古都祝奈良 – 時空を超えたアートの祭典

HAPPENINGText: Taketo Oguchi

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元興寺(小子坊)/「息をつくために – 国旗」キム・スージャ(韓国) 撮影:木奥惠三

「ならまち」エリアに位置する元興寺では、韓国からの招待作家・キム・スージャによる作品が二点展示されている。一つ目の作品は、小子坊に展示された「息をつくために – 国旗」という映像作品。東アジアを代表するアーティストであるキム・スージャは、自身の文化的なルーツを出発点に、世界の文化や社会の複雑さを映像やインスタレーションで表現している。

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元興寺(石舞台)/「演繹的なもの」キム・スージャ(韓国) 撮影:木奥惠三

小子坊を出て、本堂の飛鳥時代の瓦屋根を眺めながら少し歩き進めると、キム・スージャの二つ目の作品「演繹的なもの」が、石舞台の上に現れる。本作品も床面には鏡が敷かれており、その上に鎮座した黒いオブジェは、鏡に写ることで、まるで空にぽっかりと開いたブラックホールに吸い込まれてしまいそうな、不思議な視覚効果を生み出していた。

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公納堂町の路地奥 /「人間の家」西尾美也(日本) 撮影:木奥惠三

江戸から明治期の歴史を感じさせる「ならまち」エリアには、国内から選抜された作家の作品が点在している。かつて呉服商が営まれていたという公納堂町の路地奥には、人が集えるパッチワークの家が見える。これは、ならまちの住民から古着を集め市民と共に公開制作を行った、奈良出身の作家・西尾美也による作品「人間の家」だ。天気が良ければステンドグラスのような美しい光に満ちる心地良さを体験できるだろう。

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今西家書院 /「言ノ葉は、光と影を抱く」紫舟(日本) 撮影:木奥惠三

室町時代における初期の書院造りの遺構として重要文化財に指定されている今西家書院では、書家・紫舟のソロ・プロジェクトが展開されている。ガラスでできた立体的な書からなる「言ノ葉は、光と影を抱く」と題された紫舟の作品は、日本固有語である「大和ことば」をモチーフに、言葉の持つ二面性(光と影)を表現したものだ。

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