日中現代芸術交流展「個園」

HAPPENINGText: Hiromi Nomoto

日中国交正常化40周年を記念した展示「個園」(こえん)が中国杭州市で行われた。日本では中国との関係を記念したイベントやプロジェクトなどが熱心に企画されている。これを中国は冷静に見ているというのが現状で、多くの場合は日本側が企画提案し、それに中国側が参加している。しかし今回の展示は中国杭州市のアートセンターの呼びかけで行われた。

杭州市は上海の隣にあり、世界遺産に登録された美しい湖のある観光都市であり、緑の溢れる景観は素晴らしい。歴史も古く、宋の時代の遺跡も出土している。またこの都市は以前、列強国の支配する租界であった。街のいたるところに租界当時建設された洋館が街の一部として残っている。その後の中華民国政府が台頭した時代の建築も多い。芸術環境としては、中国で重要な三校の美術大学の内の1つ中国美術学院があり、多くのアーティストを輩出している。

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「個園」の舞台となったのは、レンクー・アート・センター(人可芸術中心)だ。西湖まで続く緑豊かな中山一路沿いの、人々が普通に生活し仕事する場所にある。600m2のスペースがあり、道路沿いのショーウィンドウにも作品が展示され、展示準備中にも道を行く人々が不思議そうに、それらを眺めていた。

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「ぼんやりとした読本」王強, 2012. 600x700mm, 鉄, 蝋

今回の展示タイトル「個園」の意味は、キュレーターである梁慶の話によると、『国を大きな庭に喩える。ある庭に入ってみれば、その国のことが分かるのかもしれない。人々も個々の庭を持っている。今回の展示で私たちはアーティストの持っている庭を巡る』というもの。

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出展したアーティストは中国から、管懐賓、王強、高世強、鄭端祥、王凱、張浩。日本からは、草間彌生、荒木経惟、坂口寛敏、岡部昌生、端聡、所幸則だ。

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オープニングはギャラリーで行われるアートエキシビションとしては異例の開幕セレモニーが行われた。数百人の観衆が詰めかけ、展示会場は歩く事も困難なほどだった。両国アーティストやキュレーターのスピーチ、上海の日本総領事代理の祝辞と続いた。この騒ぎに興味を持った通りすがりの人も足を止めて話に耳を傾けていた。

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「逆流」管懐賓, 2011. 映像, 8分30秒

管懐賓の映像作品「逆流」は、潮の満ち引きにより逆流する現象を写した作品だ。これを一般社会に置き換えている。政治・経済・文化など、私たちは絶えず前進している。前進しようという欲求は、故郷への帰り道でさえも忘れさせてしまうほどだ。この作品は忘れてしまった帰り道を教えるヒントとしてつくられた。

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「雑談」鄭端祥, 2011. 映像, 相互インスタレーション

鄭端祥の映像作品はポップな音楽と、リズムよくタマネギなどの野菜を刻み、餃子の餡を皮に包んで、魚をさばく。最終的には大量の食材を炒め、固める。これがインスタレーション作品の中心に置かれたまるで湖に浮かぶ島のように置かれる。この食材で出来た物体の拓本をとったものも展示されている。この作品と一連の作品が展示されている。

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杭州の学生たちから作品についての質問をされている岡部昌生

岡部昌生のインスタレーション作品は、かつて軍事工場が置かれていた広島のプラットホームをフロッタージュで写し出したもの250点だ。広島の原爆被害が強調される広島の加害、加害あっての被害を人々に突きつけている。オープニングに訪れた人々に質問攻めにされていた。オープニング翌日には展示関係者とともに屋外に出てワークショップを行った。杭州の歴史的建築を展示関係者たちと巡り、遺物をフロッタージュした。

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展示オープニングの翌日、アーティストトークが行われた。日中の参加アーティストや哲学者がそれぞれの考えを発表した。中国と日本のコンテンポラリーアートについて、その将来について、更に社会の問題点などを話し合った。日本人アーティストからは、今回の展示の動機となった中日両国で避けられない問題 “戦争” についての話が持ち上がった。それに対し中国人アーティストたちは、中国の長い歴史を振り返ったとき、侵略されてきただけでなく侵略してきた歴史について発言した。

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「スクラップブック」端聡, 2006-2011. 鉄, 写真, 紙, 樹脂

話はどこまでも続き、植民地化の問題にまで及んだ。現在日本国内でも植民地化が起こっているという問題、中国のアフリカ支援についてのことや中国国内で植民地化が起こっている可能性についてもふれた。従来の意味の植民以外に、文化の植民についてもあげられた。文化の植民は、1人1人ではどうすることもできない。なぜなら私たちが自分の文化だと思っているものが、実はかなり以前に外国からの影響を受けていたことがあるからだ。しかし文化の植民には悪い面だけでなく、良い面がある。厳しい発言もあったが、アーティストトーク中、始終中国側のアーティストたちが、日本のアーティストを歓迎していることが感じられた。

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「地点上の時間」高世強, 2009. 映像, 49分31秒

両国の間には、戦争が引き起こした様々な傷は今も深く存在する。とても難しく解決など不可能のように感じられる。しかし2008年の四川大震災で被害者の救援に向かった日本の救助隊に中国の方々は驚きを示し、2011年の東日本大震災では中国からの励ましの言葉に日本人が勇気づけられ感動したことを忘れないだろう。問題が存在してはいるが、相手の痛みを自分の痛みと感じ始めた私たちには、もはや国と国の交流ではなく、国を越えた個人と個人の繋がりが多く生まれると信じている。

日中現代芸術交流展「個園」
会期:2012年4月21日〜5月21日
会場:人可芸術中心(中山北路1号)
住所:中国杭州市慶春路172号
TEL:+86 571 8703 7146
キュレーター: 梁慶+鳥本健太
アートディレクター:何勇苗
協力:Office339, Aoimizu Institute, ZEIT-FOTO SALON, Clark Gallery + SHIFT
後援:在上海日本国総領事館
http://www.renkeart.com

Text: Hiromi Nomoto
Photos: 杭州人可芸術中心

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