ポスタルコ

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ポストを開けたとき。味気ない印刷の宛名シールが貼られた幾つものダイレクトメールの中に、手紙を見つけたときのあの気持ちは何だろう。

「伝える」という普遍的な行為の中には、どんな言葉に置き換え、文節をどう組み合わせるのか。そして、その言葉の連なりがどんなストーリーとともに、音として耳に余韻を残すのか。そんな過程の果てに、メッセージは人に届けられる。
同じ日本語でも、人の心に届けられるイメージや言葉の強度は様々だ。だからこそ、文字は興味深い。そこに、肉筆というドレスまで纏い、書き手の感情や印象までをも浮かび上がらせてしまう。

POSTALCO

私たちは長いこと、紙でコミュニケーションをしてきた。誰かのために便せんを選び、言葉を紡ぎ、切手を貼ってポストに投函する。手紙を送る人も、受け取る人も「手紙」を通して相手を想う。そんなコミュニケーションが郵便という公共サービスになっていることに興味を抱き、郵便のPOSTALと会社のCOMPANYから「POSTALCO (ポスタルコ)」という造語をつくったのがマイク・エーブルソンさんとパートナーの友理さん。郵便への関心から、紙への興味も拡がって、それらがクロスするように「ポスタルコ」は2000年、ニューヨークのブルックリンで誕生した。

POSTALCO

京橋の築50年ほどのビルの4階は、古いビルに特有な殺風景なまでのシンプルさと色合いが、どこか懐かしい記憶が交差するような場所。古くて開かない窓の外には、時々、トレードマークの伝書鳩を想起させる鳩たちが、羽を休めにやってくる。

POSTALCO

作り手のものづくりへの想いの片鱗が、使う人にも届くといいな。そんな想いとともに「ポスタルコ」はものづくりをスタートさせ、クオリティの高いものづくりを目指している。
使うほどに馴染み、味わい深い表情を見せるようなもの。永く、人に寄り添い、愛着が育まれるもの。作り手の想いが感じられるもの。そんなデザインの本質とも思えるものをテーマに、自分たちが欲しいと思うものをカタチにしている。

ハンカチで何かを包むように、大切なメッセージを包みたいとつくられたのが「Handkerchief envelopes 6枚入り」(1,575円)。ペンが滑りすぎないようにと中性紙が使われ、折り紙のようなその封筒には、気持ちを包む文化を大切にするオーナー夫妻の視点が活かされている。

POSTALCO

ある時、友理さんの紙の資料がバッグの中で窮屈そうにしているのをマイクが見つけた。当時、ジャックスペードのバッグデザイナーだった彼は、そんな彼女のために「Legal Envelope」シリーズを発明したのだそう。鳩目留め付きの革製封筒は、持ち運ばれる”紙”視点で、紙がいかに居心地良く運ばれるかを考えたもの。サイズも豊富に揃っている、「ポスタルコ」初期作品のひとつだ。

「Mail Bag」(small 94,500円/large 128,000円)は1年以上かけてマイクが開発したという、真鍮のオリジナル金具”Uロック”付きのレザーバッグ。この金具は、バッグを肩にかけたときに、どんな体勢でも片手で開閉ができるという優れもの。中のものを取り出す一連の所作までも、スマートにデザインしている。他にも、橋の構造が重さを分散させていることに着目してつくられた「Bridge Bags A4 Bag」(34,650円)がある。橋の強度とバランスをバッグに応用した「Bridge Bag」シリーズに、機能性が高く女性にも使いやすいサイズとして、新しく仲間入りしたそう。

マイクの日常に潜む、あくまでも個人的な好奇心の視点がプロジェクトになり、深く深く掘り下げられ、やがては個人を超えた新たな発明や発見となって「ポスタルコ」のものづくりに活かされている。手書きや紙の持つ温かみを伝えるZINEのような「Mini Book」(1,050円)シリーズは、LETTERS、SIGNS、MAPS、RECIPESの全4種。
開店日はウェブで確認できるので、電話で開店時間を確認してから訪れたい。

POSTALCO
時間:12:00〜19:00(第1・3土曜日17:00まで)
定休日:日・月曜日
住所:東京都中央区京橋2-2-18 4F
TEL:03-3281-3309
office@postalco.net
http://postalco.net

Text: mina
Photos: mina

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