ホロコースト記念碑(虐殺されたヨーロッパのユダヤ人のための記念碑)

PLACEText: Yoshito Maeoka

5月12日、先のドイツ連邦共和国の終戦60周年を記念して、「虐殺されたヨーロッパのユダヤ人のための記念碑」(通称、ホロコースト記念碑)がオープンした。

この施設は、時遡る事1988年、ジャーナリスト、レア・ロッシュの呼びかけから始まり、様々な議論を経て漸く今年の開設の運びとなった。建設賛同人には、ヴィリー・ブラント、ギュンター・グラス、クリスタ・ヴォルフ等ドイツの各界著名人も名を連ねた。設計は、ピーター・アイゼンマンによるもので、石碑の広場とその地下にある情報センターから構成される。

石碑の広場は2711基の石碑から構成される(2711基という数字は場所と規模から計算された数字であり、数字そのものに意味はないらしい)。全ての石碑は、縦2.38 × 横0.95mで、空洞のコンクリート製である。その間隔は規則正しく、おおよそ人一人、もしくは車いすが通行できる程度の幅であり、来場者は周辺の任意の場所から広場に入り、石碑の間を歩く事ができる。石碑の広場の周辺付近では1m以下である石碑も、深部に足をすすめるにつれ、高さを増し、最大4mを越える。

石碑の広場の深部に足を踏み入れると、通路の出口にあたる空間と空しか見えないようになる。そして面白い事にどこからも陰になる場所がない。また石碑は規則正しく並んでいるようで、実際は微妙な傾きがあり、高さが違う。また、その床面は緩やかな勾配が不規則にあり、足下をややぐらつかせる。そしてそれぞれの隙間から様々な人がそこに現れては消え、また現れては消える。それが不連続に不定期に繰り返される。時として不意に手前の角から横切る人とぶつかりそうにもなる。造形はとてもミニマルで、シンプルであるが、そのような構造が様々な実社会でのドラマを喚起させる。

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