ロザルブ・デ・ムーラ

PEOPLEText: Kazumi Oiwa

08/09秋冬コレクション「THING」について教えてください。

完全な黒から成る厳粛さやミステリーに興味がありました。私が考えたのは、古代の溶岩標本の感触と見た目でした。それはまるで、全ての部分が黒い粘液に浸され、その凝結プロセスで表面が耳たぶのような痕跡を持つかのように。曲線的なカット、隠しポケット、トゥーインワン、間違った切返しなど、着用者のみが知ることになる優れた秘密の特徴をカモフラージュする黒と、有機的な過剰さを組み合わせたいと思ったのです。

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Rozalb de Mura FW 08/09 Collection「The Thing」

08/09秋冬コレクションでは、全て黒一色で統一してあり、顔にマスクのようなアクセサリーが印象的です。まるで衣類で身を守っているように感じます。どのようなことを考えたのでしょうか?インスピレーションは何でしたか?

どこか深い奥底に捕われている純然で潜在的な力に魅力を感じてます。溶岩、科学、非常に古代的で文字通り地球の下にある何かなど、あらゆる鉱物の混合。私の家の周りにある素晴らしい景色が、無意識に影響しているのかもしれません。大げさでなく、本当に。それは、見事なまでにありふれた、卒倒するほどに美しい自然です。ぼんやりと荒れた空気が漂うカルパティア山脈と森林、湖と森と岩、荒々しいテクスチャーとマテリアル。

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Rozalb de Mura FW 08/09 Collection「The Thing」

服のパーツに凝った細工が施されていて縫製が難しそうですね。一番悩んだ部分はどこでしょうか?また生地など素材にどのようなこだわりがありますか?

私たちの生産技術は、とても正確で、このことは重要であると考えます。特に大部分の若いデザイナーは、ファブリックの品質や生産技術の問題を抱えています。国際的なブランドのコートやジャケットを製造し、高品質の評判を持つミエルクレア・チュクにある工場に縫製を依頼していて、彼らのもつ長い経験から恩恵を受けています。生産工場が私のスタジオの隣にあり、私は日常的に行き来しています。小さなディテールが服全体の完成度に善くも悪くも影響を及ぼすので、各々の意思疎通が重要なのです。

ロザルブ・デ・ムーラ
Rozalb de Mura show at IDEAL Berlin (February 2008)

コレクションのポスターにある工具は何を示しているのですか?

それは溶岩サンプルを採取し研究する火山学者によって使用される道具です。

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Rozalb de Mura show at IDEAL Berlin (February 2008)

ルーマニアのファッション・シーンについて教えていただけますか?

私のいるところは、前共産主義国です。ファッション・シーンというものがまだ確立しておらず、保守的で未開発なところです。最近までは、大部分のファッションは、ユーモアのないキッチュな印象を与えるものか、単に「セクシー」さのあるものか、どちらかを行ったり来たりしている感じでした。これは、長い歴史の共産主義政権、若干のバルカンの影響と、開放性と好奇心の欠乏、これらの芳しくない混成によるものと思います。

ルーマニアでは、この分野でビジネスを開発するためのサポートやインフラが整っていないので、自分自身で解決策を見い出さなければなりません。従って、今の状況は若いブランドにはかなりの困難です。しかし、自身のビジョンを示し、ビジネスを構築しようと努力している、才能のある若いデザイナーも出はじめています。

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