「時間を移動する9つの旅」展

HAPPENINGText: Aya Ono

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Reflection of Space and Time, Chiharu Shiota, 2018

2015年にヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展に日本館代表として選出され、2016年にはシドニー・ビエンナーレに参加し、海外で活躍を広げるベルリン在住のアーティスト、塩田千春。鉄で組んだ正方形のボックスにアルカンターラ®のロープを蜘蛛の巣のようにボックス全体に何重にも巻きつけた「空間と時間の反射」と題した巨大なインスタレーションは、ボックスの内側の片面を鏡張りにし、ボックスの中にある1着の白いドレスが2着あるかのように見せている。この作品に対して塩田千春は『鏡に映った偽物のドレスを本物だと思って見てしまう人間の錯覚現象。鏡に映るモノが偽物だと気付く瞬間を愉しんでもらいたい。』と語る。
様々な素材でライン(線)を表す作風が特徴的な彼女だが、今回の作品でも『その時の線の量だったり使用する糸の編み方や引き方だったりで表情が変わっていくので、作っていていつが終わりか見えない。どこまでやって完成になるか見極めながらいつも作っている。』と語っている。

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Beyond the Nuclear Garden, Zeitguised, 2018

ベルリンを拠点にコンセプト・デザインとビジュアルアートを展開するスタジオ、ツァイトガイスドによる「原子力の庭の向こうで」は、アルゴリズムを創作のツールに、アルカンターラ社の多様な色の素材を組み合わせたデジタルの歪像の島を創り上げた。隣の部屋にも同じタイトルの作品が並ぶ。ベルリンを拠点に活動するイタリア人作曲家のカテリーナ・バルビエリとツァイトガイスドがコラボレーションし、それぞれ作製された。二つの部屋では不安定な電子音が鳴り響いている。カテリーナ・バルビエリはイタリア・テルニにあるアルカンターラ社の製作工場に実際に足を運び、様々な機械の音を録音し、それらを基にサウンドトラックを作成した。人間と機械、自然と人工、聴取と音の関係性を問う作品だ。

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The Temple of Reverence for Knowledge Beyond Human Comprehension, Li Shurui, 2018

北京を中心に空間、光、絵画、インスタレーションなど幅広い作品を制作し活動するアーティスト、リ・シュリュィの「人間の理解を超えた知識への敬意の神殿」。ユニークな構造に作られ作品全体に光学モチーフがプリントされたアルカンターラ®が使用されている神殿。部屋の天井にある照明の当たり方を計算した上で、複雑な構造の屋根が設計されている。作品としての「神殿」に過ぎないのだが、不思議とこの部屋に入ると厳かな空気感に包まれる。

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The Work for Alcantara (Blue Chair), Krijn de Koning, 2018

最後の作品のある部屋に入ると、部屋の中にまた部屋が存在している。空間のインパクトを問いかけるようなサイトスペシフィックなクリエーションで知られるオランダのアーティスト、クライン・デ・コーニングによるインスタレーション「アルカンターラのための作品(青い椅子)」。鮮やかな青一色のアルカンターラ®で覆われた空間は9つの旅の終着点。扉や窓、通路などが実空間に重ね合わさり、辿ってきた展示会場の建築を表している。青い部屋の中をゆっくりと歩いて9つの異空間旅行を終えた。

16世紀に建てられた格式ある王宮のクラシカルな空間とグローバルに活躍する10組のアーティストによる現代アートのコントラストが不可思議な空間を演出していた「時間を移動する9つの旅」。アルカンターラ®という一つの素材から全く異なる表現で作品を展開した10組のアーティストたちの共通点があるとすれば、それは作品を表現する想いではないだろうか。アーティストそれぞれの真っ直ぐでシンプルな作品に対する想いが一つひとつにしっかりと現れている。
アルカンターラ社会長兼CEOのアンドレア・ボラーニョ氏は『アルカンターラ®の可能性が無限であるということを集まったアーティスト達が示してくれた。この展覧会を通して観覧してくださった方々の創造性を豊かにしたい、アートやデザインに興味を持つきっかけとなってくれれば嬉しい。』と語っている。

「時間を移動する9つの旅」展 (原題:Nine Journeys Through Time)
会期:2018年4月5日(木)〜 5月13日(日)
時間:9:30~19:30(月曜日14:30から、木・土曜日22:30まで)
会場:ミラノ王宮
住所:Piazza del Duomo, 12, 20122 Milano
TEL:+39 02 8846 5230
入場無料
https://www.alcantara.com

Text: Aya Ono

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