ビ・ロンギング展

HAPPENINGText: Fuyumi Saito

フォウラディ・プロジェクツ・ギャラリーは、サンフランシスコ、ダウンタウンの南西、カストロ地区の入り口にある。気になるレストランやカラフルなショップが目に入り始め、広いマーケットストリート沿いでもあることから日光がウィンドウを通して気持ちよく差し込む、素敵な空間だ。「アートは人が生きる上で欠かせないエッセンス。物事を見る目を養い、世界と人々とをつなぐ」として、ギャラリーの創設者ホーリー・ファウラディとホープ・ブライソンは絵画から彫刻、写真、インスタレーションまで、コンテンポラリー・ファイン・アートを丁寧にキュレーションし、そのアートの役割を紹介している。

1darija1.png
Darija Jelincic  “Escapes 1”, edition of 10

この夏の展示は3人の女性写真家による作品展。それぞれ異なるテイストを持ちながら、どれもが人間の孤立、抑制や何かへの思慕にまつわる世界を模索する。人はもともと個であるのか、物理的に離れているだけなのか、それでいて子孫繁栄のために生物的なつながりを欲しているのか、人間が存在する謎を考えさせる作品が並ぶ。

1darija4.png
Darija Jelincic  “Escapes 4”, edition of 10

クロアチア、ザグレブ出身のダリヤ・ジェリンシックによる「エスケープ」プロジェクトは、人々が日常生活の中で求める静寂の瞬間を探すところからスタートした。プラハでのストレスに満ちた生活から、ギリシャののレスボス島へ、思い立って旅に出た。青い空、広い海。落ち着き払って真っ直ぐ伸びる地平線と彼女の間には何も隔てるものは無く、彼女は巨大な空間の中にいる自分を感じた。都会の真ん中で複雑に入り組んだ現実世界にもがく私たち。成功するための闘いが自然から人々を引き離し、ついには自分自身からも引き離されて行く。
ギリシャ、チェコ、オランダ、アメリカ、セルビア、ドイツ、スペイン、そしてクロアチア。島を出た後もダリヤは旅を続け、静けさの瞬間を探し求めた。
写真は慎重に構成される。被写体はいつも真ん中にあり、周りとの空間感や関係性を切り取るのだ。
エスケープとは、静寂の中で人間的な体験や心境を探し求める行為であるとともに、物理的に起こりうるものでもある。遊園地の空高く、水色の空を背景に遠く舞っていく乗り物の写真を見つめていると、ふとその世界に逃避して行きそうになる。
作品は、自分自身につながっていること=私たちは空間につながっていることを気づかせる。
「エスケープ」は、私たちが失って来た何かなのかもしれない。人間の起源、自然とのつながり、人々とのつながり。だから、「エスケープ」は皮肉にも我が家への帰り道を探索しているのかもしれない。
(プレスリリース/シルヴィア・ポトッキの記事より引用)

2Nina_Paris%20Diptych%201_01.png
Nina Dietzel  “Paris Diptych 1”, edition of 7

ニナ・ディエッツェルの「パリ・シリーズ」は、二枚の写真が1作品として並べられる。1枚は男性的な形やイメージ、もう一枚は女性的な形やイメージだ。

2Nina_Paris%20Diptych%203_01.png
Nina Dietzel  “Paris Diptyches 3”, edition of 7

青緑の乗り物のシートと、青壁を背景にいかにも暑そうに生い茂る植物の鉢。黄色いカーテンの下に伸びるマネキンの白い脚と横たわる腕。白いコインランドリーマシンと黄色い乾燥機。並ぶ2枚の写真の間には、各被写体や風景の色や素材に何かしらの共通点があり、それが不思議な緊張感を生み出している。見る者はそれをヒントに彼女の切り取った世界に入り込み、二つのイメージをつなげていくことができる。片一方だけでは意味をなさない、ここではまた、人間の生活空間や世界の空間が、物理的には離れているけどつながっている、そんなメッセージを感じることができる。

3Anne%20ButtermilkCprint19x16.png
Anne Veraldi  “Buttermilk”, edition of 5

アン・ヴェラディは彼女の「アウトサイド・イン」のシリーズから選出し展示する。
「写真は過去からのタイムカプセル」と作家は言う。
宇宙のような異次元の雰囲気を演出する空間を背景に、作家自身が過去に持っていたおもちゃや、新たに作ったオブジェがガラスジャーの中に閉じ込められている。

3Anne%20Owl22012cprint19x16%E2%80%9D.png
Anne Veraldi  “Who?”, edition of 5

幼少時代のおもちゃは、生まれ育ったモンタナの記憶を、新たに作ったオブジェは昔夢見た冒険や、ぼんやりと白昼夢を見ていた頃の記憶を呼び起こす。有形化された記憶はぽつんと、空間に取り残されているようで切なさを感じる。

誰もが抱く想いや記憶は、共有され共感され、繋がることができるけれど、形になってしまうと物理的には孤立してしまう。梯子や船を使ってガラスのジャーを飛び出そうとしている記憶のかけらに、ストーリーの始まりを感じる展示だった。

“Be/Longing” Featuring new work by Nina Dietzel, Darija Jelincic and Anne Veraldi 
会期:2014年7月8日(火)〜8月30日(土)
時間:12:00〜18:00(日・月曜日定休)
入場:無料
会場:Fouladi Projects
住所:803 Market Street @ Guerrero, San Francisco, CA 94103 
TEL:415 621 2535
http://www.fouladiprojects.com

Text: Fuyumi Saito

【ボランティア/プロボノ募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
コントワー・デ・コトニエ公式通販サイト | 2016 SUMMER SALE
MoMA STORE