チン↑ポム
PEOPLEText: Yuko Miyakoshi
今回一番力が入っていた作品はどれですか?
卯城:全てに思い入れがあります。坪井さんの作品(Never Give Up)ももちろんですし、「日本犬」も、ジャパンアートドネーションという、被災地への支援のアート団体からチャリティー展の出品の提案があった時に出したりと、一つ一つに思い入れがあります。
「BLACK OF DEATH」(2007) © Chim↑Pom
Courtesy of Mujin-to Production, Tokyo
震災後に作品を作るにあたり、今までと変わった事はありましたか?
卯城:今までも、広島でやったり(ヒロシマの空をピカッとさせる/2008)、カンボジアで作品作ったり(サンキューセレブプロジェクト アイムボカン/2007)と出張製作はしてきましたし、渋谷でのカラスを集めるというパフォーマンス(BLACK OF DEATH/2007)を編集してギャラリーで発表するという事もしてきました。基本の活動のスタンスは何も変わってはいません。
「ヒロシマの空をピカッとさせる」(2008) © Chim↑Pom
Photo: Cactus Nakao Courtesy of Mujin-to Production, Tokyo
でも何が変わったかというと、大きな出来事の当事者になったことです。世界的な大変な社会問題にぶちあたった、という意識はありますね。そして、あの時に日本のアーティストは何をしたか、というのがいつか問われると思うようになりました。未来の作家たちや、過去に色々やってきた作家たちももちろんそうですし、未来や過去の社会や思想、様々な視点からの目が今の自分たちに向けられてるということを感じるようになりました。でもこれは実は僕たちだけじゃなく、全ての日本人にも言える事だと思います。
作品を発表するたびにメッセージ性があると言われると思うのですが。
卯城:社会の問題は、最初から現実の中にあるものであって、僕たちはそれを見ているだけなのです。現実にある問題を、見ないようにしているフィルターを外すだけです。それを避けて通ったりするのは簡単なのですが。なのでそれによって、僕たちはこういうことを訴えたいといったメッセージや方向性がある訳ではなく、基本的にはそのまま現実を映しているだけです。今回「リアルタイムス」と題していますが、リアルなものが好きだからです。リアルに見て体感して表現してるだけ。ただそれだけです。
岡田:周りの人が勝手にメッセージを読む、ということで誤解が生じたりもしますよね。
卯城:もちろん批判もありますが、自分たちに批判のほこ先が向いた時に、作品を作った者として、ただ単純に批判を浴びるのか、それとも自分たちがアイコンになって、自分たちを通した現実社会にそれが向く仕組になっているのか。例えば「SUPER RAT」では、動物愛護団体などから批判もありましたが、現実問題として毎日何百匹もねずみが殺されている。自分たちがアイコンになって、その裏側にある現実の問題を見て見ないふりしてるというところへの批判になっているかどうかだと思っています。
「SUPER RAT」(2006) © Chim↑Pom
Courtesy of Mujin-to Production, Tokyo
渋谷のセンター街でネズミを捕獲し、ピカチュウを模して剥製にした作品
ビデオを使った表現も多いですね?
卯城:ビデオカメラは作品を製作するにあたっての手法の一つです。僕たちは立体も作るし、写真も撮るし、絵も描きます。表現したいことへの最終地点に到達するのにどの手法をとるかということです。現実の問題に対して絵の具とキャンパスで描くようにカメラで撮ると、よりジャーナリスティックな表現になると思います。なので、社会の問題に対して、それに触れたらやばい、でも何故やばいんだ、というところを、ただ触れてみるだけではなく、面白く表現してみたいのです。
これからどんな活動をしていきたいですか?
卯城:日本でチンポムみたいなことやってる人はあまり居ないなと気付いてきた頃、海外に呼ばれて行くようなことが多くなって来たのですが、そこで僕たちみたいな作家が増えてきていることが分かりました。なので世界的に面白い流れができてくると思います。でもまぁとにかく面白い事に好奇心を持って色々やっていきます。
これからは海外に滞在して作品を作ることもあるということでしょうか?
卯城:結成当初から身の周りで体感したものから僕たちは作品を生み出しています。自分たちは生まれ育った渋谷などで活動をするのが楽しいし、日本で活動しながら、世界とつながることが必要だと思ってます。
今後の活動予定があれば教えてください。
卯城:6月にはこの展覧会が大阪に巡回します。9月に無人島プロダクションで個展をやるので、その時には独自の自主企画もやろうと思っています。詳細は全て無人島プロダクションのHPで発表します。
Chim↑Pom「REAL TIMES」展
会期:2011年5月20日(金)〜25日(水)
開館時間:13:00〜21:00(土・日曜日11:00〜21:00)
会場:無人島プロダクション
住所:東京都江東区三好2-12-6 渡邊ビル1F
TEL:03-6458-8225
入場料:500円(Chim↑Pom新作音声CDの特典込み。入場料の一部は義援金として寄附)
https://chimpom.jp
Text: Yuko Miyakoshi