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イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル

HAPPENINGText: Alma Reyes

第4章「想像上の旅」では、モロッコ、アフリカ、ロシア、スペイン、アジアをイメージした数多くの衣装が展示されており、輝やかしいサンローランの作品世界が楽しめる。ベルジェとともに家を購入してたびたび訪れたモロッコを除けば、サンローランはそれほど旅が好きだったわけではない。その代わりに鋭い想像力を働かせて、異国をファンタジックな視点で捉えたのだ。


第4章「想像上の旅」スペイン 展示風景 Photo: Alma Reyes

サンローランは次のように述べている。『私には… 頭のなかである場所や風景に没頭するための画集さえあれば良い…。そこに行く必要性を感じない。それに大いに夢中になったのだ…。』(イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル、国立新美術館、2023年)。編み込みのキルティング・ジャケット、ファーブーツ、タフタパンツ、ターバン、絹のダマスク織――尽きることのないサンローランの想像力は、創造的なアイディアを広げる一助となった。


第4章「想像上の旅」日本 展示風景 Photo: Alma Reyes

サンローランは日本をオマージュして、桜、藤、葦などの植物をプリントしたシンプルで直線的なイブニング・ガウンと絹キルトのキモノ・コートを制作している。サンローランとベルジェは1963年に初めて日本を訪れ、春夏コレクションを発表した。サンローランは毎回訪れるたびに日本への愛情を深め、触発されたものを作品に取り入れた。サンローランは次のように述べている。『早くから私は日本を探し求めていた。そして、歴史がありながらもモダンなこの国にすぐに魅了され、それから幾度となく影響を受けてきた』


エル・ロシオの聖母像の衣装、1985年、絹ブロケードと絹サテン/絹レース/メタルとクリスタル、パリ、ノートルダム・ド・コンパシオン教会寄託 Photo: Alma Reyes

サンローランは中世から1940年代の服飾の歴史を探求し、様々な色、カット、素材を用いて、洗練された衣装を制作している。ウエディング・ガウンも何点か出展されていた。ウエディングドレスは、オートクチュールのファッションショーには欠かせないものだ。《エル・ロシオの聖母像の衣装》(1985年)は、パリのノートルダム・ド・コンパシオン教会にあるエル・ロシオの聖母像のために制作された作品だ。16世紀をテーマとするガウンとマントは、絹ブロケード地、サテン、レースから成り、床に届くほど長い。王冠にはメタルとクリスタルが、胸元にはアクセサリーが施されている。第10章「花嫁たち」の「バブーシュカ」ウエディング・ガウン(1965年)は、ウールのニットと絹サテンのリボンで花嫁の体を彫像のようにしっかりと包んだ作品で、顔と手と足のみが露出している。

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