アート京都 2012

HAPPENINGText: Satsuki Miyanishi

京都が国際マーケットとして花開く瞬間。

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国立京都国際会館 Photo : 表恒匡 © ART KYOTO 2012 実行委員会

満開の桜も散り、夏が始まろうとしている京都。4月27日から29日の3日間、大規模なアートフェア、「ART KYOTO 2012」(アート京都2012)が開催された。2010年から「ホテルモントレ京都」のフロアを貸し切り、各部屋でギャラリーが展示を行うというスタイルで行われてきたこのアートフェアだが、今年はメイン会場として「国立京都国際会館」、サブ会場として「ホテルモントレ京都」、さらに地下鉄沿線の施設での関連イベントも多数加わり、大きくスケールアップしての開催となった。

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ホテルモントレ京都 Photo : 廣瀬育子 © ART KYOTO 2012 実行委員会

韓国からの多くのギャラリーの参加などで昨年よりも国際色豊かなものとなったホテルモントレ会場では、ホテルの部屋、浴室やトイレまでもうまく使った個性的な展示が多く見られた。ギャラリストのみならずアーティストとの距離感がとても近いこともホテル型のアートフェアの特徴だ。各部屋で見られた、自ら作品やアートへの思いなどを観客に熱く伝えるアーティストの姿が印象的だった。

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クラークギャラリー+SHIFT / ホテルモントレ京都 Photo : 井上嘉和 © ART KYOTO 2012 実行委員会

今回ホテルモントレの会場にて、北海道からSHIFTもクラークギャラリー+SHIFTとして参加。北海道の自然をテーマにした澁谷俊彦の作品をはじめ、ワビサビ民野宏之山本アッシュ小島歌織の作品を出品し、観客としてのみならず、出展者という立場でアートフェアを体感することができた。

メイン会場では、ブースの広い空間をうまく利用し、ギャラリーごとに違った見せ方をしていた。ホテルの展示に比べ、大きな作品を展示できることもあり、一つのインスタレーションを大きく展示した迫力のある作品など、ブースごとに雰囲気の異なる空間が表現されていた。京都での開催ということもあるせいか、桜や日本をイメージした作品も多い印象を受ける。

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小出ナオキ「new home」 / 国立京都国際会館 Photo : 表恒匡 © ART KYOTO 2012 実行委員会 Courtesy of TOMIO KOYAMA GALLERY

入り口からほど近い場所では、東京と京都でギャラリーを展開する小山登美夫ギャラリーから出品の小出ナオキの作品「new home」が観客を出迎える。何かのキャラクターのような大きな唇が印象的な女性、少し小さめな男性が手をつなぐこの作品は、作家自身とその妻を表現しているという。いつも自分自身の身の回りの人物、関係性のある人やものを主にモチーフとして扱うという彼の作品、今回出展された「new home」も作家が感じる夫婦の関係性を巧みに表現し、強い存在感でメディアの注目を集めていた。

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COHJU contemporary art / 国立京都国際会館 Photo : 笹倉洋平 © ART KYOTO 2012 実行委員会 Courtesy of COHJU contemporary art

地元京都のギャラリーが多数出展する中、江寿コンテンポラリーアートからは、桐山征士、坪田昌之などの作品が出展された。金属造形作家として活動する桐山氏は女性のボディラインを鉄で表現する。幅のある帯状の鉄で形作られた女性のフォルムは、正面から見ると向こう側が透けて見え、空中に書かれた絵のようにも見えるのも不思議。体の一部の作品は一瞬何かの模様にも見えるのだが、足や胴体のみでもみごとに女性の美しさを表現している。造形する際には、理想的な体型の女性ではなく普通の女性をモデルにするのだという。また、国内外で活躍する彫刻家坪田氏の作品は薄い四角形が積み重なった形や溝が繰り返される。一つ一つの手仕事から生まれるゆらぎや、その繰り返しが目の錯覚を引き起こしたりと面白い。シンプルな形状ながら、その重なりには私達自身の記憶や時間などといったものにリンクしているようで作品に引き込まれる。

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GALLERY INCURVE KYOTO / 国立京都国際会館 Photo : 笹倉洋平 © ART KYOTO 2012 実行委員会 Courtesy of GALLERY INCURVE KYOTO

キャンバスを埋め尽くす緻密な線が目を引くのはギャラリー インカーブ|京都の寺尾勝広の作品。彼の作品のモチーフは全て鉄。実家の鉄工所で20年間働いていた経験もあり、大好きな鉄からインスピレーションを受けているという。国内のみならず海外でも人気が高く、有名なイギリスのコレクターも彼のファンだという程だ。ギャラリーインカーブは社会福祉法人が知的に障がいのある現代アーティストたちの作家としての独立を支援している。アトリエインカーブの創設者、今中博之が語る「アカデミズムに支配されないオリジナリティー」という言葉がぴったりの作品で、どの作品もアートに対する真っ直ぐさが感じられる。

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GALLERY TOMURA / 国立京都国際会館 Photo : 表恒匡 © ART KYOTO 2012 実行委員会 Courtesy of GALLERY TOMURA

東京のギャラリー戸村のブースでは、3名のアーティストの作品が展示されていたが、中でも際立っていたのが冨田伊織の「新世界 “透明標本”」だ。カラフルに染められた生物の標本がホルマリン漬けのように並べられる。生物化学系の研究者が実際に行う標本制作手法で、硬骨を赤紫色に、軟骨を青色に染め、肉を透明にする薬品を使用し、長い時間をかけることでこのような標本が完成するのだという。漁師の仕事の見習いの傍ら透明標本作りをしていたという彼の作品からは、自然が作り出した生物の美しさと同時に命の大切さまで伝わってくるようだ。

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EMON PHOTO GALLERY / 国立京都国際会館 Photo : 笹倉洋平 © ART KYOTO 2012 実行委員会 Courtesy of EMON PHOTO GALLERY

同じく東京の写真芸術を専門に扱うエモン・フォトギャラリーのクリストファー・バックロー「Guest」シリーズ。現代的な印象を与えるこのシリーズだが、その手法はフォトグラムというカメラを使わずに撮影をする古典的手法を再構築したものだ。作品は、印画紙を用い、アルミ箔に25000ものピンホールをあけて太陽光を使って感光させるというシンプルなもの。青色の作品は太陽光のまま、黄色など別の色の作品は、カラーゼラチンフィルムを使って着色をするという。細かな光の点の配置や大きさのためか、人物は立体的に見え、人間の強い生命エネルギーのようであり、何か未来の別の生命体のようにも見え、とても不思議な印象を受ける。

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MIZUMA ART GALLERY / 国立京都国際会館 Photo : 表恒匡 © ART KYOTO 2012 実行委員会 Courtesy of MIZUMA ART GALLERY

ミヅマアートギャラリーのブースでも興味深い作品がいくつも見られた。正面に展示された青山悟の「21世紀のクラフトリサーチ」は、ピカソやダミアン・ハースト、岡本太郎など有名なアーティストたちの作品を刺繍し、チャートにまとめた作品。青山氏の視点から、それぞれのアーティストが社会的、保守的などと位置づけされ、視覚化されている。独自の視点で語られた各アーティストの解説も面白い。一見、なにか生き物の骨格のような作品は彫刻家・森淳一による「creeper」。彼の作品は主に柘植(つげ)の木を用いて制作され、驚くほど細やかに彫られている。この繊細な作品の美しさの中に、脆さや儚さのようなものも感じられる。制作の際には、表面に見えない何かをどう表現するかではなく、外も内もない全体的なものをイメージしているという。

本イベントの前身である「アートフェア京都」の発起人でもある実行委員の石橋氏は『一昨年にホテルフェアとしてスタートした「アートフェア京都」の流れを汲み、京都で初の国際的なアートフェアとして開催された今回は、過去二年間の規模とは比べ物にならないほどの話題と注目を集め、三日間で両会場延べ二万人のお客様にお越し頂く事ができました。一気に国内の有力なフェアへと成長を遂げたと言えますが、しかしまだまだ課題も多く、実行委員会組織の更なる改善・改編や、より多くの海外ギャラリーの誘致、そのための海外有力アートフェア組織との提携、国内のスポンサーの招聘など、山積みです。今回はあくまで第一回開催を無事に成功させられたことを喜びたいと思います。売上げ面では各出展者のばらつきこそあれ、ブースで1000万円規模の商談をまとめられた所もありますので、一定の成果はあったと思われます。今後は上記の課題に取り組むためにも、まずは地盤を固め、長期的な展望で進めて行ければと思っています。』と語ってくれた。

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ANTEROOM PROJECT Photo : Yuki Moriya

今回は、トークイベントや、地下鉄沿線にて映像芸術祭や、ホテル アンテルーム 京都を舞台に名和晃平をはじめとするアーティスト、デザイナー、建築家など様々なジャンルのクリエイターが集い、自由で活発なコラボレーションを展開する「SANDWICH」と京都造形芸術大学院総合造形ゼミの共同企画による2ヶ月の展示、「ANTEROOM PROJECT」などの多くの関連イベントも行われた。あえて「フェア」という言葉を外したことで、アートにあまり詳しくない人にとっても訪れやすく、気取らずにお祭りのような感覚で気軽に楽しめる環境となっていたように感じる。

歴史的な建造物、寺社仏閣や世界遺産など世界のどの都市にも劣らない魅力を持つ京都だからこそ東京にも劣らない大きなアートマーケットができていく可能性も大きい。歴史的なものを大切にしながらも、過去のすばらしい芸術を過去のもので終わらせるのではなく、未来へとつなげていく手段として現代アートの役割は大きいのではないだろうか。

ART KYOTO 212(アート京都2012)
会期:2012年4月27日(金)、28日(土)、29日(日)
会場:国立京都国際会館(出展ブース数 40)、ホテルモントレ京都(出展室数 60)
入場料:1,500円 [両会場入場可能な三日間通し券]
主催:ART KYOTO 2012実行委員会
http://www.artkyoto.jp

Text: Satsuki Miyanishi

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