六本木アートナイト 2025
六本木アートナイト2025の中核をなすのは、国内外のアーティストによる圧倒的な作品群が織りなす星座のような光景だ。今年のテーマの中心となるのは韓国で、日韓国交正常化60周年を祝う。注目のアーティストには、2025年LGグッゲンハイム賞受賞者のキム・アヨンが名を連ね、六本木ヒルズアリーナの巨大LEDスクリーンで《デリバリー・ダンサーズ・アーク: 0度のレシーバー》を発表。この映像作品はCGIとスペキュレイティブ・フィクションを融合させ、技術・労働・アイデンティティをテーマにテクノフューチャリスティックなソウルを構想する。
イム・ジビン《あなたは一人じゃない》
彫刻家カン・ジェウォンは、デジタルで生成された彫刻を物理的に再現したシリーズ《Exo2_crop_xl》など、異世界的なインフレータブル作品を展示。一方、イム・ジビンは進行中のプロジェクト《EVERYWHERE》から象徴的な〈ベア・バルーン〉シリーズを六本木ヒルズ周辺と東京ミッドタウンに展開。日常的な都市の出会いを幻想的な美術館へと変える遊び心あふれるパブリックアートだ。韓国勢の最後を飾るのは打楽器アンサンブルTAGO。雷鳴のようなドラム演奏で街を熱狂の渦に巻き込む。またサーカスパフォーマーのソ・ナンジェは参加型作品《ポロシウム》で観客と共に創作する場を提供する。
小野海《Prism-Aureola》
六本木ヒルズでは、川原隆邦が電子基盤を和紙化し墨で月の裏を描く、10メートルを超える一枚和紙の水墨画《量子の共鳴》を発表。日本の工芸をデジタル時代に再解釈する。リン・ジエウェン/ラバイ・イヨンは子供たちから着想を得た遊び心あふれる織物と金属の彫刻《赤い恐竜》《緑の恐竜》を発表。同会場では小野海の《Prism-Aureola》が自然現象を巨大な彫刻形態に変容させ、インドネシア人アーティスト、アリ・バユアジの〈Weaving the Ocean(海を織る)〉プロジェクトは廃棄された釣り糸や漁網などのプラスチック廃材をを再利用し、持続可能性のメッセージを込めた発光するテキスタイル作品へと昇華させている。
東京ミッドタウンは、伝統と革新の対話をさらに深める。イムの陽気なインフレータブル作品と並んで、小林万里子の《世界の心臓》は、染めや繊細な刺繍、布、糸、和紙、粘土など多様な自然素材を用い、水の循環を称えるインスタレーション。新進気鋭の中田愛美里・まちだリなは日常空間に映像ベースの介入をもたらす「移動式アートシアター」を展開。特別ステージプログラムでは三味線や尺八といった伝統楽器がDJや電子音楽パフォーマーと共演する。
国立新美術館は、批評的かつ壮大なスケールのプロジェクトを展示する。胡宮ゆきなの《平和なんて朝飯前(10XL) vs 平和なんて朝飯前(10XL)》は、平和と暴力という相反する象徴を並置した、食べられるインフレータブルのハイブリッドで来場者を迎える。一方、主要展覧会「時代のプリズム:日本で生まれた美術表現 1989-2010」は、1989年から2010年にかけての日本の芸術的変遷を考察。これとは対照的に、華やかな特別展「ブルガリ カレイドス 色彩・文化・技巧」では、職人技と世界的な美意識が融合したジュエリーの名作350点以上が展示される。
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