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インテンショナリーズ

PEOPLEText: Chibashi


インテンショナリーズ最前線、ギャラリーロケット

よく建築誌などでは、完成して人がまだ住んでいない状態を写真にとって、作品として見せていたりしますよね。コーポラティブ住宅とかの場合ではそれは逆で、どう住み手によって生活されてきたがが重要になってきますよね。そういうのをもうちょっと当たり前のこととして係わっていくということですか?

遠藤:時間は一つじゃないと思うんですよね。完成写真が建築で後はそれが朽ちていくっていうのではなくて、例えばこの遠藤邸も増改築なわけです。前も決して悪かったわけではない。それをより違う広がりと良さを出していくかという。
そこで、新たな時間が加わるじゃないですか、だからいろんな時間があることで、非常に良い意味で『普通』になっていく。だから街で見ていいなあと思う場所だったりする所は、結構新品でもなかったり、新品の部分と元々あるコンテクストが解け合っている所が、大体気持ちのいい所だったりする。コンテクストの広がりがあるというか、一つのコンセプトで「これやりました」みたいな閉じたものにならないようにする事に気をつけていますね。

では今回も、前のコンテクストをかなり汲んだ上でやられているんですね。

鄭:そうですね、何でもコンテクストってありますから。しかし仮にコンテクストを分断するっていう作法があったとしても、分断したっていう経過っていうものが出てくると思いますけどね。

“レーベル”というとらえ方について教えて下さい。

鄭:平たくいうとブラック・ボックス的にあればいいなあってカンジですね。『レーベル買い』ってあるじゃないですか?音楽の楽しみ方では….。「個々のアーティストは知らなくても、レーベルとしてあそこはいいよネ。」みたいな。そういうニュアンスでとっていただくといいかなあ。

3人の建築家によるユニットというより、レーベルだと。

鄭:3人っていうことではないんですよ。たまたま会社をやるにあたって、発起人が3人だったとういうことで。他の方とはコラボレーションはしていますし。グラフィック・デザイナーの方とか、今回の遠藤邸では石屋さんとのコラボレーションですよね。

遠藤:植栽やられている方とコラボレーションしてやっています。やっぱりベストの人が世の中いますから、それらをどう編集できるのかっていうところが、建築的なんじゃないかなと思います。

鄭:最終出力としてレーベルとしてあればいいかなってことですね。それを売りにしているわけではないんで、取り組み方としてITLっていう枠組みで見てくれればいいかなと。


Simplicity/Complexity © 1995 Intentionalies with N.Fukutsu, K.Nishimura

都市空間への係わりについてお伺いしたいんですが、スキーヤーをモチーフにした作品で、雪山の上にスキーヤーを配置することでそこはスキー場としてのイメージを持つというのがありましたよね。ITLにとって建築とはそのスキーヤーのようなもので、建築は地形の一部となるという…。その考え方がとても面白いと思うんです。つまりそれはマクロ的にみると、都市に建築が係わっていく『係わり方の概念』ということになるかと思いますが、その辺の都市への係わりや視点を伺えたらいいなと思います。

遠藤:飛び地というか、全体を一気に変えようという話ではなくて、例えば点であってもそれが戦略的な点であったり、意識された点みたいなものを都市に入れることによって、それが状況に対してにじんでいったり、それが周りに変化を及ぼしていきますよね。そういうことひとつひとつに対して丁寧にやっていきたいなと思っています。抜本的な(都市の)改築というのは難しいですよね。ただそれがすごく起爆的な要素に化けるという様なものっていうのが結構経済の中で潜んでいて、そういうところをきちっと消化するような形がとれれば一番良いなと思います。

それは例えばある建築を建てる時に、起爆になるような仕掛けとして、意識的なものというのはあるのですか?

ITL:敷地によるかな。

遠藤:そうですね、あんまり敷地っていうのも変な言葉だけでとらえてほしくないけど、別に都市に対してっていう大げさな話じゃなくて、状況があってその状況を的確に判断してどうするかっていう、当たり前の話になってしまうんですよ。

大堀:都市ってものを振り上げた段階で行き場がなくなってしまうんじゃないかって思うんですよ。この前、学会のワークショップのアドバイザーをやったんですが、都市がテーマだったんですよ。みんな振り上げた拳の行き先がなくなってて、そのままつぶれていくみたいな…。

鄭:(その学会では)みなさんが言ってる都市っていうのは『都会』ということだと僕は思ったんですけど。だから「都市をどう思いますか」って言われても僕らが作り上げるものでもないんで、それに対しての係わり方はコンテクストに対して楔を打つこと、つまり先程の『スキーヤーが現れて地形の意味が変わる』という事と同じものとして考えているんです。
そしてこの場合のコンテクストは、歴史だったり地理的状況、経済の流れや、はたまたオーナーの趣味だったりする『関係性』として捉えています。

僕にとっては、そういう事こそ一番都市にかかわるきっかけなんじゃないかなと思うんですよ。敷地の中だけで完結してしまって、周囲に対してただコンテクストを消失して目立ってしまうという建築が、今まで日本には多かったと思うので、建築家が点であることを意識して、そこからどんどん『にじみだしていく』ようなもの作っていくことが、都市にかかわることとしても大事だと思いますね。

ITL:そういうことですよね。

遠藤:それって生き方だと思いますね。

ITL:そうそう。(笑)

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