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モエレ沼公園のエコシステム

HAPPENINGText: Mariko Takei

北海道札幌市内にあるモエレ沼公園。そのマスタープランをイサム・ノグチが手がけ、「全体をひとつの彫刻と見なした公園」として、そのシンプルでダイナミックな公園の2005年グランドオープンには、国内外から注目が集まった。
デザイン的に有名な公園だが、そのモエレ沼公園では環境に配慮した幾つかの試みが行われているのをご存知だろうか?今回はその幾つかをご紹介しよう。

モエレ沼公園のエコシステム

世界的な彫刻家のデザインによる公園が、ゴミの埋め立て地の上に造成されているということは、あまり知られていないかもしれない。札幌市街地を中心としたその周りに緑のネットワーク化を計る「札幌市環状グリーンベルト」構想の一環として計画され、1979年のゴミ埋立て開始から、26年の時を経て、270万トンものゴミを埋め立てた土地に造成された公園の広大な敷地内には、イサム・ノグチの作品ともいえる、森、遊具、ビーチ、山、噴水、ピラミッドなどの施設がちりばめられている。

その施設の中でも、一際目立つ存在の、ガラスのピラミッド「HIDAMARI」は、モエレ沼公園のシンボルとして公園全体を形成している主要な施設だ。「HIDAMARI」と名付けられているように、ガラスで覆われたピラミッド内アトリウムは、太陽の熱を集めて、とても暖かく、雪で覆われた寒い季節には、まさに「日溜まり」となる。夏はどうかというと、北の北海道とはいえ、日差しは暑い。日射のため室内が高温に達して、温室のようになってしまうアトリウム内を、快適な温度に保つ為に導入されているのが「雪冷房システム」だ。

モエレ沼公園のエコシステム

札幌市では「雪冷房システム」の公共施設への導入の先駆けとして、モエレ沼公園のグランドオープンの2年前の2003年にガラスのピラミッドの利用が開始された。「雪冷房システム」は、冬に積もった雪を、夏の冷房システムに利用していこうというもので、毎年6月から9月の3ヶ月間、その雪融け水の冷水を熱利用することで、ガラスのピラミッドの冷房システムの一つとして取り入れている。

モエレ沼公園では毎年3月、駐車場や園路に積もった雪を一気に雪倉庫に運び入れる。倉庫内目一杯入れて3000m3の容量だ。その倉庫内の雪が溶けてできる冷たい水を熱交換機に循環させ、各部屋の空調機を通じて、それぞれの部屋に冷えた空気が送り出される。そして、各部屋の暖かい熱が熱交換機を通して戻り、温まった融水が雪倉庫内の雪を溶かし、冷たい雪融け水を発生させるという、循環システムを利用しているのが「雪冷房システム」だ。

モエレ沼公園のエコシステム

雪冷房システム系統図 © モエレ沼公園

「雪冷房システム」の効果は、簡単に言うとCO2削減による地球温暖化防止だ。通常の冷房システムで冷水を発生させるためには、電気や、ガスや重油などの化石燃料を使用しなければならない。そうすると必ずCO2が発生する。雪冷房の場合は、雪融け水の冷水を利用しているので、冷やすための熱の必要がなく、CO2の発生が全くないという訳だ。

ガラスのピラミッド内施設では、冬の暖房や夏の雪冷房で雪が足りなくなってしまった際など、天然ガスを燃料としている。もし、その全ての熱量をガスでまかなった場合、年間約30トンのCO2の発生が見込まれるそうだ。そこから、雪を運び入れるトラックや除雪機などの重機が排出するCO2量、約5トンを差し引いても、雪冷房の利用で約25トンのCO2削減効果がある計算となる。

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