世界報道写真展 2017

HAPPENINGText: Victor Moreno

2017年度世界報道写真展の大賞に、トルコのフォトグラファーブルハン・オズビリジによる「An Assassination in Turkey(あるトルコでの暗殺)」が選ばれた。トルコ人警察官メブリュト・メルト・アルトゥンタシュが、アンドレイ・カルロフ駐トルコ・ロシア大使を暗殺した瞬間を写した作品だ。2016年12月19日、トルコのアンカラにあるアートギャラリーで、カルロフ大使がスピーチをしている最中に起きた出来事の一連の記録である。この作品は、現実に起きた事件がインターネットやマスメディアを通すことで、現代社会の中でどのようにリアリティ番組に変容していくかについてのヒントを与えてくれる。

Mevlut Mert Altintas shouts after shooting Andrei Karlov, right, the Russian ambassador to Turkey, at an art gallery in Ankara, Turkey, Monday, Dec. 19, 2016. At first, AP photographer Burhan Ozbilici thought it was a theatrical stunt when a man in a dark suit and tie pulled out a gun during the photography exhibition. The man then opened fire, killing Karlov. (AP Photo/Burhan Ozbilici)
World Press Photo of the Year – “An Assassination in Turkey” © Burhan Ozbilici, The Associated Press

その日、オズビリジがアートギャラリーについた時、既に大使のスピーチは始まっていた。一連の写真はカルロフ大使がマイクの前で話をしているところから始まっており、その後ろ側、ピンボケした警護隊の中に、アルトゥンタシュが紛れているのを見つけることができる。オズビリジはアルトゥンタシュがカルロフ大使を殺害した際、パニックになるのではなくむしろ落ち着くべきだと考え、ただひたすらに写真を撮り続けた。もちろん彼は次の瞬間にも殺される可能性があることに気が付いていたが、一方で、彼がその瞬間撮っている写真が永遠に残るものであるということも理解していたのだ。幸いアルトゥンタシュは、その部屋にいるその他の人を誰も殺さなかったのだが。
作品の中で、アルトゥンタシュが左手の人差し指を高く上げ、右手にまだ煙の出ている銃を構えている1枚がある。彼はその時「神をたたえよ、アレッポを忘れるな、シリアを忘れるな」と叫んでいた。この写真は、暗い局面の多かった2016年の世界的な政治情勢を代弁しているようにも見えた。

ワールド・プレス・フォト(世界報道写真財団)は1955年にアムステルダムで発足され、翌年から開催している写真展の会場として、15世紀に建てられたアムステルダム新教会を利用してきた。街の中心部であるダム公園内に位置するネオゴシック建築の美しい内装は、穏やかで居心地の良い雰囲気に満ちており、その中にジャーナリストたちが撮影したすべての作品が飾られた。また、オンライン版の新聞のメインを担うコンテンツである映像によるルポルタージュ作品も、スチル写真とともに展示されていた。

全体から選出された大賞のほかに、コンテンポラリー・イシュー(現代社会問題)、デイリー・ライフ(日常生活)、ジェネラル・ニュース(一般ニュース)、ロング・ターム・プロジェクト(長期プロジェクト)、ネイチャー(自然)、ピープル(人々)、スポーツ、スポット・ニュース(速報)の8カテゴリーから、それぞれ最優秀作品が選出されている。

near Canon Ball, North Dakota on Monday, December 5, 2016.  Amber Bracken
Contemporary Issues, First Prize, Stories – “Standing Rock” © Amber Bracken

今回の展覧会はとても充実した内容で、2016年に起きたほとんどすべての重要なイベントが記録されていた。

コンテンポラリー・イシュー(現代問題)の最優秀賞作品には、カナダの写真家・アンバー・ブラッケンによる「Standing Rock(スタンディング・ロック)」が選ばれた。ダコタ・アクセス・パイプラインの抗議デモである「#NoDAPL」をテーマにした作品だ。この抗議デモは、パイプラインの建設ルートが、アメリカ先住民族たちの居留地であるスタンディング・ロック近郊に位置するオーウ湖の下にも走っていたことに起因する。その計画によって、先住民族の神聖な土地や遺産が破壊され、さらにはコミュニティへの水の供給さえも脅かされたからだ。写真はその抗議運動の中で起きた出来事を記録しており、警官がゴムボールや胡椒スプレーを使用し、抗議する人々を理由なく攻撃している姿を写し出している。

'They Are Slaughtering Us Like Animals'
General News, First Prize, Stories – “They Are Slaughtering Us Like Animals” © Daniel Berehulak, for The New York Times

ジェネラル・ニュース(一般ニュース)カテゴリーの中で特に興味深かった作品は、最優秀賞を受賞した「They Are Slaughtering Us Like Animals(彼らはわたしたちを、まるで動物のように屠る)」だ。オーストラリアの写真家・ダニエル・ベレヒューラックによる、フィリピン・マニラを舞台とした作品で、警察による犯行現場検査の様子が記録されている。映画のワンシーンを思わせるような1枚は、大雨の中、警察が路地で起きた殺人事件の被害者であるロメオ・ジョエル・トレス・フォンタニラ(当時37歳)の死体を調べている様子を写している。別の写真では、ドラッグの取引に関わる私怨によって、オートバイに乗っていた二人のギャングが殺された様子が写し出されている。フィリピン国家警察によると、昨年の夏から3000件以上の未解決殺人事件が発生しているとのことだ。

2016年に起きた歴史的な出来事のひとつとして、キューバ革命の担い手であり、大統領としても活躍した、フィデル・カストロの死が挙げられるだろう。チリの写真家、トマス・ムニタによる作品「Cuba on the Edge of Change(変化の淵に佇むキューバ)」は、政治的/社会的に新たな局面へ向かい始めるキューバ国内に走った、カストロ前大統領への哀悼を捉えている。

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