカしたこととか、100億個くらいの要素が積み重なって、映画監督を選択したと思っています。

マニアの中に確認できたリアリティ

「ブリスター」をつくるにあたっては、「マニア」と呼ばれる人を理解するために、細かいリサーチをしました。友人のマニアの人の話を聞いたり、フィギュア店の人と仲良くなって、いろいろな声を聞きました。ある知り合った人は、いわゆるギャルゲーというか、ビデオ・ゲーム上の恋人とデートするゲームをやっていて、その進み具合を毎日にように電話してきて。それで、「なぜ、そんなに(ビデオ・ゲーム上の)彼女が好きなの?」と聞いてみたら、「現実の恋愛も、ゲーム上の恋愛も、結局は同じ脳内活動なんだから同じなんです」といわれて、「なるほどー」と思ったりしました。
自分としては、できるだけマニアの人達の生の声を聞いてから映画づくりにとりかかったつもりです。数年前、フィギュアというのはちよっと流行ってて、ドラマとかで、そのコレクターという設定のキャラクターが出ても、アニメ系、アメリカン・コミック系も SF系も、ぜんぶ一緒、という感じで描かれていて、それで必ず、気持ち悪くて、変態という、凄くステレオ・タイプに描かれていて。そういう感じだったら、僕はつくる意味はないなと思ってました。
フィギュアを好きというのは、あるいは何かが好きということには、必ず理由があるはずなのです。そして、それを深くとらえていけば、必ず万人が理解できるものになると思ったのです。だから、「ブリスター!」もなんだか奇妙キテレツな人たちの青春群像というふうではなく、「僕らはなぜ好きなのか?」というのを掘り下げて分解していけば、かならずみんなが共感できる部分もあると思うし、そういう生き様からなにか学べることや、知ってもらえることがあるんじゃないか。加えて、何かを好きになることというのは素晴らしいことなんだ、というのをこの映画で伝えたかったのかもしれない。
この映画では、フィギュアという、とてもちっぽけなものが、最後には、とても重要な役割を果たします。それは、人が何かを好きになったとき、それがとてもちっぽけなものでも、それを本当に好きだということを貫き通せば、何か大きなことにつながるかもしれない。あなたの好きなものを大切にしてほしいというメッセージもあるのです。

学生時代は典型的な映画青年だったそうですが、なぜ映画業界に就職しなかったのですか?

そのまま映画業界にいっても、監督になるのにはかえって遠回りになるかなぁ、という打算的なものありましたが、最大の理由は、普通の世の中を歩いて感じたことが映画になるのだから、映画マニアになってはいけないな、と思ったのです。もちろんマニアの部分も残しつつ、それでも世の中を観て歩きたいなというのがあって、「ブリスター」も渋谷をグルグル歩きまわったり、友達と遊んだ経験が生かされていると思うし、映画つくるのに、映画ばっかりやっていてはダメだな、と思って。広告会社に就職した理由も、こういう業界ならいろんな産業形態もみれるし、流行やカルチャーを見れるので一番広いかなと思ったことですね。

最後に今後の予定など

今後、映画をつくるために、もっといろいろなことを経験していかなければ、と思ってます。「ブリスター」をつくっている時は、それが当時の僕が感じていたリアリティだったんです。次作を作るためには、次のリアリティを探さなくてはならない。それを探さないと、観客に見せる映画をつくる資格がない、と思っています。

ストーリーを少し紹介しよう。ファーストシーンはなぜか未来戦争後のようなシーンで始まって少しびっくりする。砂漠に巧妙にウエザリングがかけられてハンディ・ウェポンで武装したキャラクター。スターウォーズと、マッドマックス2以降をコピーしながらイタリアで作られてような雰囲気。こういうシーンを日本映画が撮ると、なんとも違和感があるのだが、本作の場合は違う!、兵器についての軽妙な会話、小道具、どれをみても隙がなく作りこまれている。でも、なんでこんなシーンが必要なんだ?という部分は最後に最高にクリアーになるのだが、この作品が単なる「マニア実態映画」に終わらせないパーツの一部分になっている。

そして、主人公の疾走シーンとなる。店に飛び込み、目当てのアイテムを探すために「目が泳ぐ」ところが、凄くリアルで、それだけで楽しい気分になる。主人公はクラブのような場所で働いていて、そのシーンが時系列の逆転を含みながら各脇役たちのプロフィールも紹介されていくのもうまい。このお店のシーンは、一種「どよーん」としたマニアが集まる場所というか、 間違っても普通のOL、サラリーマン、または同じクラブ系でもブラコン系ソウルとか、パラパラ系が来る可能性のない場所である雰囲気が伝わっていて好きになる。主人公は、同棲していて、その彼女がカメラマン見習いというのは、十分にリアル。部屋もそういうアーティステックな雰囲気を持ちつつ、生活感があるのもいい。この彼女とのケンカのやりとりは、マニアの恋愛関係ではつきものの問題であり、結果的に彼女は、主人公を許しているのは、心暖まる話だなと感じた。特にラスト近くに、写真を認められた彼女がおみやげに、主人公は欲しがっていたフィギュアを持っていったところなど、かなり泣きそうになる。

「ブリスター!」の魅力は脇役の魅力でもある。 まず、 SFマニアであるテラダ。スタートレックなどを語りながら、一種「大人」として登場するのだが、結局が外れていたのもわかる。「宇宙船」を読み、最後に「でも、俺の脚本が悪かった」と誰のせいにもせず、去っていくのはカッコよかった。主人公のライバル(?)の「なんでもコレクター」のキム。そのコレクションはうさん臭いものばっかりで、その説明を聞いているだけで笑ってしまう。極端すぎるキャラクターは思い入れできないものだが、映画でしか存在できない存在として、本作の映画らしさが出ているのではないだろうか。メカマニアのハサモト。ネイル・アーティストのイルマとのエピソードは、マニア心理が「わかる」人間なら涙なしでは観れない、というよりマジ泣きそう、そして、激怒してしまいそうだった。「彼女は自分を理解してくれたんだ!」と思い、彼女のポラロイドをならべながら、デザインに励むシーンなどは、本当に心にくる。でも、それをその後の彼女の豹変ぶりは、「それなら、最初っから優しい声をかけるなよ!」とこの映画を愛するものはみんな思うだろう。それなら、最初から「わかんなーい」といってくれたほうが最高に楽なのに。

それに対して、主人公の彼女、マミは良い。彼女だって、彼の「フィギュアを愛する心」の本質的な部分は理解はできてないだろう。でも、そんな彼を理解はできなくても「認めて」愛している。これは素晴らしいです。本当に。ヘルバンカーのアメコミ調のディテールは本当に精密。マニアでも、こういうの本当にがあるんだぜ!といえば信じる可能性は高いのではないだろうか。

その他、好きなシーンは無数にあるが、とりあえずまとめみよう。この作品の良さは、まず「ライブ感」が強いこと。観ている側も一緒にヘルバンカーを探している気分になる。そして、各登場人物がからむ複数のエピソードが共感できる出来だということ。あと、編集のキレの良さと、スピード感。これは主人公のちよっとした動作でも、凝っている部分があってびっくり。それと、先にも書いたが、この作品が、単なる「マニア・ドキュメント」に終わらない、ヘルバンカーと未来のシーンを繋ぐ「糸」がしっかりあること、このへんが「これは楽しい映画なんだぜ!」という主張がある。いろんな人に観てもらいたい映画だ。

ブリスター!
1999年/日本/35mm/ステレオ/ビスタサイズ/1時間48分
制作:博報堂+テレビ東京+ブエナビスタホームエンターテイメント
配給:スローラーナー
監督:須賀大観 脚本:猪爪慎一
http://www.hakuhodo.co.jp/movies/blister/

Text: Shinichi Ishikawa from Numero Deux

【ボランティア/プロボノ募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
コントワー・デ・コトニエ公式通販サイト | 2016 SUMMER SALE
MoMA STORE