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カンヌを席巻したソーシャル広告

HAPPENINGText: YOSH

アート作品のような仕上がりは、屋外広告の部門「アウトドア・ライオン」を受賞したアルゼンチンの「Flooded Home」。ブエノスアイレス市街地の池に沈みかけた家の屋根の部分を原寸大でつくって浮かんでいますが、その小脇に「THE NORTH OF ARGENTINA NEEDS YOUR HELP」の看板が。これはアルゼンチン北部で起こった大洪水に意識が向かせるキャンペーンで、道行く人がケータイで写真を撮るなど話題を喚起しました。遠く離れた場所で起こった出来事を、どうやって自分たち事に変えるのか、とても示唆的なキャンペーンだと思います。

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続いて、創造的なメディアの使い方が評価される「メディア・ライオン」は、その発想はなかった!という作品が目白押し。中でもシルバーを受賞した南アフリカの「世界エイズデー」の広告「AIDS STATS」は目の付けどころが素晴らしい。「600万人がHIVウイルスを持っている」「2005年の3歳〜34歳の女性のHIV感染率は 26 %」など、新聞のノンブルが全て現在のAIDSの現状を伝える数字になっています。よく目にする部分だからこそ、メッセージが染みこんでくる。新聞社にしかできないスマートなクリエイティブですね。

締めくくりとして映像部門「フィルムライオン」から2作品。今年からTVCMだけでなくネットで配信される映像も対象となったようです。個人的に最もはっとさせられたのが、ポルトガルのソーシャル広告「Test」。ボロ切れをまとった少年(左)、オシャレした少年(右)が登場しますが、実はどちらも同じ子どもです。それなのに、周りの反応がこんなにも違うという紛れもない事実は、僕たちの無意識に訴えかけます。

最後は、明るく朗らかな映像で。ビデオに登場する少年タン・ホン・ミンは女の子のウンミに片思い中。その気持ちはずっとシークレットにしていたのですが、カメラの前に登場したウンミは「ボーイフレンドは、タン・ホン・ミンです。」と恥ずかしそうに打ち明ける。そして二人は手を取り合って向こうの方へ。。もう、ウズウズするような子どもたちの笑顔にほんわかする中で、最後に出てくるコピーが「Our children are colour blind. Shouldn’t we keep them that way?」(子どもたちにとって、肌の色は関係ありません。そのままでよくないですか?)。メッセージも表現も何もかもが、爽やかでリアルで大好きな作品です。

ざっと、ボリュームたっぷりに見てきましたが、いかがでしたでしょうか。

街に飛び出してハッとさせるゲリラ的なアイディア、あるいは押しつけがましくなく本質に気づかせる手法。どれも人に意外な気づきを与え、前向きな共感を生み出していますね。商品だったり企業だったり、消費を喚起するためのコマーシャルな存在としての広告から、時代に必要なメッセージを届けるための広告へ。そのシフトから、今後も目が離せません。

Text: YOSH

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