カトラグ・アタマン「キューバ」展

HAPPENINGText: Arun Koriech

ロンドンの最も大きなロイヤルメールというビル(272,500平方フィートに9階建てという巨大な建物)の放置された建造物の中で、トルコのアーティスト、カトラグ・アタマンが謎めいたスラム街の研究を基にしたインスタレーションである「キューバ」を開催した。

イスタンブールやトルコ地方にあるキューバは、危険な時代に安全な建物を持つ地域として1960年代後半に現れた。今日のキューバは、その位置を正確に示すことができる人々がほんの一握りになってしまった程、存在が忘れられ失われつつある。現在は主に、様々な民族や宗教、政治集団における非協調主義者達の主催地域として存続している。


Kutlag Ataman, Kuba, 2004. 40 DVDs, 40 monitor video installation. Photo Courtesy of Lehmann Maupin Gallery

その荒廃した建物に入ると、落書きがされて曲がりくねった木造階段の迷路や、広漠とした何も無い床を縫うように歩くことになる。まるで、見つからない住人を探しながら、街の見捨てられた場所をさまよっているようだ。展示会場にたどり着くと、その広い部屋にはソファの前で各々にアレンジされた40個のテレビが並んでいる。

そこで、お年寄りから若者までのキューバの住人と共に腰掛け、彼らの物語を聞くのである。あるギャンブラーは彼の勝ち負けにまつわる話をしながらラキをちびちび飲み、年老いた女性は涙ぐみながら刑務所にいる息子の話をし、ある男性は武装した強盗に殺された息子を語り、また、ある子供はまま母の話をする。

キューバの失われた家々やストリートを作り上げる、ストーリーや経験を持つ住人が沢山いる。彼らの物語りが集まることで、失われた地域を形付けているのだ。

彼らの物語からは、社会からの疎外、貧困、故郷を思う心、差別、そして悲しみが伝わってくる。その全体的な様子は陰気であるが、そんなハンディキャップに対して生き抜こうとする訴えが、彼らの声や目に現れている。

彼らの苦闘は、我々人間の存在と試みの苦闘であるが、この全てのストーリーの背後とは、人間の原理や望み、そしてトルコ人の「希望とは貧民のパンである」という言葉のことである。

Text: Arun Koriech
Translation: Yurie Hatano

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