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沖野修也

PEOPLEText: Takahiro Nakagawa

モンドグロッソ、マンディ満ちるのプロデュースワークや、DJとしての活動、渋谷のクラブ「ROOM」の経営など、幅広く日本のクラブジャズシーンを牽引しつづける沖野修也氏。彼が自ら動き出した。今まで彼がDJとして表現してきた「日本の70年代フュージョンと現在のクラブミュージックの融合」を具体化させたアルバムを川崎燎、マンディ満ちるなどをゲストに迎え、コズミック・ヴィレッジとして発表した。そんな沖野氏に「97年的ジャズ」についてのインタビューを試みた。

今回新しいユニット「コズミック・ヴィレッジ」でアルバムを発表されましたが、全編川崎燎さんのカバー集という事になっていますね。

元々は、川崎燎さんが契約している日本のレコード会社の方と「ROOM」で知り合ったんですよ。その方にラルフ・マクドナルドについてのコメントを依頼されて、彼も70年代のジャズやフュージョンと共にモンドグロッソやマンディなどもお好きな方で、モンドグロッソと川崎燎さんの共演ができないかなぁ、という雑談の中から生まれてきたんです。

このアルバムに収録されている、タイトル曲でもある「TRINKETS&THINGS」という曲は以前から僕も好きで、しかも70年代の日本のジャズ/フュージョンの中でも、世界のクラブフィールドで人気のある曲だと思うのですが、この曲をカバーしようと思ったきっかけは何でしょうか?

僕も元々、この曲がとても好きで、それだったらね、僕が音作りをして川崎燎さんが参加するといった企画アルバムを作ろうという話になったのです。でも、「川崎燎 ミーツ 沖野修也」といったカタチじゃ、あまりにも企画モノ的で、いやだったので、それならユニットを作ってしまって、そのユニットが川崎燎さんのカバーをしましたといったカタチにした方が、僕のこの曲に対する思い入れも分かってもらえるし、やりかたとしてスマートかなと。

このアルバムの音つくりについてお聞きしたいのですが。「TRINKETS&THINGS」にしてもドラムンベースを取り入れてますね。初めからこのアイディアがあったのでしょうか?

この曲は以前にもサンプリングされたことがあって、僕的には、エブリシング・バット・ザ・ガールが「ジャングルは21世紀のボサノバだ」とコメントしているのを見て、ちょっと待てよ。というのがあったんですよ。
僕は以前からボサノバとサンバの関係というのが、ブレイクビーツを倍速にしたジャングルの考え方の中で作れないかというのがあって、僕なりの新しいボサノバとドラムンベースの融合ができないかなと思っていたところ、丁度この「TRINKETS&THINGS」の話があって、この曲を今の時代の強いビートでアレンジしようと思ったのと、川崎燎さんのアプローチもカバーするなら、絶対弾いてもらいたいと思ったのです。

コズミック・ヴィレッジのコンセプトについてお聞きします。「21世紀のヒッピー」というフレーズがありますが、60年代のヒッピーがコミューン化して、それぞれの主張や、宗教感をもとに、それぞれのVILLAGEをつくりあげた様に、日本のジャズシーンの中で沖野さんをコアとして、新世代のヒッピーヴィレッジをつくりあげようとしているのかな、とも思えたのですが。

コズミック・ヴィレッジのメンバーって、とても仲が良くて、集まってメシ食って、そこでいろいろ話しあいをするんですよ。それは音楽に限らないことなんですが、コミューン感覚というのはとても好きなんです。
 でも、現代って、真剣に何か語り合ったりすることがどんどん希薄になっていて、議論したり討論することが、今の日本では、とても恥ずかしいというところがあるじゃないですか。でも、むしろ、僕は、真剣に話合える方がカッコいいと思うんですけどね。

同じ意識を持つ人達とコミュニケートしたいという感覚はだれでもありますよね。それがなければ、寂しすぎる。

だから、人生とか、それこそ宇宙感とかを人々が語り合える「場」は必要だと思うし、僕がつくった所にも来てもらいたいというのもあるし、それぞれの人がそういう「場」を持てればいいなと思うんです。それで「21世紀のヒッピー」というフレーズをつかったんだけど、コズミック・ヴィレッジというのは僕が考えるコミューンであるし、ビレッジというのは正にそういうコミューン的なものを象徴するものです。

ウォーホルのファクトリーじゃないですが、そういった感覚、そこからクリエイトにつながっていくといったことをイメージされているようですね。

実際「ROOM」には、カメラマン、役者、ミュージシャンなど、色々な人が集まって来ているし、そこでの出会いがモノ作りの原動力になればと、常々思っています。60年代、70年代のカルチャーって、90年代にもファッションにせよ、音楽にせよ、とても影響しているじゃないですか。そうした当時の良さというものを今に引き継ぎたいし、でもこの90年代にしかない良さもあるし、そうしたバランスを考えて、良い部分を今、どうやって取り入れるか。そうした意味で、 90年代版のファクトリーのようなものができればとも思っています。

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