アルス・エレクトロニカ 2000

HAPPENINGText: Tomohiro Okada

昨年の500から250に応募数が半減したという。ドットコム・ビジネスの活況で、アーティストがそっちの方に行ってしまい、作品制作に魅力を感じなくなったのではと、自身もドットコム・ビジネスの真っ最中にいる伊藤穣一もおられる審査委員陣は理由の一つとして考えているが、それも一理あることだろう。何しろ今回の取材で立ち寄ったロンドンのメディア・アートセンターであるラックス・センターで、教育プロジェクト代表のデービッド・シンデンが言うには『ロンドンでは、みんなインタラクティブやインターフェイス・デザインのビジネスに行ってしまって純粋なネットアーティストがここ1・2年で激減している』そうだから、それもうなずけるのだか、それだけが理由だろうか?

昨年、ゴールデン・ニカ(大賞)はリナックスのライナス・トルバルドが獲得、ディスティンクション(副大賞)にはインターネット上でのレコーディング・コラボレーション・ソフトの「レスロケット」に授与された。これでは、いくら応募しても、審査員の匙加減で応募外のものや他の部門のものまでにあげてしまうので、正当に認められないのではという疑念が起こりはしないのだろうか。その疑念は今年のゴールデン・ニカが作家のニール・ステファンソンに与えられ、ディスティンクションにアルス・エレクトロニカ・センターの1階に常設展示されている「テレゾーン」が選ばれるという状態でより私としては深まってしまった。来年、その応募数が更に半減しないことを祈りたい。

前のグッドニュースの続きになるが、とにかくテクノロジーの仕掛けに目新しさを感じるのではない、作品そのもので万人が喜怒哀楽を感じさせてくれるものが、遂にあらわれるようになったことを大いに誇示してくれたインタラクティブ部門の賞であった。

『インタラクティブ・アートは美術館に押し込まれるものではない、社会とともにあるものなのだよ。だから、美術館に入らないものを言う観点でも選んでみたのだが、結局賞を与えたのはそのようなものたちなのだが、えこひいきしたわけで無い。インタラクティブ・アートという現実がそうなのだよ』と審査委員の一人であるシャシム・サウター博士(ART+COM社長)が語るように、社会を動かす力を持ったアート・フォームとしてのメディア・アートの可能性を明確に見せてくれるものだったのである。

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