セルビア現代アート展「オクトーバー・サロン」

PEOPLEText: Eduard Prats Molner

オクトーバー・サロン・アワードとは何ですか?

5人の国際的な審査員によって選出されるそれぞれ同等の3つの賞(2500ユーロ)と、ベルグラード文化センターによって企画された個展を含め、同センターより授与される特別賞があります。

そのアワードの為に、特別にアーティストを招聘しているのでしょうか、それとも誰もが応募できるのでしょうか?

決まったコンセプトにより、アートディレクターがアーティストを招聘しています。コンセプトに関連したアーティスト達全員に窓口を開く場合もあります。招聘の決断方法は、アートディレクターに委ねられています。

これから開催される2008年度のイベントについて教えてください。

第49回オクトーバー・サロンのアートディレクターには、ベルリンで活動するセルビア人キュレーター、ボヤーナ・ペイジが選ばれました。今回のタイトルは「アーティスト市民」、アート・イン・コンテクスト(特定の状況におけるアート)と呼ばれているアートを実践します。

ボヤーナ・ペイジ曰く、『タイトルから分かるように、実際の展覧会のトピックは、タイトルが示しているものそのものというわけではなく、色々なトピックが含まれているのです。このタイトルが示しているのは、今ある現実に向き合い、自らを批評の対象となってしまうような立場に位置づけているアーティストたち、いわば、政治的に自分達の立場を位置づけているアーティストたちに出会うべきであるということ、そしてこの今ある現実という状況において、アーティスト達が表現の営み、権力の関係、アートや政治の施設のあり方、そして自らの制作活動を問い直すということなのです。』

セルビアは、つい最近政治的変動を体験しましたが、オクトーバー・サロンに関連して、今のセルビアの政治的シナリオをどう評価しますか?

今現在セルビアは、政治的にとても敏感で困難な状況に立たされていて、またもやニュース速報、一面記事として扱われるような状況に陥ってしまいました。とても重いプレッシャーの中、私達はアーティストたちと共に、真剣ながらも心が通じるユーモアのある展覧会を作っていきたいと思っています。

これから先の数年間、ベルグラードはどのように進化していくと思いますか?パリやロンドン、ベルリンのように、ベルグラードも芸術的、文化的首都になり得ると思いますか?

ベルグラードは200万人の人口を抱える大都市です。活発で面白いアートシーンも存在しますし、アートにおいて重要な地域になる可能性は大いにあると思います。

オクトーバー・サロンとベルグラードに訪れようと考えている人たちへメッセージはありますか?

先入観は家に置いてきてください。

セルビアのアートシーンと、世界におけるその位置についてどう思いますか?

セルビアのアートシーンは、値するだけの認知はされていないと思います。ですから、私達が今しなければいけないことは、セルビアのアートシーンを人々に知ってもらい、見てもらうことなのです。

2008年度の第46回オクトーバー・サロンのアートディレクターに選ばれたボヤーナ・ペイジについて教えてください。

1948年ベルグラードに生まれ、ベルグラード大学哲学学部にてアートヒストリーを専攻しました。1977年から1991年まで、ベルグラード大の学生文化センターのキュレーターを勤め、ユーゴスラビアや海外のアートの展覧会を開催していました。1971年からアート評論を書き始め、1984年から1991年まで創刊されたベルグラードのアート学術論文ジャーナル誌「モーメント」のエディターでした。

October Salon, Belgrade
Bojana Pejic, Art director of the 49th October Salon

1991年から彼女はベルリンに住んでいます。1995年に、ベルリンにある文学館での「Body in Communism (共産主義における体制)」という国際シンポジウムを開催しました。彼女は、1999年ストックホルム現代美術館で開かれ、2000年ブタペストのルドウィグ・ファンデーション、2000年から2001年にかけてハンブルグ美術館でも開催された、「After the Wall – ヨーロッパポスト共産主義のアートと文化」のキュレーターでした。彼女は1999年ウィーンのルドウィグ・ファンデーションで開かれた「Aspects/Positions(側面/立場)」も共同キュレーションしています。

2002年から2004年の間は、熊本現代美術館の国際アドバイザーも勤め、2003年にはマリーナ・アブラモビッチの回顧展をキュレーションし、この回顧展はモリガメでも開催されました。2003年には、ベルリンにあるフンボルト大学にて、ルドルフ・アーンハイム客員教授として招かれました。サラエボ現代アートセンターで開催された「De/Construction of Monument(モニュメントの構築/解体」プロジェクトのアドバイザーであり、またサラエボのアカデミー・オブ・ファイン・アーツでは、「共産主義体制」をテーマとしたセミナーを公演しました。

2005年5月には、「The Communist Body – An Archeology of Images: Politics of Representation and Spatialization of Power the SFR Yugoslavia 1945 -1991(共産主義体制ーイメージの考古学:1945-1991ユーゴスラビアSFR権力における表現と空間性の体系)」(出版準備中)という論文で博士号を取得しました。彼女はまた、オルデルンブルグの大学にあるインスティテュート・フォー・カルチャースタディーズにて、国際ジェンダー学のマリア・ゲッパート=メイヤー客員教授でもありました。

オクトーバー・サロンは、ベルグラード市内各地で開催され、とても計画性のある素晴らしいアートイベントです。作品の選択も素晴らしく、建築を通してその歴史が語られ、飲食店や夜の遊びも充実したベルグラードという都市を訪れるには、このイベントは絶好の機会となるだろう。

Text: Eduard Prats Molner
Translation: Kyoko Tachibana
Photos: Courtesy of the Belgrade Cultural Center

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