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福井利佐

PEOPLEText: Wakana Kawahito

切り画という言葉がまさにぴったりくる。「KI RI GA」とは、11月に上梓した初の作品集の名前。福井利佐は新進気鋭の切り絵作家だ。グラフィカルで大胆な構図の上にものすごく繊細な線と綿密に計算された色彩設定。その絶妙なバランスの上で成立している彼女の作品で切り取られている動物や人は、いまにも動き出しそうな躍動感で見る人に迫る。

福井利佐

現代的かつ西洋的なモチーフを使っていても、どこかしらに「和」がにじみ出ている。意識しているかどうかに関わらず、和(としての静)の要素があることによって、逆に有機的なモチーフの”動”が強調されている。

さらに、福井の活動は多岐に渡っている。切り絵は2次元を飛び出して、車のシート、スニーカーへのデザイン、Tシャツやアニメーションへと広がりをみせる。今後の益々の活躍が楽しみなアーティスト福井利佐に話を聞いた。

福井利佐

中学で切り絵クラブに入っていたことが切り絵を始めたきっかけだと伺いましたが、しばらくは切り絵から離れていたそうで。その後、美大に入ってから切り絵を復活させたきっかけは何だったのですか?

通っていたのは多摩美術大学のグラフィックデザイン科だったのですが、私の時代はグラフィックといっても結構アナログで、色紙で構成を考えたり、顔を線で分解して色彩構成したり、手書きで線をかいたりしていて。紙を使うということが身近な状況だったんです。

2年生の時に、手法は何でもよいから作品を作るという授業があり、普段から紙を使っていたこともあって、中学校のときに切り絵が比較的得意だったことを思い出したんです。当時、周りにはデッサンや水彩が上手い人が沢山いたので、何か別の表現方法を追求していかないといけないなぁと思っていて。それで切り絵を試してみたら、すごく楽しくて上手くいったんです。以降、ずっと切り絵をやっています。

一つの作品をつくるのにどのぐらいの時間かかりますか?

例えば、現在、週刊誌での連載をしているのだと、一週間でA3一枚とA4一枚の白黒作品を2つ制作しています。時間的には結構大変です。これに色づけが加わるとさらに時間がかかります。通常は、一つの作品に最低でも2~3週間は必要ですね。

お話にもあがりましたが、現在週刊文春で桐野夏生さんの小説に挿絵を書いていらっしゃいますがいかがでしょうか?

文章に挿絵を書くことはやってみたかったので、機会を頂けて嬉しいです。週刊誌なので毎週読んでいない人もいると思うのですが、これまでのストーリーを知らない人も大体の話の内容が一目で分かるように、一話ごとのキーワードを決めてそれをもとに絵を作っています。

福井利佐

11月に出版された初の作品集「KI RI GA」。この作品集を一言であらわすと?

従来の切り絵という言葉からイメージするような趣味としての切り絵ではなく、一枚の絵画として完成された作品だということを強調したかったんです。それで「切り画(KI RI GA)」という言葉を用いています。

福井利佐

スニーカーやCDジャケットのデザインなど、色々とコラボレーションを手がけられていますが、今までで一番印象に残っているのは何ですか?

2004年に作った中島美嘉さんのCDジャケットの作品ですね。多くの人に私の存在を知ってもらえるきっかけとなりました。

福井利佐
© Sony Music Associated Records Inc.

一緒にやらせて頂いたことで、中島さんのアイディアや世界感が作品に入り込んできて、私だけだと思いつかなかった絵柄(例えば、メデューサなど)に挑戦できました。これまで表現してこなかった私の新しい部分を引き出してもらっている感じでしたね。

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