ニッポン・コネクション 2005

HAPPENINGText: Yurie Hatano

さて、ニッポンコネクションのメインである映像作品であるが、これは毎年、主に3つのセクションに分かれて上映されている。

一つ目の「ニッポンシネマ」というセクションは、メインとなる最大の会場で行われ、上映される平均約100分の作品は、ほとんどが日本の映画館でも公開されているもの。「血と骨」「世界の中心で愛を叫ぶ」「インストール」「下妻物語」などが、英語の字幕付きで公開された。舞台挨拶を行った鎌田義孝監督の作品、北海道を舞台に撮影された「YUMENO」は、日本国内でも地方公開が予定されている。

2つ目の「ニッポンデジタル」というセクションでは、ジャンルや長さを問わず、アンダーグラウンドなものから世界的にリリースが決定しているものまで、そしてドキュメンタリーからアニメーションまで、実に様々な作品が上映される。大阪のプロジェクト「プラネット・スタジオ・プラスワン」からは、アニメーションのショートフィルムを含む作品が数十点上映され、中でも白黒の映像をストーリーの持つ意味にからめた、浅川まこと監督の「あかをみる」は定評があった。

また、マネキンを用いた新しいコメディ短編集「オー!マイキー」は、映像、音楽、ダンス、グラフィック、ジャンルの枠を越えた集団キュピキュピの代表、石橋義正監督の作品だ。上映後の質問タイムには多くの観客が残り、他の国での反応はどうだったか?などと興味津々の様子を見せた。『インターネットや携帯電話を使った、新しい映像配信のあり方を考えています。』と石橋氏は語る。

役者による演技でもなければアニメーションでもないこの実験的とも思える作品には、すでに全部で130のエピソードがあり、アメリカでのリリースも決定している。『声の吹き替えが簡単なので、例えば世界同時にそれぞれの国の言葉で見れたりしたら素敵ですね。』と、韓国、イタリア、カナダなどに進出しはじめ、また、主人公キャラクターのマイキーをテーマにした展覧会やライブなども行っている。

最後の「ニッポンレトロ」というセクションでは、全て鈴木清順監督の映画から、「殺しの烙印」「河内カルメン」「ピストルオペラ」など計10作品が上映された。このセクションは今年で3回目となり、日本映画の歴史を感じられる内容を紹介し続けている。今回も古くは1956年の作品「港の乾杯ー勝利を我が手に」(鈴木監督のデビュー作)や、大正時代のストーリー「陽炎座」「夢路」などが上映された。また「探偵事務所23ーくたばれ悪党ども」のチケットは即完売となり、鑑賞をあきらめる者も多くいた。

こんなに様々なジャンルの日本だけの映像作品を、一気に鑑賞できる機会はヨーロッパのどこにもない、と現地の日本映画ファンは興奮気味。『作品の中の特に意味をなさないワンシーンをとっても、それは私たちには馴染みのない新鮮な景色でとても面白い』のだとか。しかし、映画の中でも沢山用いられる日本独特のノンバーバルコミュニケーションについては、『どうしてそこで反応をしないのか、どうしてここでこう言わないのか、という部分がいっぱいあってもどかしい!』と、なかなか理解に苦しむようだ。来場した日本からの監督や役者達が、『評価されるかどうかよりも、現地の人の反応を間近で見れることが面白い』と言うように、ニッポンコネクションはどんなジャンルの日本人制作者にとっても、またとない表現の機会であるのだろう。

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