WE DON’T KNOW GOD: CHIM↑POM 2005-2019

THINGSText: Hikaru Nakasuji


“The Grounds”, 2017 © Chim↑Pom Courtesy of the artist and ANOMALY

アメリカとメキシコの国境問題が激化している現在、この作品の意義は格段に上がっているのではないだろうか。2017年に制作されたものだが、いつその真価が発揮されるかは誰にも予期できなかったことだ。20年ほど前に私自身もアメリカとメキシコを徒歩で行き来したことがあるが、当時の記憶が蘇る。陸続きで国境を越えるという行為は、島国出身者の私にとって初めての奇妙な体験として刻み込まれている。その一線を超える意味の大きさは計り知れないが、当事者たちの気持ちを代弁しているようだ。

第2章:生の尊厳ー喪失と希望


“PAVILION”, 2013, 折り鶴, ガラス, ミクストメディア © Chim↑Pom Courtesy of the artist and ANOMALY

一方、日本国内を舞台とした作品も根強く多い。人々の祈りが不燃ゴミと化している事実を解き、再構築する作業を見ると、経済物質主義の残骸を見ている気持ちにさせられる。


“Don’t Follow the Wind”, 福島の立入禁止区域内で展覧会の設置をする © Chim↑Pom Courtesy of the artist and ANOMALY

人的災害も表現の主題として取り込み、現実を映すアートに変えていく。チン↑ポムのその力が最も顕著に発揮されたのは、記憶に新しい福島第一原発の事故とともにつくられた「Don’t Follow the Wind」ではないだろうか。避難区域が解除されるまで見ることのできない展覧会という斬新な試みは、人々の安全と地域復興を条件にオープンされる展覧会でもある。文化の発展は、何かと比例または時にトレードオフとして成されると感じているが、まさにその感覚にぴたりと合う作品だ。

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