クラスター・ベルリン

PLACEText: Yoshito Maeoka

壁の崩壊より十数年が過ぎようとしている現在、ベルリンアートシーンの最先端はミッテ地区アウグスト通り界隈よりミッテ地区の周辺へと移行していると言われている。ホルツマルクト通り、ツィマー通りあたりにベルリンの主たるコマーシャルギャラリーがそちらに移動した、という話題は既にご存知の方も多いと思う。しかし最近意外な地域の名前が挙がる。ヴェディング地区である。

この地域はかつての西ベルリン区域に属し、現在もトルコ人をはじめとした外国人労働者の住んでいる地域で、他の地区に比べると、カフェやクラブといった娯楽も少ない。どちらかというと “低所得者層の住む地域” というイメージが強い。故に人気も比較的低く、家賃等が押さえられるメリットがあり、そこに目をつけたアート関係者がここに新しいスペースをオープンするようになった、と言われている。ここにはコマーシャルギャラリーだけではなく、非営利のアートスペースが増えてきている様だ。


Vorabzug Exhibition view

今回紹介するクラスターもその様な情勢を背景にオープンした、アーティストらが運営するアートスペースだ。このスペースがオープンした同じホフ(中庭)には、グイド・バウダッハ、マックス・ヘッツラーと既に2つギャラリーがオープンしている。


Vorabzug Exhibition view

このスペースのオープニングとして、運営者である9組のアーティストによるグループ展が行われた。その際、アーティスト達は次の様な事をフレームワークとして定義した。

  ・作品の要素としてこのアートスペースである“部屋”を一部取り入れる事
  ・作品の構成要素の一部に、特定の素材を用いる事

結果として、全ての作品が統一された見栄えとなりつつも、様々な要素を包有し、個々の作品に更なる視線を加えたくなるような展示となっていた。ここにあらわれたのは、アーティストの今までの制作的要素をバックグラウンドとしてサンプル的に提示したものであったり、このスペースでこれから行われるであろう作品の素案であったりした。

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