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ファブリカ:将来を見据えた目

“伝えなくてはいけない”という使命感。

ファブリカ展

AIDS防止を訴える強烈な写真、黒人と白人が手錠で繋がれている人種差別を題材にしたポスター。あなたがおそらく一度は目にしたことがある UNITED COLORS OF BENETTON.の広告は、ある「クリエイティブファクトリー」から生み出されている。

FABRICA。1994年、ルチアーノ・ベネトンとベネトンの広告のアートディレクターであったオリビエーロ・トスカーニによって設立されたこのデザインの実験場では、既存の価値観を揺るがすようなモノが次々と生み出され、世界中のクリエイターに多大な影響を及ぼし続けている。

イタリア・ヴェネティア郊外に位置するこのリサーチセンターでは、世界中から集まってきた才能あふれる若者たちが一年を掛けてプロジェクトを行う。その実験場で生み出されたいくつかの作品が、2006年10月にパリのポンピドゥー・センターで展示され、その後2007年7月には、ミラノのラ・トリエンナーレ・ディ・ミラノ、また10月には中国の上海美術館へと巡り、この度日本へ上陸する運びとなった。これまでFABRICAの趣旨や概要は知っていたが、実際にどのようなことをしているのかは見たことがなかった。今回の展示では、FABRICAでどのようなプロジェクトが行われているのかを知ることができた。

ファブリカ展

会場は、主にドキュメンタリー プロジェクト(I see と COLORS NOTEBOOK)と実験的なプロジェクト(ビデオ、ビジュアル・コミュニケーション、インタラクティブ・インスタレーション)の2つから構成されている。例えば、「I see」は、6人の写真家たちが世界の主要な6地域で、民族紛争、生と死、異常気象、女性差別、石油問題、食料危機について、各々の視点で捉えたフォトジャーナルプロジェクト。棺おけで横たわっている遺体、一夫多妻制の家で隣り合う二人の妻の部屋…など、「一枚の写真」が語る内容の大きさに改めて驚く。

ファブリカ展

なかでも一番印象に残ったのが、国境なき医師団と共同で制作された「COLORS NOTEBOOK」(2006-2007) だ。FABRICAが1991年から4カ国語で40カ国以上へ向けて発行しているマガジン「COLORS」をモチーフに、何も書かれていない真っ白のCOLORSを世界中から選ばれた3000人に渡して、オリジナルの雑誌=COLORSを作るという試み。国や文 化、個々の問題意識の矛先の違いによって様々なカラー(まさしく、十人十色)の雑誌となっている。真ん中をハート型に切り抜いたもの、写真をコラージュし たもの、使用済みの切符やフライヤーなど立体物を貼り付けたもの…形態もバリエーションに富んでいて面白い。

ファブリカ展

ところで、私が初めてCOLORSを見たときの衝撃は忘れることができない。この雑誌を読んだとき、他のファッション誌やカルチャー誌とは全く違う読後感を覚え、閃光が走った。圧倒的に強い写真のビジュアル、シンプルでわかりやすい言葉。そこにはただただ“伝えなくてはいけない”という使命感にも似た気持ちが溢れていた。
COLORS NOTEBOOKではまさしくその“伝えなくては”が表現されている。南アフリカの子ども、中国の囚人、宇宙飛行士にアートスクールの学生、それぞれの日常が手作り感一杯の本から浮かび上がる。文化、社会的立場、年齢、人種といった社会的制約を飛び越えて、“自分自身”を伝えようと、1ページ1ページ丁寧 に作られた世界に一つだけの雑誌。ひと