
オノ・ヨーコの中国初個展。
KEセンターは見つけづらいが、一度見つけるとその外壁を飾るオノ・ヨーコの巨大なポスターを見過ごすことはないだろう。75歳の女性が見せる胸の谷間は心地いいと言っていいものかどうなのか、それが一番はじめに僕の頭をよぎったことだ。
ジョン・レノンとの恋愛関係によって、彼女自身のコンセプチュアル・アーティストとしての作品の影は薄くなり、おまけにビートルズファンによって悪役のレッテルを貼られたこの女性について、ジョン・レノン亡き後の1980年代に生まれた僕は、正直よく知らない。
彼女の中国での初個展ということでメディアが注目し、たくさんの人がこの展示に集まった。僕より先に見に来た友人からイマイチだったと聞いていたこともあり、僕はあまり期待もせず展示を見に来た。

彼女の作品は、目がくらむようなユートピア的な愛と平和の靄によって包まれた、インタラクティブなものが多い。

観客は、壁に落書きしたり、「Wish Tree for Shanghai」に願い事の短冊をつるしたり、まるで壊れた陶器を直すかのように世界を修復していくのだ。そうして、アーティストと観客の間の国境線をぼやけさしていく。

大きく引き伸ばされた陰部と乳首のふたつの写真が、会場のひとつの角を占めている。この「My Mommy is Beautiful」という作品を通して、オノ・ヨーコは母に対する感謝の気持ちを表すことをおろそかにしてはいけないと、みんなに思い出させる。

「Telephone Piece」では、オノ・ヨーコがこの展示開催中にどこからか電話をかけてくるかもしれないという付箋のついた、レトロ調な白い電話が飾られている。僕がいる間は、鳴らなかったのだが。

30元もする入場料が、僕がなぜ長い間この展示会場にいたのかの説明になると思う(20元あれば、上海中のアートミュージアムを見て回れるからだ)。そして、アイスランドにあるジョン・レノン追悼のピースタワーの展示着手、そしてオープニングの際のドキュメンタリーを見ることとなった。

「ONOCHORD(オノ・コード)」の考えはいまだ受け入れることができないが、このドキュメンタリーを見た後、彼女に対する皮肉な考えはすべて消えた。
オノ・ヨーコは、愛する人への感謝の気持ちの必要性を、見ている僕らに思い出させてくれる。ジョン・レノンの「イマジン」を何度も繰り返し聴いて、頭にたたきこまないと分からないならそうするといい。伝え方というのは、ただのチャンネルのようなものであって、最も大切なのはそこから伝わってくるメッセージなんだ。彼の歌がそうであったように。
また、オノ・ヨーコ展「FLY」は、一人で味わうのがおそらくベストであろう展示である。きっと、彼女の作品が好きな友人とここへ来ていたとしても、今日実際一人でいたよりも早くこの会場を去っていたであろう。
録音された鳥のさえずりとともに、むき出しのままあちこちにアートがちりばめられた部屋の中で、このアーティストの信念を考えるには、ある程度彼女への誤解を晴らすことが必要となってくる。当初のシニシズムを突破ってしまえば、彼女の伝えたいメッセージを明らかに伝わってくる。
人生の基本の中で、彼女が終世信じている一番大切なもの、「愛」、「平和」そして「希望」。

オノ・ヨーコが自身のひとつの作品についてこう述べている。『繭は飛び立つために去った子宮である。わたしたちがどこから飛んできたのかを見せたかった。』と。
オノ・ヨーコ展「FLY」
会期:2008年11月23日〜12月15日
会場:Ke Center for the Contemporary Arts
住所:No. 613B, Kai Xuan Rd., 200051, Shanghai
TEL:6131 3080
ke@kecenter.org
http://www.kecenter.org
Text and photos: Wee Ling Soh
Translation: Fumi Nakamura