「ファジー」展

HAPPENINGText: Ilaria Ventriglia

サイトスペシフィックな作品はギャラリーと何らかの関わりを持つ。また同時にギャラリーとは総合的なものであり、互いの作品は「邪魔し合う」存在でもあるのだ。ヴィンダ・メンズの「ブリーシング・ウォール」と呼ばれている作品は、その存在自体がギャラリーを拡張、収縮させているように見せる効果がある。まるで、壁が呼吸をしているような感じであり、構造との感情的な関係を追求することによって、展覧会の空間が変化し、来場者がその姿をもう一度確認したくなるように導くのだ。


Fuzzy, Installation view

イェッペ・ハインは、幾何学と有機的な形の中間に位置する美学を備えた5つのネオンランプで構成された発光する連続体をギャラリー内に配置したが、この作品は来場者が何処に居るかによってセンサーが反応し、灯りが着いたり消えたりするようになっている。これは、空間の中の照明としても機能しているので、展覧会にとっては必要不可欠な存在なのだ。

イタリアのデボラ・リゴーリオは、物理的および仮想的な空間に関連するテーマに常に関心を持ってきた。ウェブ上で、カスタムハビタット・シリーズという、彼女が単身者の住居を研究している進行中の作業を見ることができる。この作品の意図は、私たちが無関係で疎遠な居住者になることを避けるために使用する空間についての認識を作り出すことだ。ファジーのために、彼女は、居住性、社会問題、社会学と内気な沈思黙考、コンピューターグラフィックスと初期のビデオゲームの融合から生じる美学の有用という題材を扱った5つのショート・コンピューター・アニメーション(各1分)も紹介されている。

リカルド・プレヴィディは、彼のラボで行っているビデオプロジェクト、電子音楽のパフォーマンスに関するワークショップを発表。かすかに有機的で、軽く若干遊動的なフォームがある空間は、自らが持つエネルギーや「感覚」を自分自身に伝えることのできる様々な人々の協力から生まれている。サウンドトラックの作者はBHFデュエットであり、イタリアのデザイン文化の息苦しい主題に社会的側面を導入するという皮肉な試みでもある。


Fuzzy, Installation view

今回のファジー展で提唱されたこれらの新しい感覚の地平の源は、アートへの期待が薄れて来た1970年代のミニマルで空虚なイデオロギーや、日常生活から切り離された観察対象としての芸術作品の追放である。今日のアートは行動を意味するべきであるというメッセージは、様々な分野間の対話を確立し、それが挿入される文脈のより深い認識を深めることにもつながるのだ。

今回紹介した作品は、一目で解るようにカテゴリーとパターン別に整理されたシステムを参考にしているように思われた。アルバイトが生活の重要な部分を占めているアーティストのなかには、生活空間を体験することから、基本的なものを取り除く傾向があり、そのことでそれを再認識している部分もある。しかしその一方で、作品のアイデンティティの欠如という題目への道を、展覧会が開いているのは事実だ。研ぎすまされた均一性もまたデザインでは広まっているし、それはビジュアルアーティストが招いている強調されたデザインのフィロソフィーを、何でも無いようなものにしてしまうような、上辺だけの気持ち良さを探すような、危険のようにも思われる。

いずれにせよ、これらの新しい美的装置は、機能的な目的を何も果たさず、代わりに思考とエネルギーの代わりに受け皿役になるという利点と共に発生したものなのだ。

Fuzzy
会期:2002年5月18日(土)〜7月27日(土)
会場:Galleria Massimo Minini
住所:Via Apollonio 68, 25128 Brescia, Italy
TEL:+39 (0)30 38 3034
galleriaminini@numerica.it
https://www.galleriaminini.it

Text: Ilaria Ventriglia
Translation: Sachiko Kurashina
Photos: Courtesy of Galleria Massimo Minini

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
スネハ・ディビアス
MoMA STORE