NIKE 公式オンラインストア

沖野修也

PEOPLEText: Takahiro Nakagawa

今回のユニットでは、沖野さん以外のメンバーはコンピューターに強いデジタル系の方ばかりですよね。新しい音作りをするにあたって、沖野さんは『ヴィレッジの建設にあたり、「現場監督」としても役割をはたした』という表現をされていて、面白いと思ったのですが。

これまた、日本論のようになりますが、こうした現場監督的な仕事に対する評価って、日本はものすごく低いと思うんですよ。僕は楽器を演奏するわけでもないし、曲もつくらない。でも僕のような人間がいるから、物事がスムーズに行くし、ミュージシャンもすごく良いコンディションで望んでくれる。方向性を決めるということは、マネージメント業を通してやってきたんですが、日本では、「マネージャー = 付き人」というイメージが強くて、僕がやっている作業に対しての評価が低かったんですよ。だから、『アーティスト・プロデューサー宣言』をして僕のやっている仕事をもっとアピールしていこうと思ったんです。
現場監督っていう表現も、今回でいうと設計したのは川崎燎さん。アレンジしたり、実際の作業をするのが、コズミック・ヴィレッジで、その現場に立ち合って、皆のケツを叩いたり、弁当の手配をしたりとかする現場監督が居ないと、「建築物」って建たない訳ですよ。だから、僕が音楽にどう関わっているのかということを分かってもらえたらと。

本当に日本ではこういう意識は非常に低いですね。海外ではディレクションすることのクリエイティビリティというのは、圧倒的に認知されているのに。

そう、映画監督って、別に何もしないでしょ。でも、皆「ゴダール」って名前で、映画を見にいく。今の日本のプロデューサーって、厳密にいうとプロデューサーじゃないんですよ。コンポーザー兼アレンジャーだから。それはそれで、また別の才能が必要な訳で、僕のやっている事が本当にディレクターであり、プロデューサーであると思うんです。

そうした意味ではジャンル的にも新しいものを確立したいというのがあると思うのですが、音的には「97年的ジャズ」というのが、とても具現化されていて、「TRINKETS&THINGS」にも3バージョンあって、「ジュピター2000」、「ハル」などのバージョンは、本当にフューチャリスティックなサウンドになっています。沖野さんの考える宇宙観、デジタルな未来について、どう考えていらっしゃいますか?

そうですね、レトロフューチャーっていうコンセプトはもうここ何年も前から使われてますけど、僕の考える未来観っていうのは、暖かみのある未来というか、60年代、70年代に考えられていた2000年というものが、ファッションでも、インテリアでも再評価されていますが、現実は違った方向に行ってますよね。
退廃的だし、冷たいし。人間は未来っていうと人工的で人間が自己を失うという感じで捕えがちだけど、過去があって、未来に繋がっているわけだし、だから過去にあった良さ、人間としての温もりとかを残した未来であって欲しいと思うんですよ。単純な未来とか、宇宙とかじゃなくて、人間として失ってはいけないもの、そして進化すべきものという両方を考えているんです。
僕は「音」で人間を開放したいと思っているし、個人という枠から放たれてほしい。個人から宇宙くらいに(笑)。っていうと極端だけど、本当にそれくらい開放してあげたいし、自分自身開放されたい。
それで、人を開放する音って何かを考えたし、それはムーグであったりとか。そんな未来を感じさせるものが、この97年に於いては、人を開放させるものであり、ドラムンベースやテクノとかを吸収したジャズがあってもいいんじゃないかって思うんです。

「21世紀のヒッピー」に必要なモノとして、『プレステと鍋』を挙げていましたが、また、『クラブを鍋化する』という表現もあったりして、この「鍋」とはどういう意味なのでしょう?

プレステは、現代のコミュニケーションのツールになってますよね。僕は機械おんちで、ゲームも苦手なんだけど、最近「IQ」とかにハマってたりして。で、これが、「自分はこうだった」とか、「君はどうだった」とか、というコミューニケートができるんですね。だから、「これ買ったんだけど遊びにおいでよ」とかで人が集まったりコミュニケーションできる。
で、「鍋」はというと、そういうコミュニケーションの原始的なツール。鍋は、もっと直接的で、本当に突っ込んだハシとハシのぶつかり合い、みたいな(笑)。二次的じゃないんです。その両方を僕は大切にしたいんです。実際、僕ら集まったら、鍋してゲームしてって感じだし。
今回のアルバムにしても、色んなジャンルをミックスしている訳で、僕がDJをするときのように、基本はジャズなんだど、ジャズを感じさせるロック、ジャズを感じさせるハウス、テクノ、ドラムンベースとか、あらゆる音楽のミックスというか。

それこそ、「鍋」だと、

そうそう、「ちゃんこ状態」「ごったに状態」。でも、味付けは関西風で、そこがちょっとJAZZYかなと。(笑)

では最後にコズミック・ヴィレッジを含む今後の沖野さんについて教えてください。

コズミック・ヴィレッジでは、ベレーザというニューヨークのラテン系のアーティストのリミックスをします。これは7月にアルファミュージックから発売される予定です。あと、キョート・ジャズ・マッシヴとしてDJ活動をする予定でいます。そして、元オルケスタデラルスでパーカッショニストのゲンタさんと「ラテンプル」というユニットをつくりまして、「日本版ニューヨリカン・ソウル」みたいなのも考えています。「日本人だってラテン好きだぞ」みたいなノリですね。(笑)

Text: Takahiro Nakagawa

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
MoMA STORE