越後妻有アートトリエンナーレ 2006

HAPPENINGText: Yurie Hatano

開催初日の7月23日は、数日前までの大雨とは打って変わり、朝から気持ちのよい快晴であった。


Hiroshi Hara + Atelier Phi., Echigo-Tsumari Exchange Center “Kinare”, 2003

十日町エリアにあるステージ、原広志+アトリエ・ファイ建築研究所が手がけた「越後妻有交流館・キナーレ」(2003)内の屋根の無い池では開会式が行われていた。アーティスト、サポーター、来場者達が集まり、50日間のたわわな実りの幕開けを祝った。


Katusmi Nakazawa, Floating Bamboo, 2006

中里エリアに足を運ぶ。住宅の合間を縫うようにしてある道は、地図で確認するよりわかりにくく、時にとても狭い。映画美術監督である中澤克己の作品「フローティング・バンブー」(2006)は、慈善寺の裏にある大きな森の中にあった。自然への畏敬を失い、多くの可能性を犠牲にしてきた文明世界に対してつくられたという浮遊する竹垣。ここを通って私たちはこのままどこへ向かうのだろうか。高く茂ったブナと杉の木々全体が作品の風景として強調され、自分を小さく感じながら歩く。


Naoko Mizusawa, Our Agriculture, 2006

慈善寺内には水澤尚子の野良着をデザインした4点の作品「僕らの農作業」(2006)が展示されている。寺の中から出て来た地元の人々は半ば強引とも思える勢いで、中に招き入れてくれた。『大地の芸術祭ということで、私たちもアートを用意しました。』と言って出してくれたのは、綺麗な濃い紫色をした小茄子の浅漬けである。確かにこれは、大地と彼女たちのコラボレーションによる傑作であった。お茶を立ててくれ、集まって来た地元の人達と一緒にいただく。その他、蓮の葉っぱから日本酒を注ぎ、茎の先端から飲む、という伝統のおもてなしも。思わぬ豊かな時間をここで過ごすことになる。


Hirotoshi Sakaguchi, For Warm Image – Shinano River, 2000/2003

慈善寺の人々に見送られ、同じく中里エリア内「ミオンなかさと」へ寄ってみた。坂口寛敏の作品「暖かいイメージのために—信濃川」(2000/2003)が、子供達が駆け巡る楽しい遊び場として川沿いを辿る。


CLIP, Lantern on a Riverbank

国の予算の建設に参加したという「CLIP」(日本)による「河岸の燈籠」。夜間にはすりガラス越しの燈籠のような灯りで存在感を放つというトイレ。


Jaume Plensa, House of Birds, 2000

遠くからでもよく見えるジャウマ・プレンサ(スペイン)「鳥たちの家」(2000)は、6年前からそびえ立っている鳥たちのためにつくられた19メートルのタワーだが、ここに実際に鳥がやってくることがあるかどうかはわからなかった。


Osamu Tsukihashi and TEAM PARKLETTE, PARKLETTE, 2006

槻橋修+東北工業大学「TEAM PARKLETTE」による車を牌に見立てた色合わせゲーム「パークレット」(2006)が「ミオンなかさと」駐車場で行われる。同じ色の車が揃ったら『COMBO!』とか。この場所では唯一の2006年プロジェクト。

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