「ナッハ・デア・ナトゥア(自然によると)」展

HAPPENINGText: Yoshito Maeoka

ここ数年巷でベルリンが “最高にトンガッている” という噂を耳にする。こちらに来た当初は、まだまだ保守的かつドイツ的な垢抜けない旧西側のセンスに、少し浮ついたレトロスペクティブな東側のデザインだけが目についた。大したことは無い、ただの噂、というのが正直な感想だった。しかし、そんな噂を聞きつけて他流試合を望む熱きクリエーター達がどこかしらに集まってきて、どこかで着実に何かを開花させようとしている、そんな息吹を感じる瞬間に出会う様になって来た。

今回紹介する展覧会のオーガナイザー兼アーティスト、ディルク・ホルツベルクと出会ったのもそんな匂いが漂うプレンツラウアーベルクでのカフェだった。実際そこには色々なエクスペリメンタル・ミュージックをやっているミュージシャンが集まっており、友人に連れられて足を運んだその日、彼らもたまたま顔を出していたのだった。

彼らは、そんな街の喧噪を他所に、ベルリン州東部の郊外ミュンヘホッフェにて「ナッハ・デア・ナトゥア(自然によると)」展が行われていた。Sバーン(都心部から郊外を結ぶ鉄道)に乗ってオスト駅から約10分のフリードリヒスハーゲン駅、そこからさらに車で15分ぐらい行ったところに会場はあった。そこは自然保護区域、植林地帯の先、農耕牧畜を営む穏やかな風景のなかぽつりとたたずむ集落にある一住居で、広い吹き抜けを持った二階建ての一軒家。ディルクを含め7人の作家がインスタレーションを中心とした展示を行っていた。

会場を入ると左手に吹き抜けの部屋が目に入る。そこには天井に伸びた蔓性の植物が十数個植木鉢から伸びている。よくよく耳を傾けるとそこから某かの声が聞こえる。日付、時刻を不規則に、そして淡々と読み上げている。その向こうには、あたかも多くの松葉をボードにばらまいたかの様に見える、コンピューター・グラフィックを駆使したタブローが、掛けられている。そして手前には、黄色いビニールテープを親指大に丸めたものが山積みにされている。個々の形が微妙に違い、それがあたかも個々に生命を持っているかの様に思える。

それぞれロルフ・ギーゴルド、ディルク、ベティーナ・ヴァハターの作品。これら3点がこの部屋の展示物ではあるが、各人の “自然” に対する解釈を媒介として統一感を感じる構成だった。

反対の右手側の部屋に入ると、丸められた緑色のビニールシートやチューブ、カプセル、カッティングシート等が目に入る。一見無造作に散らかっていたかの様に見えたが、よく見るとちいさな模型の飛行機がおいてあり、縮尺に合わせて見渡してみるとその構成は緑色の大地を想起させた。

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