東京デザイナーズ・ブロック 2004

HAPPENINGText: Yasuharu Motomiya

そして、国際連合大学では様々なテーマを取り扱ったシンポジウムなども開かれていて、例えば「人生をデザインする」というテーマで水道橋博士などを招きトークディスカッションなどを行っている。その中の一つローテックの「アーバン・サロン」へ参加する。


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ユニクロの店舗デザインなどでご存知の方もいると思うが、ローテックは、ジョゼッペ・リニャーノとアダ・トーラのユニットでコンテナやタンクローリーなどを利用して斬新な建築物をデザインする建築ユニットだ。今回行われたレクチャーは主にコンテナを利用した住宅、店舗または空間デザインに関するものだった。

まず、都市の一部分の切り取った写真を彼らのキーワードの言葉とともに延々とスライドさせ続け、彼らがデザインした建築物のコンセプトを資料映像を交えながら説明するというもの。


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彼らは、都市のコンテキストを読み取り、既存にある建物をどう使っていくかに興味があるという。まさに建物に溢れかえった東京・日本にフィットする考え方だと思った。都市の景観無視の超ハイテク建築にテクノロジーを投入するより、現在あるものと新しいテクノロジーをミックスして成長させていくほうが賢い考え方だろう。

その考え方と多少リンクしているのが、10月にオープンした「池尻ものづくり学校」。

廃校になった小学校を再利用して、様々な分野のクリエイターが集まり、一種のアートコミュニティーを作りそこから発信していこうというコンセプト。合法スクワット的発想。しかし、学校という広大なスペースを利用する建造物を利用価値が下がったからただ壊して違う建物を建てるよりよっぽど気の利いた発想で、ローテックと通じる部分がある。

学校の基本構造はそのままに教室一部屋、一部屋をオフィスに使ったり、ワークスペースにしたり、ギャラリーにしたりと、本当に色んな利用の仕方があり、現にここではそうしている。そこにいるだけで、懐かしさと新しさが共存し、イメージの膨らむ場だった。

日本全国にこういった場はあるだろうし、同じような試みをしている場所はある。そして、もっともっと現代が持っている価値観では捨てられていってしまう場所はあるはずだ。でも、少しでもその問題に気付いて利用していく気持ちがあり、「池尻ものづくり学校」のように新しい形で再生する場が各都市で増えれば、生活や都市に本当に共存したアートやデザインが生まれてくるだろう。

1968年当時にあった熱がいまどうなったかは分からない。その当時の持っていた問題がデモ隊と機動隊の衝突やウッドストックなどの音楽の場に流れ込んでいったとしたら、確かにそのムーブメントはその後の世界に大きな影響を与えたと思う。でも、それは一過性のもので終わってしまったのも事実だ。

現在が抱える問題を解決し、行動を起こす一つの価値ある答えとしてローテックが云ったように、都市のコンテキストを読み取り、再利用できるものを探し既存にある建物をどう使っていくか、そして、そういった場で今後どういったものが生み出されていくのか。

この考え方は、建物の再利用だけではなくて様々な分野に応用できる考え方だったし、フェスティバル参加前に頭にあった「革命」というテーマへの一つの答えだった。

東京デザイナーズ・ブロック2004
開催期間:2004年10月7日〜11日
会場:東京/青山・表参道・渋谷・恵比寿 他
https://www.tokyodesignersblock.com

Text: Yasuharu Motomiya
Photos: Yasuharu Motomiya

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