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ロバート・クランテン

PEOPLEText: Jonathan Carr

「何かを創り出す」という意味を持つ、ドイツのゲシュタルテン出版社。90年代後半にその活動は始まったため、比較的若い会社とも言えるが、数多くのアーティストがゲシュタルテン出版社を通じて作品集を発表し、最近では、広告やレビューなどが一切取り払われたデザイン雑誌「Ubersee」を発行するなど、常に興味深い展開を繰り広げる注目すべき存在だ。デジタルの時代に、ひときわキラリと輝くゲシュタルテン出版社の出版物。そんな魅力的なカンパニーを支える、代表のロバート・クランテン氏にお話を伺った。


DSOS1: The User’s Manual by Designershock; Die Gestalten Verlag, 2001

まずは、クランテンさんのバックグランドから紹介して下さい。どのようなきっかけで、ゲシュタルテン出版社を設立されたのでしょうか?また当初は、商業デザイナーとして活動していたクランテンさんが、このようなデザイン書を専門に扱う出版社の設立者となった経緯を教えて下さい。スタートした当初のゲシュタルテン出版社は、どのような雰囲気でしたか?

アンドレアス・ペイエル、マーカス・ホルマン・ロゲスと私の3人は、エッセンで商業デザインを専攻する学生でした。80年頃にアンドレアスとマーカスはベルリンに移ったのですが、私は残って、デザイン論とマーケティングの勉強をしていました。それからしばらく経って、1988年のことになりますが、ある人に、フランクフルトで開催された、世界でも1、2の規模を誇る模型デザイン博の企画運営をしてみないか、というお話をいただきました。それは、全てまっさらな白紙の状態から私達の空間を作るという挑戦でした。

会場のど真ん中、5千平方フィートという空間に、私達が決めたテーマに沿った作品を展示する、というものです。例えば「デザイン・フィクション」「ムーブ」「アグリー(醜いもの)」がその時のテーマで、週末には、パーティーイベントも開催したりしました。また何かのためと思い、カタログも用意しておいたのですが、今思えばこのカタログが、3人で制作した最初の出版物です。このイベントを通じて、グラフィックデザイナーの方達だけではなく、映像アーティスト、プログラマー、ゴーゴーダンサー、DJ、ミュージシャンなど、当時、これから注目されるであろうアンダーグランドやテクノシーンで活動する人たちと多く知り合うことができました。


Index-A by Charles Wilkin; Die Gestalten Verlag, 2003

1989年にベルリンの壁が崩壊した後は、パーティーのフライヤーやレコードのジャケットデザインを、よく壁の東西両方に貼っていましたね。消費者展覧会には1992年まで参加し、1994年に「Localizer 1.0」という本を出版しました。これは、その当時に活躍していたデザイナーやレーベル、クラブ、アーティスト、プロジェクトなどを集めた本です。その頃から、アンドレアスとマーカスがデザイン事務所を経営し、私が一人でフェラーグ社という出版会社を運営するというスタイルです。

なんせ当初は貧乏でしたからね。いろいろな雑誌に、うちの会社のオーダーフォームを挟んでもらうようにお願いに伺ったものです。オーダーフォーム千枚で、5万マルクの収入を得ることができました。その証明書を持って、銀行に駆け込み、融資のお願いをしたものです。結局銀行から借りたお金を資金として、5千部の本を作り、それを3ケ月で完売させ、請求書の支払いをし、見本誌を協力者のみなさんや、親しい人たちに配りました。

そのうちに、DTPの技術が一気に向上し、それと同時に、ビジュアル・カルチャーに対する感心と需要が増しました。その時にはもう、私は出版社の運営や利益を上げるということに関しては、知識も充分あったので、1997年にゲシュタルテン出版社を設立しようということになったのです。その時は、4作品のリリースからのスタートでした。


Ubersee 3; Die Gestalten Verlag, 2003

デザイン業界や、またその発展において、インターネットはどのような役割を果たしてきていると思いますか?またこの動きは、ゲシュタルテン出版社の発展に影響を及ぼしましたか?

インターネットは検索ツールとしては便利なものです。でも、コミュニケーションや運営をもっと円滑にするような影響のほうが、重要性は高いと思います。もちろん、インターネットへの需要があったからこそ、ベクターデザインが発展しました。でも、美が重要視されるコミュニケーションに対してのポジティブな効果には、影響力はあると思います。


Buro Destruct2 by Buro Destruct; Die Gestalten Verlag 2003

デザイナーとアーティストの境界線が、ここまで曖昧になってしまった時期は、今までにはなかったような気がします。デジタル分野では、多くのデザイナーが大変な苦労をしながら、利益無しで様々なプロジェクトを行っていますよね。こういった、境があやふやになってきた動きについては、どのようにとらえていますか?またこの動きは、ゲシュタルテン出版に何らかのインパクトを与えたと思いますか?ここでのゲシュタルテン出版社の役割は何でしょうか?アーティストとしてのデザイナーからの質問には、どのような立場で返答しますか?そして、この2つの間には、どのような特徴があると思いますか?

これについては、2つの見方があると思います。

まずは、アートとデザインの境は、その作品の内容ではなく、マーケティングの段階で最も色濃く出るということです。この状況を変えたいと思っているデザイナーは、決して少なくありません。そして彼らはアーティストになり、いざクライアントもいっぱい付くようになると、いきなり富を得て、天狗になってしまうという見方です。

もう一つは、アートはどこまでいってもアート。それと同様に、デザインはデザインだということです。アートは自由で、そして革命的であるべきものです。そしてデザインは、問題を解決してくれる存在です。または、アートは思わぬ展開でアイディアを形にしてくれるもの。そしてデザインは、空間を組み立たせるものと言えるでしょう。

状況や好みに応じて、どっちの見方を取るかはその人の自由です。そしてどちらの見方も、それなりに力を発します。アートがエゴ的なものだとしたら、デザインは相互作用的なものです。アートは謎めいても良い存在ですが、デザインにはそれは要求されません。双方が持つ自由性や分野には常に人を魅了する力がありますが、DIY精神が強く、間違った方向に突き進んでいるようなアーティストやデザイナーには、どうしても疑問が残ります。

グラフィックデザインがこれほどまでの発展を遂げたのは、多くの才能がある人たちに、キュレーターやクライアントといった中間的な人たち無しに、アイディアを膨らませ、それを多くの人に向けて発表するという場所を提供したからです。実際私達も、こういった発表の場を提供できるように努力していますし、常に必要に応じて変化し、その場を拡大しています。

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