
声の彫刻家。
あなたはもうすでに、彼の力強くミステリアスな、そしてクラシックでエクスペリメンタルな声を聞いたことがあるかもしれない。ビョークの「アーミー・オブ・ミー」のリミックスや、今シーズンのブランドの最新のファッションショーで流れていた時、または、YouTubeで偶然彼のミュージックビデオを見ているかもしれない。ミハイル・カリキスの声に触れた時、皆今までに感じたことのない深い場所へと連れて行かれたはずだ。彼の最新コラボレーションアルバム、「MORPHICA」が発売される予定の、活動的に独自の音楽とアートの世界を広げ、人々を未知の場所へと連れて行くミハイル・カリキスにインタビューをした。
まずはじめに自己紹介をお願いします。
私はギリシャ生まれのアーティストで、90年代の初期からロンドンを拠点に活動しています。テッサロニキという騒がしい港町で育ちました。バルカン諸国からの移民が入り交じり、中東に隣接し、東ヨーロッパの国々やアフリカ、ストリートミュージック、衣装、そしてもちろん船の汽笛の音!これらがこの国でもっとも刺激的なことでした。労働者クラスの教育されていない家族の中で育ち、私はいつも“向こう側”に興味を持っていました。例えば、本や詩、エクスペリメンタルやクラシック音楽、 アバンギャルドなデザイン、古代のギリシャ悲劇などです。これらを全て発見する道はとても長く、決してまっすぐではありませんでした。クラシック音楽を勉強し、実験的デザイングループのアーキグラムと一緒に建築を勉強し、そして私のアートへの勉強をロンドンのスレード校に移したのです。美術学校で自分の声を発見したのですから、面白いですね。そして声の彫刻を作り始めました。
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最新アルバム「MORPHICA」を含め、最近のプロジェクトや活動について教えて頂けますか?
私は「MORPHICA」を統一したビジョンと一般的な原因を非凡な地で発見しつつある政治的底流のプロジェクトと捉えています。これは3枚組のアルバムであらゆる大陸からの30組以上のミュージシャンと共に制作したアルバムです。前回の私のアルバム「Orphica」から素材を取り、私と一緒にその素材の形を変えて新しく作ったものです。アーティスト達は、これらを自分で作り、自分の仕事や背景に関連付けました。このアルバムはエレクトロニカや、テクノ、アンビエント、アバンギャルド、ジャズ、そして合唱音楽が心地よく共存しているようなアルバムです。
「MORPHICA」は、私の友達の間で作られた、友情です。私はこのアルバムに全てを注ぎ込むことを決め、リミックスとコラボレーションというアイディアを映像と文字へと膨らませていきました。何か今までに見たことのないものを作りたいと思い、たくさんのアーティストや、デザイナー、映像作家、詩人、そしてライターを集め、音楽と映像へのリミックスや、「Orphica」の歌詞のリミックスをしていきました。しかし、それは、そこだけでは終わりませんでした。私たちはこのアルバムを持っている人が全く異なった要素で彼らのためにリミックスできるという仕組みをデザインしたのです。インスタレーションでもよいし、CDのパッケージの色を変えてもいい、文字を色々な方法で読んでもいいなど、プロジェクトのどんなステップにおいても自分自身をチャレンジし続けました。そして、その結果、私たちの誰もが今までに見たことのない何かを作ることが出来たのです。真の喜びです!
最近のプロジェクトでは、他に「イン・ディーズ・グレートタイムズ」というアリエル・オーロウのインスタレーションのサウンドトラックや、キングズ・プレイスというロンドンの新しいコンサートホールから依頼されたジュース・ヴォーカル・アンサンブルと私の声との新しい合唱音楽の作品などがあります。また、ジネブ・セディラの短編映画「ミドル・シー」のサウンドトラック、 アラミエ・クワイヤとのツアーや、その他たくさんのパフォーマンスを色々な場所でしています。
ビョークの「アーミー・オブ・ミー」のコンピレーションアルバムで多くのミュージシャンと共演し、賞賛を受け、あなたの音楽作品やパフォーマンスはファッションや美術、合唱など、多くの分野で広く認められていますが、これらの作品やパフォーマンスをいくつか紹介して頂けますか?
私が取り組んで本当に楽しかったプロジェクトは、2008年の夏にイギリスの「ウィスタブル・ビエンナーレ」のためにオリート・アシェリーと作ったものです。オリートは私が知ってる最も大胆なパフォーマンスアーティストのうちの1人で、彼女と仕事をすることはとても刺激的です。このフェスティバルのために彼女は予言者のような格好をして、2週間海の近くの漁師の小屋で生活したのです。私もパフォーマンスのために、神の声を聞くことができるという思いから連れてこられたごく普通の会社員のようになりすまし訪ねて行きました。神聖な魂が神聖なハトの形に姿を変え彼に降臨し、何やら意味不明なギフトをもたらす。この話は、私のライブパフォーマンスを見た人々が頻繁に私にコメントした返答でもありました。彼らは私が取りつかれたように聞こえたと言います!
「フォー・ユー、オンリー・ユー」というパフォーマンスとビデオインスタレーションではソニア・ボイスとアラミエ・クワイと一緒に働きました。これも、とても刺激的なプロジェクトでした。私は、初期の合唱音楽の一部を解体し、パンクとアバンギャルド音楽から新しい要素を加え、音楽を制作しました。現代の声(私自身の声)と過去に音楽の偉大な歴史を残した巨匠の声の対話をイメージしたのです。いつも何か昔の音楽を聴くと、自分に問いかけることがあります。『それは今とどう関係しているのか?』と『それは何を私たちに伝えようとしてるのか?』ということです。これらの返答は“古いものは形を変え、現代からゆっくりと流れでてくる”です。

異なった分野で音楽を作る際に、それぞれ違う点はありますか?または類似点があれば教えて下さい。プロフィールにご自身で音楽と建築、ビジュアルアートが背景にあるアーティストと書かれていますが、これらの異なった分野がどのように作品に表れていると思いますか?もし、例となる作品があれば教えて下さい。
私は、音とイメージは結婚しているようなものだと深く信じています。彼らの仲が良い時もあれば、悪いときもあるけれど、彼らの関係を忘れてしまうのはよくありません。あるパフォーマー達は、コンサートに来る観客は耳と同様に目もあるということを忘れています。私はコンサートにただ聞きに行くだけではありません。見るためにも行くのです。ミュージシャンがステージに上がった時、最初の音を出す前に、ステージライトや、衣装、髪型、彼らの歩き方などから、私は何が聞こえてくるだろうか、彼らが誰なのかという、最初の印象を持つのです。そして音を聞き、考えます。例えば、ブルージーンズの人と白いTシャツの人がいて(典型的なアメリカ人、コカコーラを飲んでいるような人)ステージに上がり、反逆的でいることについてのパンクを歌う。私は、音の構成の仕方や、空間のなかで動き、反響する様子からも音の中にも建築があると思っています。建築はイメージと音、動きの空間です。
あなたの音楽をファッションシーンで広めていくことについてはどう思いますか?以前、ロザルブ・デ・ムーラのコレクションのために制作した音楽について教えて頂けますか?
とても興味がある事です。明確にすると、私はファッションのために音楽を作るという方向性は持っていません。私は、音楽を作り、それをファションショーのために発展させ、適応させているのです。私は、ファッションショーのステージをバレーの舞台のように捉えています。テーマを得て、衣装も、ダンサーもライトも。ロザルブ・デ・ムーラのテーマとデザインは魅力があり、彼らのショーのために働くことは素晴らしい体験でした。彼らは私に火山や、細菌、モノクロなどといった単語と、黒を主とした多くの詳細がある、エイリアンスタイルのコレクション写真を送ってくれました。 私が発展させた音楽は、多くの詳細と昆虫の音を入れたアンビエントでした。全くの別世界を発見するために、細菌増殖に焦点をあてたような、頻繁にミツバチが曲の中に現れる音楽です。
ギリシャ出身であるということが、作品にどのような影響を与えていますか?また、何にインスピレーションを受けて作品を作るのか教えて下さい。
全く飾り気のないギリシャの景色は、私の一部であり、感情の化粧のようなものです。これが、私がなぜ劇的な対照に興味を持っているかという一つの理由かもしれません。また、ギリシャ人は皆若い頃から政治に携わり、政治問題に関する意見を持っています。対照的に、イギリス人の若者は政治に興味を持つように教育されておらず、政治に関心を抱くことが奨励されていません。イギリスでは、アメリカと国際化を批判してマクドナルドに入っていくという光景がみられる場所なのです!政治的な考えが私の作品には含まれていますが、全てではありません。
どのような音楽をいつも聴いていますか?
大抵、ある特定の作品の特定な箇所にこだわりをもって、自分がうんざりするか、mp3プレイヤーが私を見放すまで、何週間も終わりなく聴いています。私はエレクトロニカが大好きです。私のようにクラシックオペラを聴くものにとっては、とてもユニークに感じるのです。JF. ラモーの「Hippolyte et Aricie」マルク・ミンコフスキがディレクターの素晴らしいレコーディングを最近聴いています。この作品は最初のバロックオペラで、当時の音楽界に絶対的な混沌を起こしたのです。私はラモーによるこの作品の楽節が生のパンクエネルギーとゴシックの闇を支配していると思うのです。
ロンドンで一番どこが好きですか?おすすめの場所はありますか?
(もし、ギリシャも詳しいのであれば、そちらも教えて下さい。)
私の友人であるマラヤン・ペジョスキとサーシャ・ベゾブスキが、「ココン・トウ・ザイ」という素晴らしいブティックを開いています。多くの学生からの新しいデザインアイディアや面白い音楽をを取り入れています。また、ロンドンの新しいコンサートホール「キングズ・プレイス」は全てドイツの森からイギリスに運んだ巨大な木で造られた建物です。このホールの音響は私が今まで聞いた中で一番素晴らしいものです。
もし、地球外の景色が見たいなら、ギリシャにあるレスボス島の東南に行ってみて下さい。ヨーロッパで一番熱い天然の温泉です。そこで育っている植物は本当に異様に見えます!また、石化した森もありますし、そこには父権社会に反抗した古代初の女性詩人の土地でもあります。長く生きた初のフェミニスト、サッポーです!
休みの日は何をしていますか?
友達のために、盛大な食事を作り、長い時間騒がしい夕食会を開いています。
今後の活動を教えて下さい。
次回のソロアルバムのために、レコーディングをスタートしようとしています。2009年の6月と12月にロンドンのテート・ギャラリーでパフォーマンスをする予定です。
将来一緒に仕事をしてみたいものや人はいますか?
数週間前、1stAveMachineのディレクターから、あるプロモーションビデオの話を受けました。彼の作品は素晴らしく、何か一緒にするかもしれません。また、最近、オランダ・ダンスシアターが、私のソロアルバム「Orphica」を元に、モダンバレーを作るということが分かり喜んでいます。彼らとその振付師モーリス・コージィとコラボレートするのは面白くなりそうです。
Text: Mariko Takei
Translation: Maki Otomo