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天使の話・失くしものの歌

HAPPENINGText: Yu Miyakoshi

辺りが暗くなってきたら、いよいよVOQ 本多裕史さんのライブと、松本力さんと小林エリカさんの映像作品の上映が始まる。会場では、電気の代わりに大きな蝋燭が灯された。停電があった時に高田さんが気に入って買い集めたものだ。リハーサルが始まり会場が音に包まれると、既に心地よい雰囲気が広がる。そして一人、また一人とお客さんが集まりだし、ライブが始まった。

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音階を一音一音辿るような本多さんの演奏には、不思議と教会で聞く音楽のような響きがある。それでいて、即興の音が加えられていくというパフォーマンスは、日常的な音楽のようにも聞こえてくる。特に、天使と失くしものの歌と、松本力さんと小林エリカさんのアニメーションがリンクしたコラボレーションには感銘を受けた。映像を目で追いながら、参加者の方はそれぞれの思いを重ねたのではないだろうか。音楽には、その場にいる人と言葉にならない気持ちを共有できるようにしてくれるような力がある。なお、当日の演奏はVOQの音楽のシェアサイトから視聴することができる。

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この日、東京から訪れた人たちにも「人がいて、文化があることのありがたみ」の気持ちが伝播してきた。そしてそこで出会った人たちからは、復興ということは新たな町を創っていくこと、という気概が新鮮な空気と共に伝わって来た。一度訪れただけの旅行者には、まだこの町の深部は見えていない。きっと、今日みたいなピカピカな 一日だけでなく、色んな日がある。本多さんと小林エリカさんが行ったインタビューでも、時間が十分でなかった、と小林エリカさんは語る。今回の活動をした後で、もっと時間をとって話を聞きたいという思いが湧いてきたということだった。

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夜のイベントでもワークショップで披露した指編みの技をレクチャー。中央は松本力さん。

今、東京に居ると被災地の状況は分かりづらくなっている。震災直後のように大きな話題が無くなってきたことと、ニュースが頻繁に流れなくなったためだろう。東北を訪れてわかったのは、より綿密で時間のかかる復興があるということだった。暮らしの場を築いていくこと、心と体を癒していくこと、時間をかけて話していくこと。今、被災地では、そうした目に見えない復興も進んでいる。その復興は、大きな声で語られることばかりではないから、被災地から離れた所で暮らす人たちには分かりづらい。私もこのイベントを訪れて初めて、普通の人たちが、普通の毎日を大事に、復興に向けて生活を営んでいるという、ニュースでは伝わってこないところを知ることができた。

被災地の方たちが深く痛みをひきうけている部分も感じたけれど、同時に養われていく生命力の胎動も感じた。冬は蓄えの時。もちろん冬を楽しむ文化に参加したくもあるけれど、生きものとしては、じっくり静かに待つ時だ。そうはいうものの、冬の最中に早くも春の光を予感できる場に居合わせることができた、そんな風に感じさせてくれたイベントだった。

「天使の話・失くしものの歌」ワークショップ&アニメーション&ライブ 
開催日:2011年12月16日(金)
ワークショップ会場:伊保石仮設住宅・集会所
ライブ会場:ビルドスペース(宮城県塩竈市港町2-3-11)
出演:松本力、松本由伎子、VOQ、小林エリカ
http://www.birdoflugas.com

Text: Yu Miyakoshi
Photos: Yu Miyakoshi

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