ナイキ・プレスト 04

THINGSText: Sachiko Kurashina

毎回斬新で、いつも驚されるキャンペーンを展開する「ナイキ・プレスト/インスタント・ゴー」。今回のキャンペーンでは、グラフィティ界で、世界的に有名なストリートアート集団・バーンストーマーズのクリエーター、デイビッド・エリス、東京・中目黒を拠点に活動するアーティスト・サス」、香港のフレック、ロサンゼルスのモーショングラフィック・デザイナーの若手チーム、モーション・セオリー、東京のストリートシーンで最も注目される若手アーティストの一人・DJアッパーカットがフィーチャーされ、見事なコラボレーションを展開している。

どのようにこのプロジェクトが進められたのか、このプロジェクトのキーパーソンの一人であるワイデン&ケネディ東京のエリック・クルーズ(+Cruz)にお話を伺った。

まずはじめに自己紹介をお願いします。

ワイデン+ケネディ(以下W+K)東京で、アートディレクター/デザイナー/ディレクターをしています。W+K以外では、ハイブリッドメディアのコンサルティングや自分のスタジオのための作品作りをしています。

バージニア・コモンウェルス大学、パサデナ・アートセンター、そしてヨーロッパでイラストレーションやグラフィックデザインを学びました。今までに、スタジオ・アーキタイプでウェブ及びグラフィックデザイン、W+Kポートランドでマイクロソフトのアートディレクション、イマジナリー・フォーシズでは、映画「マミー」や「スパイダーマン」等のタイトルを含めたモーション/タイトル/グラフィックデザイン、レーザーフィッシュ・ロンドンでは、デジタルハイブリッドのコンサルティングをしました。最近クランブルック美術学院でMFA学位を取得。また同校在学中にはミシガン州デトロイトのクリエイティブ・スタディー・センターで大学レベルのグラフィック、モーション、デジタルデザインやイラストレーションを教えました。私が興味を持つ分野は実験的なメディアハイブリッドやデジタルナラティブといったいわゆる新しい形のビジュアル表現です。

文明、人類学、個人的/文化的アイデンティティ、そしてビジュアル/文化的なコロリアルニズムに興味があり、それがきっかけで東京に移り住む事になりました。それ以前は6年間アメリカやヨーロッパで仕事をしていたのですが、ある時自分のカルチャーにも貢献したいと思ったのです。私はフィリピン系アメリカ人なので、アジアの人のために作品を作りたいと思いました。とても自然な発想だと思います。クランブルックを卒業後、3ヵ月半中国やアジアを旅行し、そのダイナミックな美しさと混乱に対する好奇心がより一層強まりました。ある時代には世界一パワフルな帝国だった中国は今「カウンターフィット・カルチャー(偽造文化)」になってしまっています。他国のアイディアを盗み、それを安くそして入手しやすく生産しています。ですから中国でブランドを築くというのは矛盾したコンセプトです。お金に余裕がなく、1/8の価格で同じ商品を購入する事ができる国において、ナイキ等のブランドをどう築けるのでしょう?しかし、上海が目覚め始め、アジアは自分にとって関連性のある場所となりました。こちら側の世界を再建するために貢献したいのです。

仕事の一面としては現代のコマーシャル・カルチャー、スピード、フューチャリズム、そしてナイキに関係するユース・カルチャーを探っていますが、個人的な面では人類学的文化や、民族、原始、そして社会文化を探っています。フューチャリズムと歴史との対比です。

ナイキ・プレスト03と04のプロジェクトでは、アートディレクター、プロジェクトのクリエイティブ・ディレクター、映像の共同ディレクター、プリントのデザイナー/ディレクター、そしてフォトグラファー全てを務めました。低予算だったため沢山の役を務めました。

今回のキャンペーンの内容について教えて下さい。

第一幕:30秒:インスタント・ゴー:リボン
「インスタント・ゴー」の動きを紹介。流れるようなグルーヴで都市内に広がるデイビッド・エリスのリボン状のグラフィックを追います。次第にアートが形成され、周囲の環境やユースカルチャーと対話するのを経験する事ができます。デイビッド・エリスのスピーカーは、都市景観と融合し、都市のビートを反響します。サスの描いた葉っぱはレールをグラインドするスケーターの上に落ちます。フレックのオレンジ色のキャラクターは上海の群衆の中にブレンドします。そして二つのスポットのリンクとして、デイビッド・エリスのDJキャラクターが現れ、アジアの地平線の真中で音楽をミックスする。

第二幕:30秒:インスタント・ゴー:ルーツ
ビートが強まり、ヴァイブがよりアクティブになります。デイビッド・エリスの描いた木の根っこが、時にはフレックのリキッドウェーブとモーフィングしながら旅路を導いてくれます。DJのギアが上がり熱狂的になると、「インスタント・ゴー」は、よりアクティブになります。するとサスのマンダラが現れてブレイクダンスをし、フレックの尻尾が地下鉄内を横切り、デイビッド・エリスのナマズがレインボーブリッジを泳ぎ通る。そして中目黒をスケートするカミさんのカメオ出演。

第三幕:120秒:インスタント・ゴー:アーバン・キャンバス
「リボン」と「ルーツ」の延長リミックス。ここでは動作中のアーティスト、都市で「インスタント・ゴー」をつくっている瞬間を見る事ができます。

プリント広告:インスタント・ゴー:アジア
プリント広告は、CMスポットや3人のアーティストによるコラボレーションのエネルギーを反映しています。私は常に私達が存在するメディアをプリント広告に反映するようにしています。ですから今回のプリントも動きまわるイメージを静止した瞬間であるかのように取り組みました。「インスタント・ゴー」をアジアの都市景観を通るアートの動きと、現在広がっているアーバンアクションで表現しました。

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