カサリーナ・ティエルシュ

PEOPLE


Space Scheme


ウィーンのシュタットバンボーゲン通り28番地に、「パルス・プロ・トト」というインタラクティブなサウンド・インスタレーションが現れた。と言われても、イメージは、なかなかわいて来ないだろう。これは簡単に言うと、パリの街中で録音した音を聞かせるものだ。

建築家でもあるアーチスト、カサリーナ・ティエルシュは、ある空間で創造される音を聞くことで、その建物などの空間を認識することができるということをカタチで表現したいと考えた。「建築というものは、光、空気、空間、言語、音をベースにして成り立っており、空間はそうして感情の中に入り込む」と彼女は話す。つまりパルス・プロ・トトは、人は音楽や建築物を通して、時間や空間を認識しているというアイデアに基づいたプロジェクト。パリで録音した音は、ミュージシャンのフランツ・クレムスレナーが手を加え、リアルタイムで創造される音を想像的で感情的なものへと作り上げた。


Which ways to go

どうしてウィーンとパリなのですか?

ウィーンは、世界的な古典的音楽の中心地で、この美しい街の至る所で、私たちは常にクラシック音楽を耳にします。しかし、アーノルト・シェーンベルクのような“新しい”音楽や実験的な音楽は、逆に盛んではありません。シェーンベルクの音楽は、 20世紀に生まれたクラシック音楽の形です。実際、ウィーンではこのような音楽に適した場所は、ほんの一握りしかありません。そしてパリでは逆に「IRCAM」という音楽の研究機関があったりなど、その“新しい”音楽の発信地です。そこで私は、パリへ音楽のリサーチをしに行ったのです。空間、時間、認識それぞれに関する理論、音楽を通じた空間の認知、空間と時間の認識を学ぶうちに、このパルス・プロ・トトというインタラクティブなサウンド・インスタレーションをウィーンでやろうと思い立ったわけです。


Camera

ずばり、パルス・プロ・トトとは何でしょうか?

アートであると同時に、建築と音楽の理論を形にした、音のインスタレーションです。現代の音楽には、建築と大きな類似性があると思います。私の持つ様々な理論に関する知識を形にしたいと強く思いましたし、音楽を聞くことで空間を認識することができるということを知ってもらいたかった。パルス・プロ・トトのコンセプトは、とてもシンプルです。新しい音楽の中心であるパリの街を、古典的な音楽の中心地であるウィーンの人々に、聞いて、感じてもらいたいということ。私にとって、建築のビジュアル的な要素を取り払うことは特に重要でした。建築というのはそもそもビジュアル的なもので、聴覚が最も空間を認識するのに適した感覚ということを忘れてしまいがちです。でも実は、私たちは音で空間を具体的にビジュアル化することができるのです。


Katharina

実際にはどのような手法で制作したのですか?

パリの街中、地下鉄、レストラン、カフェ等でよく耳にする音を録音しました。そして、その素材はウィーンのミュージシャンであるフランツに手を加えてもらいました。こうして、パリの街が持つ感情が音となり、ウィーンの人に届けられ、想像的で感情的な空間が広がる。このインスタレーションは、ゲームのようにインタラクティブで、音の流れは自由に変化し、想像上の空間を作り出します。


Fountain

このプロジェクトで難しかった点は何でしょうか?

一番難しかったのは、技術面でした。フランツィとステファン・ロッツポルカが、配線や装置を駆使して助けてくれました。

これからの夢は?

パルス・プロ・トトをウィーンだけではなく、ヨーロッパの他都市でも展示していきたいと思っています。次の場所は、バティスラバになりそうです。また、ウィーンのゲーテ通り全体にこのインスタレーションを置きたいとも思っています。ゲーテは、この10年間で主要幹線道路から、お洒落なバーやレストランが立ち並ぶ魅力的なエリアに再開発された場所なのです。そこにこのインスタレーションを置けば、人々は音を聞きながらパリやロンドン、東京の雰囲気を感じながらお茶を楽しむことができるのではないかと思っています。

Text: Christina Merl
Photos: Katharina Tielsch
Translation: Naoko Fukushi

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