「まろやかな狂気」夢眠ねむ作品集

THINGSText: Ayumi Yakura

また、彼女が2012年、美術専門誌「美術手帖」を発行する美術出版社のBTギャラリーにて、夢眠ねむのCDを購入すると特典として作品が付いてくる「アイドルの新曲発表イベント」という形態で『曖昧な混乱』を引き起こした初個展「コズミックメロンソーダマジックラブ展」の分析や、現代美術の文脈で彼女がどの位置に存在するかという考察は、美術家の泰平による評論「夢眠ねむ論 1.0」にまとめられている。

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「君の声を聞く」2013年,「10年代の無条件幸福」出展作品 所蔵:TOY’S FACTORY

巻末には、『兼ねてから、「美術を支えてきたパトロン、コレクターの存在」と「アイドルを支えてきたヲタの存在」の類似点とその変換を作品にしたいと考えてきました。』『文化は、その中心に立っている人より盛り上げている人が大きくするのです。』など、夢眠ねむがブログへ綴った同展の開催主旨も収録されている。

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「夢眠時代」2012年, 冊子

本書では、彼女の『前例になりたい』『希望になりたい』『役に立ちたい』『救いたい』『幸せにしたい』といった発言も印象的だ。一般的なアイドルの在り方を『自分の主張をする媒体じゃない』と定義しながらも、ファンのみならず複雑な問題を抱える現代人に対して、「夢眠ねむ」がどのような存在になるべきかを自ら考え抜いてきた事が読み取れる。

「夢眠時代」特別対談では、彼女が現役アイドルでありながら『誰に嫌われてもいいぐらいの覚悟』で美術家として生きていく決心をした理由や、『初代 夢眠ねむ』を襲名した意図が示されている他、アイドルの未来の為に教育施設の必要性などを語った特別対談「夢眠ねむ × 福島麻衣子」も必見だ。

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「まろやかな狂気」夢眠ねむ作品集
発売日:2016年11月10日
価格:1,500円(税別)
仕様:B6サイズ、160ページ
出版社:MARQUEE INC.

Text: Ayumi Yakura

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