カール・ハイド

PEOPLEText: Nicolas Roope

とりあえず、僕は家族よりも会う機会が多いトマト/アンダーワールド。でも、すべてを知っている訳じゃない。
「ボーン・スリッピー」の成功の後、1年の充電期間を経て、彼らは再びスタジオに入った。
階段を登ってアンダーワールドのオフィスへ。すると今回のインタビューの相手である、カール(ハイド)がすぐ目に入った。彼は懐かしい写真などを見ていたので、昔の話や、これからの事など、沢山の話が聞けるなと予感した。

今見ていた写真は、次のアルバムのためのビジュアルですか?

いえ、アルバムにというわけじゃないですよ。忙しくなる前にちょっとやっておかなければならなくて。というのも、これからトマトの作品集の制作と、2つのエキジビジョンがあるのです。1つは5月のロッテルダムと、もう1つはドイツ、ドゥセルドルフのビルボード。トマトのメンバー1人が1つづつのビルボードを担当するので、何か面白いことをしたいなぁと思って考えているところです。また、アンダーワールドのニューアルバムと、ライブツアーの予定と同じ時期に重なった事もあって、ツアーの為のインプロビゼーションにもなっています。

アルバムの曲作りはどうですか?

資生堂のトマト展で使ったインスタレーションの為のサウンドを曲と曲の間に使おうと思っています。また、インスタレーションの場合も、テキスト、ミュージック、コード、リズムが、バラバラに点在しているのですが、アルバムの曲作りも同じようなもので、リラックスして楽しみながら進行しています。

アルバム用に歌詞はもう書いていますか?

歌詞というよりも今は「テキスト」に力をいれています。私が書いたテキストをいろいろな声で来週くらいにレコーディングする予定なので、それをディスクに焼いて、それをカットアップしたり、サンプリングしたり、ライブでプレイしたりと、初期のアルバムから私達はいつもこのようなメソッドを使います。僕にとって、資生堂の展覧会で素晴しい発見をしたことの1つは、自分以外の声でも満足するものが出来たということでした。これで私自身すごく自由になれました。

タイトルは決まっているのですか?

まだ決まってません。「What was it」というのが新作のタイトルと思われているようだけど、正式なタイトルではありません。今のところいいタイトルが見つかっていません。9月に出す予定なのですが、6月には1曲上がると思います。グラストンベリーをやってから、ヨーロッパで2、3のフェスティバルに参加して、夏にはアメリカで何日かやったあと、イギリスに帰ってくるのですが、7月の末までには少し落ち着きたいと思っています。
ツアーと同じ頃に、新しい本が出ると思います。今はそのことばかり考えていますが、エキサイティングです。

次のアルバムで何か雰囲気や試みといったところで変わったところはありましたか?

たぶんありますね。他のどのアルバムよりも一層、テキストを多く使っています。でも、今でもグルーブとかダンスミュージックにも興味があります。

以前の曲の中で、ビートや声のサンプリング、ギターをコントロールしたものを使っていたものがありましたね。完璧なビートや声のトーンというものではなかったですが。

ぼくらにとってファースト・テイクはとても重要です。僕はわざとチューニングやタイミングをずらして歌うのですが、それは単に僕が特に歌が下手だからという理由だけではなく、メロディーがインプロヴァイズされ、リズムが自然と落ち着いて、全体の感じがつかめるというのがまさにファースト・テイクなのです。その後、3、4回のテイクを繰り返して、音やリズムをまとめてますが、全体的な雰囲気が良くない時には、そのような要素をまとめあげて、正確にミックスすることが非常に重要になってくるのです。シーケンサーやハードディスク・レコーディングでそのような素材をまとめることができますから。

ドラマーが参加しているそうですが、ライブミュージシャンですか?

そうです。彼は最近のビョークのツアーでドラマーとしても参加していた、トレヴァー・モレイスで、古くからの私達の友人です。初めて会ったのは、’92年のグラストンベリーで、それ以来付き合っています。

最後に出したアルバムと「ボーン・スリッピー」のヒットで、アンダーワールドの音楽を知った人も多いと思います。その結果バンドに何か変化のようなものはありましたか?

それがレコーディングまでに1年近くもかかってしまった理由です。リハビリ期間です。ボーン・スリッピーやトレインスポッティングのあと、かなり売れ出して、いろいろなことが起きています。どんなに慎重にしていても、判断にくるいが生じたり、まったく気付かぬうちに物事が見極められなくなってしまうのです。
僕達は常に仕事の仕方やそのペースにこだわってきました。こういう周囲の状況に巻き込まれるのを避ける為に、一度、立ち止まってみなければなりません。僕達はだれよりもレコードを売って、超大物のスターになろうなどとは思っていないのです。自分達にとって良い音楽を作り、他も人々も気持ちよく聞ける音楽を作ることが大切なのです。

何にインスピレーションや気持ち良さを感じますか?

このビルディングの中で起っていることです。トマト、アンチロム(!)がこのビルにいるというのがいいですね。いろんなインタビューで答えていますが、それが何より刺激的です。
中を歩いていると、いつも変わったことがあって、面白いことが起きていて、いつもそのような所にいれるというのがいいですね。音楽で言えば、ここで起っていることはヴィジュアル的にも音的にも、僕達がバンドとして進む方向にも大きく影響を与えています。
モンティ・パイソンの映画「The meaning of life」のように、大きなビルがまるごと船のようになって出航するように、つまり、このビルがまるごとソーホーを旅立ってツアーにでかけるというような感じです
この事についてずいぶん話合いましたが、ここには充分な能力と技術を持った沢山のメンバーがいますから、優れたものを作り出す為に集結して独自にオペレートすることができるのです。今年の目標はそのような事です。インスタレーションのスペースを設けたり、新たな領域へ向けてメディアを使って発信していきたいと思っています。

地球上に存在する彼らのファン同様に、僕達アンチロムもこのアンダーワールドの新しいアルバムを聞くことを待ちわびている。未だにトマトの他のメンバーでさえも一片の音像さえも聞かされることなく、あるいはすべてのミックスダウン、いやリリースされるその時まで聞くことはないであろうこのアルバム。このある種の儀式にも似た彼らの感覚こそが、彼らの作品に対するプライドや感性、物作りの姿勢というものを示唆している。

Text: Nicolas Roope
Translation: Satoru Tanno
Special Thanks: Coba

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