スティーブ・エトウ

PEOPLEText: Kyota Hamaya

僕も2年前に行きましたが、ニューヨークは音楽に対して許容範囲の広い街という印象が強いですね。

そうですよね。グランドセントラルの駅の中でやっている人たちもちゃんとブッキングされているんですよね。やるからにはちゃんとしようぜみたいな。きちんとやっているようですよ。

言ってみれば音楽に対する民度の高さが違うかなって気がしますね。日本は結局カラオケなんだもん。あれも楽しみ方の一つかもしれないけれど、もうちょっとちゃうんじゃないかなぁって。それはスポーツで発散するようにカラオケ行っているのかなぁって。

スポーツに近いですよね。どこまで歌えるかとか。

そう。頭から否定するつもりは全然ないんですが、正直言うとアメリカとかに行って音楽と接している方が楽ですよね。あーこの人たち音楽好きなんだろうなぁって。日本は音楽というと、「いや、よくわからなくて」、とか「音楽は難しいから私にはわからない」とかね。あげくの果てには、カラオケで音楽を蹴飛ばしているわけですよね。なんとなくそこでね、今世紀中は無理だったかぁ・・って気はするんですけどね。でも、最近若い子たちは明らかに変わってきたと思いますね。もっと自然体で音楽と接している。で、センスがいいですよね。聞くモノとか。

もちろんある程度敷居はあって欲しいです。音楽は大げさな言い方をすれば天から降りたもの、例えば歌い手なんてそうじゃないですか。カリスマ性がなければ、オーラが出なくては引きつけられないと思うんです。

ところで、スティーブさんはなぜ金属を使うのですか?

最初はね、サンプラーを使っていたんですよ。例えばバンドやっていたりとか、人のツアーに回ったりしてそういう音を出していたんですよ。でもゴムを張ったパットを叩いてどんな派手な音を出してもこれは虚しいんじゃないかって。

ダン!という音やガン!っていう音が欲しいなら、そういう音のするものを叩けばいいんじゃないかと思ったところへ、たまたまツアーのローディーのハイエースのバンパーが取れちゃって。それくれるって?それをスタンドに付けて叩き出したのが最初だったかな。それだったら見た目的には、叩いていればガシャン!っていっているのも分かるんじゃないかと思って。そうやっているうちに段々音は派手な方が好きなんで、こんな感じになっちゃったんですよね。

デミセミより、ソロの方が派手な感じはしますね。分かりやすいというか。

人間的にも分かりやすい方なんで、裏に秘める何とかとか、深みという面では縁がなくって。割と物事を構築するのが苦手で、やり逃げに近いものがあるんで(笑)。

例えば、こんな曲を作りたいって一生懸命作っていくことも大事なんでしょうけど、僕の場合では、割と飽きっぽいというか、子供の頃からプラモデルを作っていても、買ってきたらその日のうちに形になっていないとダメだんですよ。綺麗に仕上げるというより、セメダインが間に合わなかったら瞬間接着剤でがちゃがちゃ付けて。

だから今もそのクセが残ってましてね、音楽も凄い苦労して、気持ちを維持しながら自分の思っているイメージをなるべく100%に近づける為に数%に近づける時間があったら、7割でこんな感じ、こんな感じってどんどん次に行った方が健康でいられる。(笑)。ソロもそんな感じで、しばらく経って聴いてみると、全然リズムずれてるじゃんってみたいなそんな状況ばっかりなんですけど、それはそれで良しと。直感的ですね。それが外れたら悲惨ですけどね。

ステージでもそんな直感が大切ではないですか?

直感といえばかっこいいですけど、お客さんがいると急に変われるというか。リハーサルとか一人でじゃあって言われてもできないんですよ。バランスを聴いて、叩けるか確認したら後はもうお客さんの前に出て、お客さんになんとかしてもらうみたいな。(笑)。三波春夫さんのいう「お客様は神様」っていうやつで、僕の場合、ちょっと努力が足りなすぎるんで、お客さんからパワーもらって、何かするっていう感じですかね。

モデルも以前やっていましたよね。

たまに写真使われたりしてますけどね、別にそれを仕事みたいにしたことはなくて、「ジェネラルリサーチ」とずっと最近つき合っているんですけど、それもたまたま知り合った小林くんがデザイナー兼社長だったんですよ。そうしているうちに仲良くなって、写真とか撮られているうちに、去年はショーがあったんですけど、僕の全身を石膏で型どりしてそれに服を着させて並べているというショーをやったんですけど、それはモデル(語尾が上がる)というより、モデル(語尾が下がる)型の方ですよね。

こないだもコージクガさんの靴のショーに出させてもらって、東京のイエローでやったんですよ。靴ですから、会場で60センチぐらいの舞台を作ったってとこで見えないですから、工事現場の足場を組んで2メートルぐらいの所を歩くんですよ。でも天井は2メートルちょっとしかないですから、そこを歩くと最後には這いずらないと歩けないという花道を作って、ちょっと吹き抜けで2階まで抜けているところがあるんで、そこに櫓をグシャグシャ形で組んで、最後はモデルたちがそこに取り付いて靴を見せる。僕はその中で鉄を叩いて、音に合わせて演奏したりするというやつ。

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