ハノーバー万博 2000

HAPPENINGText: Jo Kazuhiro

ドイツ北部ニーダーザクセン州ハノーバーで10月31日まで開催中のハノーバー万博。今回の万国博覧会では、1992年の地球サミットで採択された世界環境宣言とアジェンダ21に基づいた、総合テーマ「人間・自然・技術」を掲げ、人類と自然との共存における技術の利用を現実の姿として表すことを目的としている。パビリオンの数は計190以上と膨大であり、またハノーバー以外の地域においても様々なプロジェクトが開催されている為、全てを訪れる事は不可能に近い。そのため今回のレポートではその中から幾つかピックアップして紹介していきたい。

フランクフルトから2時間かけてハノーバーの駅に着くと早速いたる所で EXPOの文字が目に付く。万博案内用の公式新聞が会期中毎朝・夕に発行されており、会場や駅で無料で手に入れる事ができる。駅のチケットカウンターにてチケットを購入し(会場で買うより安い)、まずはトラムに乗り約30分ほどかけて開催場所である郊外の見本市会場へと向かう。このトラム内には液晶モニタが設置してあり、車内案内と併せて万博関連の映像が流れていた。

会場に着くと大きなゲートの前に夕方入場のチケットを購入した人々の並ぶ姿が目に入る。大半のパビリオンは21時過ぎには閉まるものの、通常のチケットの約4分の1の値段で入場できるということもあってか、老若男女問わず多くの人々が夕方チケットを利用しているようだった。

チケットを改札機に通し入場するとまず右手にインフォメーションセンターがある。ここにはタッチパネルと匂い発生装置を備えた端末が複数設置してあり、入力した自分の希望に沿ったプランを提案してくれて、プリントアウトもできるようになっている。しかし、実際に利用している姿は見る事ができなかった。また会場内の移動手段としてはバスやゴンドラの他、個人用の電気自動車・電気バイクの貸し出しがあるのだが、少々高く、会場内ではほぼ徒歩により移動した。そのため歩き疲れて見逃してしまったところも幾つかあった。

インフォメーションを後にし、会場内部へと足を進めて行くに連れ、様々な外観を持つ各パビリオンが目に入ってくる。開催前から話題となっていたMVRDV設計のオランダ館や、再生紙を利用した坂茂設計の日本館だけでなく、巨大な器のようなハンガリー館や木の格子を組み合わせたスイス館など、多様な建築を目にする事ができる。その中でも特に印象に残ったのが空飛ぶ人参のエストニア館で、地面と上下に動くワイヤーで結び付けられ、格子状に並んだ人参のオブジェが頭上を動く様には一見の価値がある。特に、夜のライトアップされた姿は素晴らしかった。

パビリオン内部の展示に関しては、インフォメーション用のタッチパネルと、ドイツ館での巨大プロジェクションに代表されるようなマルチスクリーンの多用が印象的だった、と同時に単なるお国紹介に過ぎないものや明らかに手を抜いたとしか思えないものも多々あり、現在における万博の意義について改めて考えさせられた。とはいえ、今世紀最後の万博として、未来を感じさせるようなパビリオンももちろんあった。その中から2つほど紹介したい。

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