キオスク・ショップ・ベルリン

PLACE


ベルリンミッテ地区の北側にある住宅街の道沿いに、真っ白く光かっている一角が見える。ベルリンでは珍しいその蛍光灯に本能的に惹かれ、そちらへ向かうが、何かに似ている気がして仕方がない。好奇心と親近感が湧き上がり足を速めたとたん、はっと気づいた。そう、日本のコンビニの光なのだ、これは。小さな看板にも「キオスク・ショップ・ベルリン」と書かれている。やっぱり、と喜んだのだが、それはほんのつかの間だった。ここはちょっと特殊なキオスクだったのだ。

右側に冷蔵スタンド、奥には飲み物用の冷蔵庫、それらを取り囲む白い棚。そこに置かれているのは確かにどこにでもあるような日常製品だが、すべて不透明な白い物体にコーティングされていて不思議な存在感を持っている。実はこのキオスク・ショップ、ベルリン滞在のアーティスト、 H.N.ゼムヨンによるパーマネント・インスタレーションなのだ。

どこにでもある近所のキオスク、人は毎日のようにそこで新聞や必需品を買い、店主と会話を交わし、情報を交換する。そのあたりまえさに慣れきってしまっている私達を混乱させ、ありふれた環境を考えさせ直させる状況を作りたい、と H.N.ゼムヨンは説明してくれた。中身そのままのコーラ缶、タバコ、シリアル、シャンプー、お菓子類(コンビニで買える日常商品、そしてすぐにどこの商品かわかるパッケージングというのがポイントだ)を脱色したビーズワックスでコーティングした彼の「プロダクト・スカルプチャー」は好奇心を誘い、美術館で絵を眺める時と同じ熟考を要求する。もともとテンポラリー・エキシビションで公開されたこれらのアートワークは、キオスク・ショップのセッティングに置かれることによって潜在的な力を発揮しているように感じた。

2001年の10月にオープンしたこのショップは、今までに1000以上の「プロダクト・スカルプチャー」を置いてきた。ほかのギャラリーのようにスポンサーを探さず、これらの「商品」の売上を通して営業をするというのが彼のコンセプトの一部。そのために生み出されたシステムがいわゆる「分割払い」。20ヶ月間まで支払いの引き延ばしを可能にすることによって、若い人や初心者も手が伸ばせるアートになるという。現在の時点で25名ほどこのシステムに参加しており、商品が買われていくとともにショップの品揃えも変化していく。パッケージングのちょっとした工夫や宣伝のアプローチなどによって、日常商品がその時代を象徴しているという事を見逃しがちな今、「プロダクト・スカルプチャー」はそのツァイトガイスト(風潮)を永久化しているのだ。

この様に商品の仕入れで忙しいなか、H.N.ゼムヨンは去年から店の空間を使って様々なアーティストの展示会を開いてきた。「インターベンション」と呼ばれるこの展示会シリーズは、若手日本人アーティスト、大黒貴之のスカルプチャーとドローイングのエキシビションで始まった。彼のポプラ木と和紙のスカルプチャーは真っ白な空間に温かみを与え、それと同時に店の不気味さを引き出しているように思えた。現在は「インターベンションVII」、 柱のように、天井と床に設置された金属の輪の間に無数の白い糸が張られているドイツ人アーティスト、ドロテー・ベルケンヘーガーの作品がインストールされている。糸の間から見える棚の商品は白いレイヤーの間でますます遠ざかっていくように感じた。

「キオスク・ショップ・ベルリン」は、ワーク・イン・プログレスだと H.N.ゼムヨンは言う。プロダクト・ラインを増やし、まだ空いている棚も埋めていきたい、と。これで3年目にはいるが、この先も時代を問いかけながら記憶していってほしいと思う。

インターベンション VII
会期:2004年1月16日〜2月14日
会場:キオスク・ショップ・ベルリン (KSB)
住所:Schr_derstr. 1, 10115 Berlin-Mitte
TEL:030-784 12 91
info@kioskshopberlin.de
www.kioskshopberlin.de

Text and Photos: Kristy Kagari Sakai

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