「ステレオグラフィックス」

THINGSText: Asami Miyamura

香港を拠点にしたアート・デザイン系出版社「ヴィクショナリー」から、2008年10月、立体グラフィックに焦点を当てた本「Stereographics」が出版された。本書では、様々な立体的なモチーフを使ったグラフィック作品を集め紹介している。

ステレオグラフィックス

本の表紙では、本書の中でも紹介されているジャン・ジュリアンの作品が目に入る。シンプルで、鮮やかな色彩で、立体作品の楽しさを最初に魅せてくれる。

ステレオグラフィックス

本書の導入部分は「Behind the Scenes」セクションで、4人のアーティストの作品の制作風景を紹介している。実は、表紙のカバーをめくると表紙の作品の制作風景が見られる、というちょっと嬉しい仕掛けもある。

続いて、「Stages Set」「Objects Installed」「Types Constructed」と3つのセクションに分かれ、作品の紹介が始まる。それぞれのセクションから数名のアーティストの作品をピックアップして、本書を紹介したい。

ステレオグラフィックス

まず、「Stages Set」から、写真家のダン・トビン・スミス。本書の中で他のセクションでも沢山の作品が掲載されており、ページをめくっていて特に目を引くのが彼の作品。作品にはアーティスト独特の重力感がある。勢いを感じさせる動きの一瞬を捕らえた作品から、ついついこの続きはどうなっていくのだろうと、いろいろ空想してしまう。

ステレオグラフィックス

「Objects Installed」から、ジュリアン・ヴァレー。沢山の物がきれいに並んで置かれている。置かれているものは家の中にある、ごく日常的な物だが、それらの物に新しい命を与えているかのようにさえ思える。他の立体的に作られたモチーフによる作品もおもしろい。

ステレオグラフィックス

「Types Constructed」からは、散らかした服で作る地図アートで一躍知られる存在となったコリエット・ショーナーツ。部屋の壁に平面的なポスターが貼られているが、平面的な世界から飛び出てきてしまったかのような立体的なモチーフが散りばめられている。他のページの作品も部屋や風景のなかに忽然とモチーフが現れたりして、わくわくさせられる。

こうして本書を見て、立体的な表現のグラフィックは、体で感じ、楽しみながら作ることができるのだろうと感じる。そして、写真越しではなく、この作品を作っている制作場所に行ってみたくなる。
平面だけがグラフィックではなく、立体的にグラフィックを作り、グラフィックの世界を現実のものにしてしまうことの楽しさ、それを見ることの楽しさを感じることができる一冊だ。

Stereographics
仕様:224ページ、205 x 265mm
発売:2008年10月
言語:英語
ISBN:978-988-98229-0-3
価格:US$40.00
http://www.victionary.com

Text: Asami Miyamura

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