MOTION DECOMPOSITION VER.1.1

THINGS

ミルフィーユのようなミュージック/サウンド。

MOTIONDE COMPOSITION Ver.1.1

オープンスペースにあるカフェでコーヒーを飲んでいる。右側にあるカウンターからはありふれたメロディのBGMが流れ、左側にあるアート・ショップからはアブストラクトな音響が聞こえてくる。そして、まわりには私と同じようにカップを片手に話す人々の声。コーヒーを飲みながらどこに意識を向けるわけでもなく今こうして私が耳にしている「音楽」は誰が作っているのだろう?


ポストロック・デュオsubtleであり、他のミュージシャンや映画音楽のミックスを手がけるミュージシャン/サウンドエンジニア、瀬川雄太による「MOTIONDECOMPOSITION Ver.1.1」は、彼が「DOTMOV Festival 2007」の一環として、せんだいメディアテーク・オープンスクエアで行ったパフォーマンスをきっかけに作られたものである。そのときには来場者限定のライブCDが配られたのだが、今回の「Ver.1.1」は、そのライブ音源もふくめつつ、DOTMOVのエンドクレジットに使われた楽曲など新たな作品をまじえ、アルバムとしてより構成された仕上がりとなっている。

MOTIONDE COMPOSITION Ver.1.1

ライブの前、世界的に著名な建築家・伊東豊雄がデザインした、どこか近未来を思わせつつ柔らかく人々に開かれた会場を見ながら生まれたアイディアは、別々の音を発する複数のスピーカーを配置し、人々が空間を歩き回りながら聴く音楽を作ることだった。あらかじめミキシングされたものを与えられた席で受け止めるのではなく、オーディエンス一人ひとりが音の位相をつくりだすことができる音楽。ライブが始まる数時間前から彼が奏で続けるギターの音をサンプリングし、複数の時間軸でずらしながらさらにライブを重ねていく。壁のない空間で、街のノイズもふくめで完成される音は、あの瞬間に居合わせた人々それぞれのなかにしかもう存在しない。

その意味で、この「Ver.1.1」はあのライブの記録とは違うものである。しかし、複数の時間と空間の重なり合いを楽曲として表現しようとするコンセプトは、別の形でなおいっそうクリアに示されているといえよう。1枚のアルバムとしてパッケージされながら、なおほかの音と混じりあえる揺らぎを持った、ミルフィーユのように重なりあう音の集合。それは、音楽がもつ物語性と物質性の間を揺れ動く音楽である。

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MOTIONDECOMPOSITION Ver.1.1
アーティスト:瀬川雄太
価格:2100円(税込)
発売日:2007年12月
制作・販売:CNC Record
mail@cncrecord.com
CDは、CNC Record ウェブサイト、せんだいメディアテークspiral records (東京青山)、 store 15nov (仙台) などで購入できます。

Text: Naoto Ogawa (Sendai Mediatheque)
Photo: Koichi Watabe (A-PHOTO)

※2月5日から青山 gallery Rocketで行われるデザイナー鈴木草太のエキシビジョン『光の岸』で、瀬川雄太が、サウンドデザインを行いました。MOTIONDECOMPOSITIONと同じ手法で制作された、サウンドを直に聞くことができます。

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