ミー・コレクターズ・ルーム・ベルリン

PLACEText: Kiyohide Hayashi

特徴的なコレクション。強烈な個性を放つ個人美術館 

ベルリンには現代アートを扱う美術館やギャラリー、そしてプライベート・コレクションが無数にある。しかし来場者が作品に心を奪われても、そのスペースに強烈に惹きつけられることは、それほど多くないのではないだろうか。ミー・コレクターズ・ルーム・ベルリンは好き嫌いが分かれるにせよ、強烈な存在感を放ち人々を惹きつける。なぜなら「あく」といえるほどの強烈な個性を持ち合わせているからだ。

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Thomas Olbricht © Schacht 2

ミー・コレクターズ・ルーム・ベルリンは2010年5月コレクターのコレクションを展示する美術館としてオープンした。そのコレクターとは、トーマス・オルブリヒト、現在はエッセンで医学の教授を務めている人物だ。スペースを構えるのはベルリンのアート・シーンの中心地ミッテ。隣にはベルリンで最も先進的な現代美術館「KW」が、裏手には最重要なギャラリーの一つノイゲリームシュナイダーがスペースを構える。スペースは地上2階建の空間の中に、吹き抜けを利用した広大な展示室を始め、遊び心溢れる個性的なカフェ、そしてコレクションにちなんだ特徴的な商品が並ぶミュージアム・ショップなど、個人美術館には十分なほどのコンテンツを持ち合わせている。

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Wunderkammer © me Collectors Room Berlin Photo: Bernd Borchardt

コレクションは二つの枠組みに分けられて展示されている。一つは「ヴンダーカマー(驚異の部屋)」と呼ばれるもので、中世絵画のジャンルにもあるヴァニタス(人生の空虚さや死を意味する)をテーマとしており、「死」を象徴し、同時に「エロティシズム」を喚起させるような16世紀以降の美術品や工芸品が所狭しと並べられている。特筆すべきは古今東西の解剖模型や骨格模型のコレクションで、わずか10数センチほどの模型は細部まで再現されていて、その超絶的な技巧に思わず息を飲んでしまう。またコレクションの中には小人のミイラと思われる頭部の標本や、南洋諸島で作られた人間の頭骨を用いた工芸品などのように、不気味さを感じさせ、強い衝撃を与えるものも多数含まれており、まさに驚異の部屋に相応しいものを備えている。

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Alles Kannibalen? © me Collectors Room Berlin Photo: Jana Ebert

一方で、主に中世や近代の美術作品をも含めた広範囲なコレクションであるヴンダーカマーとは対照的に、企画展スペースではコレクション作品と絡めて現代アートを取り扱う特徴的な展示が行われている。スペースのこけら落としとなる展覧会「パッションフルーツ・ピックドアップフロム・オルブリヒトコレクション」では、コレクションからキュレーターが展示作品を選び出し、名知聡子長井朋子のように、ベルリンで見る機会の少ない若手アジア人アーティストの作品が多く展示されていた。他には、若手中国人アーティストオウヤン・チュンの世界デビューともなる個展「王 オウヤン・チュン – ペインティング・キング」や、神話から社会問題までを包括し、現代アート作品に見られるカニバリズムを扱った「アーレス・カニバーレン?」といった他の美術館やギャラリーで見ることのできない展覧会が企画されており、他のスペースと一線を画す強烈な個性を見せつけている。

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カフェ © me Collectors Room Berlin Photo: Christian Jungeblodt

そもそもベルリンには現代美術におけるメインストリームのものを見ることができる場所は幾らでもある。しかし、注目を浴びることの少ない国のアーティストの作品を展示し、また通常の美術の文脈では扱われにくいもの、また美術の文脈だけで汲み取れないテーマを扱うスペースはほとんどない。まして、その上で現代アートを一領域に限定することなく、中世や近代の美術工芸品と接続させ、過去と現代を同一地平にして展示物を見せる美術施設はベルリンにはミー・コレクターズ・ルーム・ベルリンしかないのではないだろうか。だからこそベルリンに訪れた際にはこのスペースを訪れ、アートの新たな感じ方や見方を体験してほしいと願っている。

me Collectors Room Berlin
住所:Auguststraße 68, 10117 Berlin
営業時間:12:00〜18:00(カフェ 11:30〜18:30)
定休日:月曜日
入場料:一般 6ユーロ
TEL:+49 (0)30 86 00 85-10
http://www.me-berlin.com

Text: Kiyohide Hayashi

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