アダプター「眩暈(めまい)」展

HAPPENINGText: Yoshihiro Kanematsu

夏から秋へ8月19日から9月17日まで、ナンズカ・アンダーグラウンドで、アダプターの展覧会「眩暈(めまい)」が開催された。アートディレクター針谷建二郎が主宰するグラフィックアート集団アダプターの、日本では2年ぶりとなる展覧会だ。会期中はオープニングパーティのほか、映像ディレクター木之村美穂やイラストレーター黒田潔とのトークショーも行われ、心待ちにしていた東京のデザインコンシャスが多く駆けつけた。

グラフィックデザインやビデオクリップに孤高のアーティスティックなコラージュを織り交ぜるアダプター。彼らは今まで仲間たちと、ビジュアルレーベル、NWBAを立ち上げ、フリーマガジン「Public/image.」をリリース、ラメルジーを招くなど大きなインパクトのあるパーティを開催してきた。またも最近、アートプロジェクト「Vermilion」をスタート、気鋭のアーティストをフィーチャーして画期的な洋服を手がけている。

そんな彼らの新作アートワークは、『特有の計算とサービスを必要とするコマーシャル・ワークとは違い、純粋に己の表現欲求に従ったより感覚的な創作活動の結果』と針谷氏が言うように、どれも潔いほどにむき出しのリアリティを放っている。圧倒的に美しいファンシーなポートレイトやカタチからして際立った大胆なキャンバス、ぐにゃっと張り出したポスターなどどれも型破りで、思わず目移りする生き生きとした展示となっていた。

彼らの多彩なプロジェクトは、いつも鋭いセンスと圧倒的なクオリティを備えながら、どの枠にも当てはまらないフレッシュさと瑞々しさがある。今回の「眩暈」と題された展覧会でも、その次元の広さが強く印象に残った。どの形容が相応しいのかわからない程に、既存の範疇を超えた「デザイナー」の一歩先のあり方が、いつも見え隠れする。そして僕らは、『またアダプターがあんなことを!』という驚きに固唾を呑むのだろう。

針谷氏をして『自分を取り巻く状況は色々な意味で本当に一変していて、なんだかとても感慨深い』と言わせるほど、この2年間は大きな変化の渦中にあった。それはこの渾身のプレスリリースにあるように、今最も面白い街になりつつある東京の変化と、確実にシンクロしている。新しい感覚を持ったデザイン/アートシーンの強力なプラットフォームとして、ADAPTERは美的な開放感で東京を揺るがし続けるのだ。

ADAPTER「眩暈(めまい)」
会期:2006年8月19日〜9月17日
会場:NANZUKA UNDERGROUND
住所:東京都渋谷区渋谷2-17-3 渋谷アイビスビルB1F
https://www.nug.jp

Text: Yoshihiro Kanematsu
Photos: Yoshihiro Kanematsu

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