リズ・ファーバー

PEOPLEText: Nicolas Roope

リズが、雑誌「クリエイティブ・レビュー」に携わるようになったこの5年間で、彼女はコマーシャルアートとデザインの世界において信じられないほどの変化を目のあたりにしてきた。

この雑誌には、50年程前に創刊された当初から一貫した目的がある。コミュニケーションとコマーシャルアート(クライアントが利益を得るためにクリエイティブな人物、または代理店に依頼するもの)における、興味深く革新的な展開を発行するという目的だ。

興味の対象は、パッケージングやテレビコマーシャル、ポップな広告物、レコードジャケットといった主流となっているコミュニケーションの形にある。これらポピュラーなフォームを書類として残すものとして、また、変化し続けるスタイルを垣間見る窓口として、広告とデザインに重点を置いている。リズがそれに付け加える。

『ポップカルチャーを切り取っているのです。パッケージングや宣伝広告、写真などポップなもの全般を扱っています。80年代を振り返り、私達がどれほど遠くに来てしまったかを見るのはすごくおかしなことです。』

だが、それは単に変化する出版物のコンテンツではない。

『雑誌がデザインされる様子はその時代の流行を反映しています。今は多分きわめてクリーンな時代なのでしょう。』

雑誌は文体の変化以外にも全体的なクリエイティブ産業の移り変わりを記録している。僕達はデザインがより中心的になり、80年代の広告寄りのアプローチに匹敵しているのを見ることができる。リズは、このことが全体として人々がデザインを意識するようになったという事実に何らかの関係があり、全ての面でインパクトを与えると考えている。消費者にとってもデザインは重要なものになっていて、その結果誰もがこのことに気付いた時に適応することができるように代理店を巻き込んでいる。

代理店は、動画やタイポグラフィーなどを専門に扱う小規模なプロダクションに対して沢山の仕事を抱え込むのが普通だった。仕事量の増加に伴い今日では、クライアントは系列会社に依頼することが可能な代理店に仕事を任せる傾向がある。この傾向は、伝統的な広告形態に合わないようなプロジェクトにも尻込みしない新しいタイプの代理店が台頭してきたことを意味する。マザーやサーカスのような代理店は、短編フィルムを制作したり本を書くという依頼を広告物の一部としてきわめて真剣に受けるが、一方で、他の代理店はそれを自分達の管轄の一部としてはみなしていない。

例をあげると、マザーはオン・スクリーンとオフ・スクリーン両方に対応できるようにチャンネル5のポスターとテレビ広告を制作した、とリズが説明してくれた。彼らのようなやり方で仕事をすることは並外れたことだが、それによる利益は明白である。大手の代理店がこのアプローチに続く傾向がある。

クリエイティブ・レビューは早い段階でインタラクティブメディアをコミュニケーションのクリエイティブな形として取り入れた。1995年の表紙に初登場したカバーディスクについてリズは、当時は大部分の購買者がCD-ROMを作動させる手段を持っていなかった時代だったと認めている。また、彼女はデザインコミュニティーが代理店よりもこの側面において熱心に押し進めていった様子を思い出すことができる。

ディスクは出版物において非常にポジティブなインパクトを与えている。

『CDは雑誌に生命を吹き込むために用いられました。それを目にして作動させるということは新しい経験に満ちていました。購買者は雑誌とCD-ROMを一緒に使用することで今何が起こっているのかを知ることができるのです。』

リズは、ウェブでは潜在的にウェブに興味のあるオーディエンスに接触することが十分にできなかったと告白している。

『イギリス以外ではたった300人の購買者しかいませんでした。もしウェブがかなり良いできだったとしたら、もっと多くの購買者を得ることができたでしょう。』

だが、もちろん僕達の誰もが知っているように、このことが独自の問題をもたらした。

『私達は道を作ろうとしているので、ウェブへの転換は難しくありません。』

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