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デヴィッド・シルヴィアン

PEOPLEText: Anthony Augendre

自分の感情を反映させるような詩を書くのは簡単な事なのでしょうか?

詩を書くのは難しいことではありません。落ち着いて、ただ書きたい事を書くのは簡単です。難しいのは、生み出す側と聴く側が何らかの形で共鳴し合えるような音楽作品を書く事です。それは難しい部分です。しかし、音楽と作品はタイミングが合った時には容易に相対的になる様です。詩を書く段階というのは、その過程が多分最も楽しく、全く自然に生まれて来る傾向があります。

あなたの曲は時代を超越した音楽だと思いますか? 最近のトレンドや音楽産業のうわべだけの面には関心がなく、5年前もおそらく10年後も変わらない様に思うのですが。

難しいですね。実際、このアルバムを5年前、10年前に作る事ができたかと言われれば、答えはノーです。理由は題材となる物の違いです。経験によって題材も変わってきます。私は、個々が何らかの方法でそれぞれの人生に取り入れる事ができる様な音楽を作ろうとしています。言い換えると、このアルバムは自伝的なものであるけれども、皆にこのアルバムを聴いてこの自伝を見て欲しいとは思っていないのです。

ポイントは、個々がそれぞれの人生の中にこの作品を取り入れる事のできる範囲に作品を公表しようとしているという事です。その点では作品はそのもの自体が生命を持ち、そういった意味で毎回新しい生命を誰かに与えるのです。その事が時代を超越させているのでしょう。もし人々が時を超えて何度もその作品に触れ、作品に新しい生命を吹き込んでくれるとしたならば。私達はインスパイアされたやり方でアプローチをしなければならないのです。受け身の行動ではありません。私の作品を時代を超越したものにするパワーを持っているのです。

あなたの音楽的な歩みは、音楽的な出会いに満ちていると思います。最も重要だった出会いとは何ですか?

どの出会いも確固とした性質を持っています。幾つかの出会いは時代と共に成長し熟成します。1979年に坂本龍一に出会った時は、20年後にも一緒に仕事をしているとは想像もできませんでした。私達は時代を超え、一貫して共に仕事をしています。未来へ繋がるパートナーシップを感じます。私達のコラボレーションは時を超えて熟成し、進化し続けるのです。

ホルガー・シューカイという人物について教えて下さい。

ホルガーは親しい友人です。彼と仕事をする事により、多くの事を得ています。作品を通して即興の概念に触れました。ホルガーと共に働いていた時に、その領域が私にとって意味深いものになりました。その理由は、それが彼が何年も続けて来た領域であり、彼自身のプロジェクトであったからです。彼の作詞やレコーディングに対する即興方法というものが私にとってとても魅力的なものになり、ただ一緒にやって来たプロジェクトにではなく、結果として生まれた「レイン・トゥリー・クロウ」というプロジェクトに影響を与えたのです。今もそれは私の作品に、影響を与えています。それがホルガーと仕事をする事によって私が得た主な経験です。

プラスチックアート(造形芸術)に関与されていますよね。ラッセル・ミルズと共に展示会を開いていたのを覚えています。彼は、彼にとっての最初の音楽的な経験を、あなたがコラボレートした「Time Recording」で実感した事と思います。この事がミュージシャンとプラスチシティ(造形芸術家)に、サウンドとピクチャーを結びつける機会を与える自然なプロセスであると思いますか?

ええ、クロスオーバーする為には極めて自然な事だと思います。一種の挑戦です。ラッセルはミュージシャンとして仕事をするという挑戦を発見したと確信しています。彼は本当はミュージシャンでは無いですが、自分自身の為というコンセプトで制作しました。私自身のビジュアルアートに対する考えと同じです。突然、予定してなかった展示会をやるように依頼されたとします。インスタレーションを創造する機会を与えられたら、後戻りはできないでしょう。すごく良い機会だからです。私にとっては全く未知の領域なのです。のんびりと仕事することができるという点で、音楽をやるのは本当に好きです。

やり残したアイディア、プロジェクトが本当に沢山あります。ある意味では、私が音楽でやりたいと思っている全ての事を完成させるには、十分な時間が無いのです。誰かに、明日来て展示をやってくれと言われたら、私は断らないでしょう。私にとってそれは素晴らしい挑戦なのです。ビジュアルアートをやるのは本当に楽しいです。私自身のボキャブラリーを創造し発展させる為の挑戦なのです。ラッセルも音楽で私と同じ事をやっていると思います。

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