‏「キングス・オブ・サマー」

THINGSText: Takashi Ichikawa

9月19日土曜日、東京都中野駅から徒歩5分ほどにあるなかの芸能小劇場にて行われたのは、日本では未公開の映画に日本語字幕を付けて上映するというイベント。このイベントを主催したのは、グッチーズ・フリースクールという団体で、その団体については後ほど触れることにする。

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映画「キングス・オブ・サマー」パンフレット表紙

‏上映されたのは、2013年のサンダンス映画祭でも評価の高かった、ジョーダン・フォークト=ロバーツ監督の「キングス・オブ・サマー」。親とのコミュニケーションが煩わしくも感じる思春期、反抗期真っ只中の少年達が、自分たちの自立と大人への階段を上るため、森に1軒の秘密基地を造ろうと一念発起する。彼らが秘密基地を完成させ、自然の中で生活していくうちに、自分たちの友情とほのかな未熟さを通じ成長していく青春コメディ映画。

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映画「キングス・オブ・サマー」より

‏登場人物同士の友情、愛情、恋愛、そして、早く大人になりたいという若かりし頃の純粋な気持ち、一つ一つの感情が観ている側の青春との共通事項を持ちやすい事柄ばかりで、感情がシンクロしてどんどん入り込むことができる。また、作品の中で交わされる登場人物の掛け合いや様々な笑いの要素が、とても日本人の笑いのツボにあっていて、上映中もところどころで観客から笑い声が上がっていた。コメディ映画とはいえどお笑い一辺倒に走らず、少年達が森を散策するシーンは8ビット系ファミコンサウンドが流れていたり、感情を表現する演出がとても豊かで観客もぐいぐいと引き込まれていく。

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映画「キングス・オブ・サマー」より

主人公ジョーを演じるニック・ロビンソンは今年公開された「ジュラシック・ワールド」にも出演している注目次世代スターだ。監督であるジョーダンはこの映画が初の長編映画デビューの作品であり、今後は、日本発のテレビゲーム「メタルギアソリッド」の実写映画版の監督をすると噂されている若手監督である。彼が本当にテレビゲーム好きなんだということは本人のホームページの雰囲気を観ても、この映画を通じても感じ取ることができる。

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映画「キングス・オブ・サマー」より

‏こういった傑作映画が日本では上映されていないことに驚きを感じつつも、同時に、まだまだこういった日本未上映の名作映画があると思わせてくれる、イベントの主催者には、感謝の意とこれから取り上げる作品にも期待せずにはいられない。

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