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ミリア 1999

HAPPENINGText: Nicolas Roope

もしあなたがマルチメディアについて何か少しでも知識を持っていると思うなら、ミリアに行ってみることをお勧しよう。今までの考え方が間違っていたことに気付くだろう。マルチメディアとはビッグビジネスのことであり、本当に退屈だ。

『世界にむけて自分のアイディアを伝えるためには、ベッドルームに納まる程度のコンピューターで十分だ。技術と才能と熱意さえあれば』というのが、僕のマルチメディアについてのナイーブな意見だ。

一方、ミリアのド派手なマルチメディアへの入り口は、『熱意をもって懸命に努力することに価値があるかどうか』ということを考えることをあきらめてしまった「セールスマン」たちによってのみ支えられている。そんなわけで、僕らのような人種には「GET STUFF FREE GAME」が人気だ。

遊び方:高級そうなスーツを入手。全ての人に横柄な態度で歩きまわる。けっしてそれほど知識が無いことや、ミディアムサイズのポップコーンを買うくらいの金しか持っていないことをさとられてはいけない。
結果:沢山のフリーの素材を手に入れるが、そのうちの半分は、ゴミ箱行きになるようなものばかり。


Henri (Oven), Josh (Bullseyeart)

結局展示会はライセンスを売りたい人たちが、買い手を探す場に他ならない。ビッグマネー、流暢なセールストーク。出版会社や投資家から金を引き出す場なのである。

僕が見た限り、ミリアは、展示会、ゲームフェア、受賞式、講演会、会議、そして若手のための展示会と、大きく5つの分野に分けられる。

展示会には落胆させられた。このショウを見るのにかかる料金と入場料(約600ドル)は、全て講演をする人たちへの支払いと展示費用のために使われるそうだ。

若手の展示会は基本的に保守的だが、その中にも世界中の大学や小さな企業からの目新しい作品もあった。なかでもマイクに向かって叫ぶことで、スクリーンのなかの黄色いボールを動かし、迷路を脱出するというフランス人のグループの作品は素晴らしかった。

また、沢山の目新しい日本の才能も見ることができた。アブストラクトなアイディアを交換するというインタラクティブメディアの可能性をよく理解した作品が多かった。作者の名前と作品名を思い出せないのが恐縮だが、動物の習性や行動を子供に教えるという作品が興味深かった。そこで僕はウサギがチョコレートミルクが好きで、それ以外のものには興味を示さないことを発見。もし日本語が理解できたら、より多くのことを理解できたのだが。

ウェブに沢山の良質な作品があるにもかかわらず、インターネットについての内容が薄かったように思う。それを補うかたちでスチュアート・マクブライドというカリスマ的な男が「Zapping the Web」と題された会議を取り仕切った。

世界各国から17人のクリエイターがこの会議に集り、メイン会場に集まった1000人程の聴衆のなかで、3分間のスピーチをした。マクブライドは彼の権威を強調すると同時に、3分間という時間を厳守させるため、審判としての役割をこなした。クリエイターたちは1秒たりとも時間をオーバーすることを許されなかった。

そこで、ジョン前田の新しいプロジェクトに関するデジタローグの江並氏のスピーチが最も大きな反響を呼んだ。そして最後にアンチロムは、40秒で制作した疑似インタラクティブTVを発表した。

インタラクティブTVに関する話題がこの会議の主な目的であった。誇大広告を背景に金を動かさずとも、様々なことを可能にできるということを理解せずに、ただCD-ROMの可能性に熱狂していた人々のことを思い出す。インタラクティブTVに関する話題はつきないが、皆、長所にばかり注目し、短所に関しては全く話題にしない。

「すでに物を持っている人たちに、どのようにして物を売るか」というのが主題であることは明らかである。
インタラクティブTVは開発段階ではあるが、すぐに大きなスケールで実現するだろう。誰も経験したことはないし、知識すらないが、莫大な投資が生じる魅力的なメディアなのである。金を集めるためのメディアであり、世界をつなぐコミュニケーションとしての可能性を探すのは絶望的だ。

サッカーの試合をテレビで観るとしたら、自由にカメラのアングルを選べる。好きな場面で制止できる。家にいながらにして賭けられる。そして、試合を観てる最中にサングラスを買うことだってできる。これが典型的なインタラクティブTVに関するコメントだ。インタラクティブTVの存在意義がお分かりいただけたかと思う。しかし、僕は希望を捨てたわけではない。洗練された素晴らしいアイディアが議論されるのを楽しみにしている。

MILIA ’99
会期:1999年2月8日〜12日
会場:Palais des feativals
http://www.milia.com

Text: Nicolas Roope
Translation: Satoru Tanno
Photos: Nicolas Roope

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