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カウボーイビバップ

THINGSText: Chibashi

そして「カウボーイビバップ」のもうひとつの魅力は、人類が地球を飛び出し、太陽系の各地で生活をしている 2071年の世界を、決して背伸びしないリアリティーで描ききった世界観設定だ。華やかな未来ではなく、陳腐化し、退廃した都市の闇の部分を饒舌に描くことで、そこに生きているキャラクター達が、走り、闘い、そしてメシを喰うという全ての行動をリアルにしている。香港を思わせる看板の溢れた街や、ヨーロッパ風の石畳のある通りの風景。ニューヨークの摩天楼を思わせる高層建築の立ち並ぶ街区など、地球を離れても、決して地球を忘れることなんかできないという人類の想いが、ごちゃ混ぜになりながら街並みをつくっているのだ。


© SUNRISE INC.

劇場版では、このごちゃまぜの都市文化をさらにパワーアップさせるべく、モロッコの風景が登場する。モロッコといえばヨーロッパ、アフリカ、中近東の文化が融合した街。メインスタッフによるモロッコ取材が、この劇場版に奥行きを与える舞台を作り出している。

また、川元利浩の描くキャラクターデザインは、異文化の交錯する時代に生きる人々に生命を与え、山根公利のメカニカルデザインが、この時代を疾走するメカを斬新に描いている。そしてTV版での斬新なCGの描写は、これらのメカが存在する世界観を強く印象づけている。

このような圧倒的な世界観とサウンドを背景に、スパイク、ジェット、フェイ、エドという4人の主人公と犬のアインが、「カウボーイ(賞金稼ぎ)」として、ビバップ号という中古宇宙漁船を拠点に、太陽系の各地を転々とししながら多くの犯罪者たちと熾烈な戦いを繰り広げる。

極端すぎるぐらい個性的なメインキャラクターに最高のドラマを演じさせているのが、渡辺信一郎監督と脚本の信本敬子だ。ある時はクールに、ある時はコミカルに、そしてまたある時はド演歌なストーリーをTV版で26話に渡って生み出してきた。

数々の新しい表現を使いながらも、決して表現に負けない強いストーリーがある。そう、「カウボーイビバップ」最大の魅力は、おそらくこの先も決して色あせることのないストーリーの強さなのだ。

そしてTV版を見ていない人は、これを機にTV版の作品を補完してみることもお勧めしたい。ビデオ、LD、DVDで補完可能だ。また、サウンドトラックは、TV版のリジナルサウンドトラックが3作、ミニアルバム1作、リミックスアルバム1作に加え、劇場版として先行発売されたシングル「Ask DNA」と8月29日にはアルバムも発売された。どれも損の無い買い物だ。

こんなに、僕たちに夢を見せてくれる作品と、リアルタイムで接することができることに感謝したい。

COWBOY BEBOP 天国の扉
2001年/35ミリ/カラー/ビスタサイズ/ドルビーデジタル/1時間54分
原作:矢立肇
監督:渡辺信一郎
脚本:信本敬子
キャラクターデザイン・作画監督:川元利浩
メカニカルデザイン:山根公利
セットデザイン:竹内志保
メカニック作画監督:後藤雅巳
美術監督:森川篤
色彩設計:中山しほ子
音楽:菅野よう子
制作:サンライズ、ボンズ、バンダイビジュアル
配給 ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
https://www.cowboybebop.com

Text: Chibashi
Photos: Courtesy of SUNRISE INC.

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